三人は省線(今のJR)に乗って甲子園口で降りた。

「お昼にはちょっと早いが省三、おなかすいたやろ」

「はらぺこや。何でもええからなんか食べさせてな」

省三は昨夜8時頃工場で出た夜食のうどんを食べただけでその後何も食べていないことを隼人に小声で言った。



「わしらも朝早かったから何も食うとらん。中華でも食うか」

省三の声が聞こえたようだった。秀雄はさっさと駅前の中華料理店に入って行った。隼人と省三も秀雄の後に続いて入って行った。秀雄は奥の小部屋の丸いテーブルに腰掛けて省三に横に座るよう椅子を引いてくれた。テーブルは2段になっていて上のテーブルが回転するようになっていた。

秀雄が店員にいろいろ料理を注文をしている間省三はこの回るテーブルが面白くてくるくる回して遊んでいた。



「それにしても貨物船でよく来たな。ねずみは出てこんかったか」

秀雄は横に座ってテーブル回しに夢中になっている省三に話しかけた。

「船にもねずみはいるんですか」テーブル回しの手を止めて省三は父の顔を覗き込むようにして聞いた。

「ああいるらしい。ねずみはかしこいから沈む船は本能的にわかるらしくて一斉に逃げ出して一匹もいなくなるらしい。だからねずみがいる間はその船は大丈夫らしい」

「へーそうなんですか。ねずみにはそんな予知能力があるんですか」

隼人が横から感心したような口調で秀雄に言った。



「貨物室で寝転んだのが夜の1時頃だったのすぐ寝てしもうたからねずみなんてぜんぜん気がつかなかった」

「じゃあの船は危ないかもしれない。今頃大阪沖で沈んでるかもしれない」

秀雄は自分で言った冗談がおかしくてわっははと笑った。省三も隼人もつられて大声で笑った。

急にその場がなごやかな雰囲気になった。



第15話に続くー