「お父さんはこの甲子園口に住んでるんですか」

「ああここから10分ほど歩いたところで庭付きの1軒屋だ」

「私は社長の家の二階に居候さしてもらっとります」

隼人が改まった口調で言った。

「じゃー二人だけで住んどるんですか」

「あとキュウちゃんいう二十歳前の女の子のお手伝いさんが住み込みでおる」

「キュウちゃんって面白い名前やな!」

「本当は久子というんやけどわしらはキュウちゃんと呼んどる」

「じゃー3人だ。僕の寝るとこあるかなー」

「ああ十分ある。好きなだけ居ったらええ。そういえば省三は5年生だったな。早いもんやな、あと1年で中学か」


「社長、省ちゃんをこちらに引き取ってええ中学に入れたらと思いますけど」

隼人は笑みたたえて省三と秀雄を交互に見ながら言った。

「ええ学校いうたかて僕そんなに頭ようないで」

「学校なんて頭やない。根性や。貨物船に乗ってお父さんに会いに来る根性の省ちゃんなら絶対ええ中学校へ行けるって」

こんどは隼人は省三の目を見つめて真剣に説得しだした。

「灘中あたりを目指してやってみるか省三!」

秀雄は長男の忠義が成績はよいのに野球に夢中になって大学もあまり良いところへは行けないだろうなと思って省三に期待するようになっていた。


このときから省三は父の強烈なプレッシャーを感じ始めていた。

「ウーン、ウーン、ウーン」省三は頭を抱えて下を向いてうなってばかりだった。

ちょうど料理が次々と運ばれてきた。

「省三も急に言われても困るやろ。まーじっくり考えときや」


ー第16話に続くー