「大丈夫です。僕はどこでもよく眠れるたち(性質)ですから。だけどしばらく船長の運転室に居てもいいですか」
「ああええよ。すぐ出帆すっからな」
船長は省三を甲板の上の運転室に連れて行った。省三は船長の横の助手席に座った。

貨物船”佐藤丸“はゴトゴトとエンジン音を立てるとまもなく東の淡路島方向に向かって進みだした。すぐにランプロファイアの白と黒の縦縞の断崖の横を通過した。
いつも白鳥の砂浜から見ている白と黒の縦縞の岬が月明かりにくっきりと不気味に現れてきた。



船で間近かに見ると岩は荒々しく白と黒の縞模様も均等でなく大分いびつになっているのが月明かりにはっきり見えた。”佐藤丸”はスピードを上げて波しぶきを立てながら瀬戸の海を淡路島方向に進んでいく。ランプロファイアもだんだんと後方に遠去かってしまった。


「船長さん、何であの白と黒の断崖をランプロファイアというんだろう?」
省三は後方に小さくなっていく断崖を振り返りながら靖男に聞いた。

「わしもよう知らん。入水自殺した死体が潮に乗ってあの崖に打ち上がるということは聞いたことがあるけどな」


「ふーん、潮はランプロファイアに向かって流れているんだ」
「この先に、といってもまだ大分先だが鳴門の渦潮が巻いとる。潮は鳴門に向かって流れとるんや、その途中にあのランプルファイアの岬が突き出ているから潮が岬にぶつかるということや」
「じゃーこの船も潮にのって走っとるということですか?鳴門の渦潮を通って行くんですか?」
省三は渦潮を見られるかもしれないと期待を持って前方を見たまま真剣に舵を取っている靖男に聞いた。



ー第10話ーに続く