政府が成長戦略への提言を募集していたので、以下のような文を作って、投稿しました。ただし、投稿する資格があるのは、民間企業と地方公共団体だけのようです。個人には投稿する資格が無いようです。
成長戦略への提言
堀尾英範
60歳、勤務医
<情報革命の推進>
必要な情報が、ネットや本を通じて、リアルタイムで得られる環境を構築すること
<具体的な方法>
(1)全ての大学に依頼して、各学問分野の重要な概念について、ネット上にその解説記事を作ってもらう。各大学で分担する。大学の教員が書いても良いし、学生の別々の課題にしてもよい。大学の教員が目を通して、誤りを正せばよい。作成した記事を、Wikipedia に掲載する。また、大学のホームページのその教官のページにも掲載する。社会貢献として評価する。特に予防に結びつく記事を高く評価する。Wikipedia英語版を翻訳してもよい。大した手間にはならないであろう。
最近では、多くの人は、分からないことがあればネットで調べる習慣を持っている。
最近私は、「飛行機恐怖症」の対策について、英語版Wikipediaの該当項目を読んで、記事を書いて、日本語版Wikipediaに投稿した。私は、飛行機は怖いのであまり乗らないが、最近どうしても飛行機に乗らなければならない用事があったが、Wikipedia日本語版の「飛行機恐怖症」を見ても、その対策は書かれていなかった。それで、自分で調べて書いたのである。また、ネットを検索して、外部リンクを付けた。これは誰かの役にたつであろう。こうした情報提供を、国家的な規模で行うのである。
また、「父親は、子どもの発達について、どのような役割を果たしているか」についても、ネット上には、日本語の記事はほとんど見当たらなかった。英語では「父親の役割」についての解説は無数にある。私は、英語の本や文献を読んで記事を自分で書いてWikipediaに投稿した。「父親の役割」の項目を作った。これも誰かの役に立つであろう。
心理学用語をネットで調べても、満足できる充分な説明は、あまり見当たらない。「愛着理論」について調べたことがあったが、Wikipediaの日本語版は英語版に比べてひどく貧弱であったので、英語版の一部を私が翻訳して日本語版に加筆したことがあった。
感染症については、国立感染症研究所のホームページに詳しい解説がある。また、難病については、難病情報センターのホームページに詳しい解説がある。非常に便利だ。しかし、医学に関する Wikipedia の項目は、総じて貧弱である。心理学用語の解説も、あまり見当たらない。
大学の講義や講演やシンポジウムなども、可能なものはなるべくネットに上げて無料で公開してもらう。
(2)NHKは、古い番組のうち、教育的価値が特に高い番組について、無料でネット上に公開する。政府がその分の著作権料を払う。検索可能にする。著作権の処理が困難であれば、この目的で、新しく番組を作成しても良い。
例えば、インターネットで、テレビ英語会話を無料で視聴可能にする。過去の番組を利用するか、新しく番組を作る。初級、中級、上級に分ける。何年分も公開する。そうすれば毎日、放送時刻を待たなくて済む。テキストもネット上に掲載する。
(3)教育的価値の高い良書は、政府が本の著作権を買い取って、ネットに公開する。図書室に配備する。
政府が小冊子を作って必要とする人に配布する。例えば、結婚届けを出す人に、夫婦円満のために必要なコミュニケーションについて説明した小冊子を渡す。
いろいろなものの仕方について、説明する。子どもたちに、勉強法を教える。参考書を配る。いろいろなやり方を教える本のうち、特に教育的価値の高い本を、教室に配備する。配る。その学年向けに、やさしく書きなおす。なぜ勉強しなければならないかを、教える。一つの知識で、皆が助かった例などを示す。
小学生には、伝記も役に立つ。生き方をコピーするのである。各学年ごとにネット上に本箱を作って、良い本を提供する。
学校では、勉強法そのものは、あまり教えてくれない。しかし「正しい勉強法」はある。
「正しい時間の使い方」も重要である。あらゆる人にとって切実な問題であるが、学校では教えてくれない。現状では社会に出てから、ビジネスマンとしての勉強の中で、個人的に試行錯誤で身に付けて行くのだろう。
また、「夫婦関係を良好に保つための方法」も、誰からも教えてもらわない。正しいコミュニケーション法がどのようなものかについても、教えてもらわない。欧米では膨大な研究が行われているが、日本では、そうした科学的知見の蓄積の恩恵を受けていない。
ポジティブ心理学の本が説く「不快な気分にとらわれない方法」を子どもに分かりやすく教える。
(4)政府がいろいろな運動を先導して国民を啓蒙する。情報革命運動、禁煙運動、減塩運動、父親が子どもに関わる運動などである。担当部局がホームページにて解説し、政府によるCMをテレビに流す。必要な情報を流す。
