「お腹のカレーがこなれるまで歩こう」
上りは歩き、下りは走る。栃本の関所跡を過ぎ一路秩父湖を目指す。
「川又を3時に到着できれば完走出来ると思ってたから、3時に出発出来たら上出来だよ。」
百戦錬磨のzoffy兄さんにそう言ってもらえれば行けるかも?という気になるから不思議なものだ。完走請負人と言われる絶対的な安心感がこの人の強さだろう。
秩父湖の売店で二人でクーリッシュを買ってチューチュー吸いながら進む。
いい年こいたおっさんがクーリッシュ吸いながら川越目指す姿はなかなかにシュールな絵であったであろう…。
やがて、崖崩れのために設定された迂回路の分岐地点へ。きちんとガードマンが居るのでここで間違えることはなさそうだ。そして本当ならずっと下りのこの区間が、突如上り坂へとなっていたのであった。
(1.7キロ追加されるだけでなく上り坂も追加されてるとはな…。)
道幅も細く、車が来ると結構気を使わなくてはいけないし、でも、下りは走らなくちゃな…。上り坂を越えて、下りに入るがこれがまた結構急勾配。
(走らなくちゃ、走らなくちゃ、zoffyさんに迷惑かける訳にはいかない…。)
ところが心とは裏腹に全く走れなくなり、両腕が痺れはじめる。
(駄目だ…。走れない…。)
水分も食事も摂っているはずなのに脱水に似た症状が襲いかかる。とにかくこんな事にzoffyさんを巻きこんではいけない!
先行して待っていてくれたzoffy兄さんに
「すいません。走れなくなったんで先に行ってください。ゆっくりと進みますので。ここまでありがとうございました。」
雁坂でのzoffyさんの唯一の準完走は俺のせいだ。あとはきっちりと完走しているし、普通に走れば余裕で完走出来る人なのだ。俺ごときに巻き込むわけにはいかない…。
zoffyさんも多くは語らず、一言声をかけてくれると前を向いて颯爽と走り出した。
相棒と二人で川越まで行きたかったがそれも自分の力の無さが許してくれない。雁坂は甘くは無いのだ。
「zoffyさん、何急いで行っちゃったの?」
ちょっぴり太めの変タイガーにもここで遂に抜かれてしまう。
万事休すか…。早くもこの時点でデビルは敗色濃厚、既に諦めモードになっていたのでありました…。
《続く》