波打ち際に乗り上げてあった伝馬船には2人の工員が6個の木箱をすでに積み込んでいた。

省三は砂浜から伝馬船の後部に渡された厚い板の上を歩いて伝馬船に乗り込んだ。
源三も省三に続いて伝馬船に乗り込んできた。


「さあーちょいと押してくれや」
工場長の橋本と2人の行員が3分の1ほど砂浜に乗り上げていた伝馬船の後部を持ち上げるようにして押した。ザーザーと砂の上を滑る音を立てて伝馬船は勢いよく瀬戸の海に浮かんだ。


「お父さんに港まで迎えに来てくれるよう電話しとくからね。気を付けてね」
美奈子が大声で省三に向かって叫んだ。
「大丈夫だよー、行ってきまーす」
省三は母の心配をよそに小さな伝馬船の船首に立ち上がって大きく両手を振った。


源三のこぐ長い櫓がぎーぎーと音立て始めると伝馬船は砂浜からだんだんと遠ざかって行った。砂浜で手を振っている美奈子、橋本、2人の行員の姿がだんだんと小さくなって行く。4人の姿が小さくなっていくに従って黒い貨物船が大きく前方に迫ってきた。


伝馬船が近付くと甲板に3人の人影が現れた。
「すまんの、子供1人神戸まで乗せてやってや」
源三が貨物船の3人に向かって大声で叫んだ。
「あいよ。後ろに低いところがあるからそこからあがんな」
船長らしい帽子をかぶった男が貨物船の後方を指差しながら叫んだ



ー第6話に続くー