安倍首相は、米国のNIHに匹敵する組織の設立を考えておられる。NIHはCDC(疾病予防センター)を中心に、予防的業務をしっかり行っている。本当に実行すれば、経済的発展に結びつくだろう。虫歯を予防し、減塩により高血圧を減らし、食事治療により糖尿病を減らすのである。予防策を国民に示して、実践を呼びかける。
例えば欧米では、父親が子どもに関わる重要性が認識されており、政府が国民に、父親が子どもと多くの時間を過ごすように、呼びかけている(特にアメリカ合衆国、カナダ)。日本では行われていない。
減塩の記事は厚生労働省のホームページ内にあるが、スウェーデンやイギリスのような国家的規模では行われていない。業界に対する働きかけも無い。
上記の(1)~(4)は、情報革命を加速するということである。必要な情報が、その場で得られるような環境を構築する。子どもを含めたオールジャパンで実践する。「補助金をくれ」ということではなく、国民全体で勉強しようということである。無料で、広範な教育を、オンタイムで行う。
英国や米国の経済が停滞した時期もあった。英米が復活したのは、多くの情報を把握していたことが大きいだろう。科学的成果は、英語で蓄積されている。英米は、情報を握っている。
もの作りのイノベーション(技術革新)だけでなく、アイデア(理念)のイノベーションをめざす。それには、知識が必要だ。
スポーツも、ただの勝ち負けではなく、「努力」の観点から、子どもたちに解説する。トップアスリートは、多くの努力を行った英雄である。パラリンピックも、障害を乗り越えてポジティブに生きるための方法論である。子どもに分かるように解説する。スポーツは、未来的な情報産業なのである。
映画や文学や実話も、子どもたちに良い生き方を説明する教材として使う。なぜ勉強しなければならないかを教える教材である。それなりの分かりやすい解説を準備する。
全般的に、ありとあらゆることについて、教育する。知識を必要としている人に、その知識を与える。勉強の手段を提供する。
私が乗る通勤電車では、半分以上の人がスマホを使っている。分からないことがあれば、ネットで調べることが常識化しつつある。しかし、日本語のコンテンツが貧弱である。英語の10分の1以下しかない感じである。単に少ないというだけでなく、その分、遅れている。10年~30年ほど遅れている。英語を使って情報収集できればよいが、それが可能なのは少数の人だけである。
<日本の現状は良くない>
かつて米国のCDC(疾病予防センター)は、エイズに関して、いち早く血液製剤の使用を止めるように警告したが、日本でそれが実施されたのは、ずっと後になってからであった。会社の利益のために、患者さんの生命が軽視されたのである。
青年の喫煙率を減らす努力も、欧米と比較するば、非常に少ない。政府として、青少年に向けた情報提供を行うことは、可能であろう。
現実には、当該業界の利益が優先され、青少年への教育は、あまり行われていない。青少年は、当該業界のCMにさらされている。
欧米と比較して、日本が最も悪いことは、喫煙率の他にも少なくない。婚外子差別の解消は最も遅れた。また父親が子どもと遊ぶ時間は、日本がOECDの中で最も少ない。一人親家庭の貧困率もOECDで最低である。これでは、世界の人の役に立つどころではない。世界の人を真に豊かにして、幸福にすることはできない。まず日本国民が幸福にならねばならない。せめて、真ん中ほどまでに、至急、追いつく必要がある。それには、情報である。
日本が大幅に不足しているのは知識である。よく生きるための方法論であり、良い体制や良い仕組みを構築するための知識である。
物作りについて言えば、必要とする物は、もう一通り何でも揃っている。消費者の立場からすれば、物価がさらに安くなれば、買えるものが増えて、もっと豊かになる。しかし、生産者の立場からすれば、それは競争の激化であり、賃金の安い途上国との消耗戦を意味する。
コーゾー・ヤマムラ氏は、「賃金を上げるには二通りの方法があり、一つは需要と供給の関係が変化することであり、もう一つは労働の生産性が上がることである」と述べている(「日本経済が豊かさを取り戻すために」)。発展途上国が、日本と競合するようになり、労働市場の需要と供給の関係は、悪化傾向にある。残された道は、我々の生産性を高めることである。
すでに物は充分にあるが、幸福へのノウハウは不足している。情報は不足している。
<利点>
この方法の利点は、あまりお金がかからないことである。すぐに実行可能である。どんなに良い施策もそれにより不利益を蒙る人がいて反対行動を行うが、情報は公にしてしまえば終わりであって、抵抗勢力は妨害しにくい。利益団体と正面からはぶつからない。日本人が勉強をしても、隣国と敵対しない。また、これにより我々の努力の方向性が明確になる。
<日本人の強み>
日本人は、謙虚に学ぶ。例えば、オフトやトルシエやオシムやザッケローニからサッカーを学んでいる。遣隋使や遣唐使もそうである。漢字もそうだ。日本人は、真面目に誠実に努力する。日本人は、勤勉である。また、オールジャパンで協力できる。これを活用すべきだ。もの作りだけでなく、サービス産業で活用すべきだ。まず国を挙げて勉強すべきだ。教材をネット上に準備すべきだ。