ずいぶん前の話ですが、
早春の草花を撮ろうと小さな山間の里を訪れた時、
枯草色の斜面に大きな動く生き物がいた。
そいつは枯れた草の間から顔をのぞかせたフキノトウを、
次から次へと美味しそうに食べている。
こちらに気が付き、目が合っても、お構いなしに食事を続けていた。
冬が終わり春の美味しい新芽を前に、
人間ごときに構っている暇なんてなかったのだろうか。
僕はこの時、カモシカを見た事が殆どなかったので、
嬉しさと緊張で心臓がバクバクしているのを感じながら、
夢中で写真を撮った。
あまり長く観察は出来なかったけど、
ある程度お腹が一杯になったのだろうか。
カモシカは山に向かって斜面をゆっくりと登っていき、
森の中に消えていった。
カモシカがいなくなってからも、
しばらく興奮が収まらなった事を今でも覚えている。
(2014年西多摩地域にて)





