グッド・ジョブ媚薬8 黙示録98 | 渡夢太郎家の猫

渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

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亮はクラブ蝶を出てまだ作業中の中村達に会寿司を持って
銀座の事務所に向かった。
「中村さん、夜食です」
「あら、長兵衛の寿司ですか?ありがとうございます」
亮から寿司を預かった桃華はお茶の支度を始めた。
「それでどうですか?」

「かなりひどいわね。黒崎は関西ステート銀行が
貸付をした企業から見返りをもらっているようだし、
検索しても出てこない会社もあるわ。
 特にこの3件は山田組のフロント企業です」
「あっ、ホワイト興業の大阪支店も入っていますね」
亮はリストを覗き込んで企業名を記憶していた。

「はい、未回収金がトータルで860億円、
回収不可能の企業が100はあると思います」
「なるほどこの情報が金融庁にばれたら監査が入って
 黒田正一郎の数々の不正が一挙にばれてしまいますね」
亮は中村の出した帳簿を体を乗り出して覗いた。

「亮さん、これを証拠に金融庁に報告しますか?」
「盗み取った情報など誰も信用してくれませんよ。
 ただあの男には罪を償ってもらわないと。
 しかしこんなにひどいとは思いませんでした」
亮はまた落合に連絡をして
金融庁の人間を紹介してもらうか考えていた。

「亮、今どこ?」
美咲から電話がかかって来た。
「事務所にいます、どうしました?」
「あなた私に隠し事していない?」
「い、いいえ別に・・・」
亮は慌ててそれを否定した。

「そう、今日落合さんから電話が有ったわ国税庁の
人間を紹介して欲しいって言ったそうね」
「ええ、黒崎正一郎が脱税している可能性があるので」
亮は落合と美咲がまだ付き合いがあるのかと疑っていた。
「証拠見つかりそうなの?」
「はい、代官山の愛人のマンションの隠しているようです」

「そうか・・・脱税は税務署だからね。ただ横領は警察だから
横領の事実があればすぐ動くわ」
「その時にはよろしくお願いします」
美咲と落合の関係が頭に引っかかっている亮は冷たく答えた。
「落合さんが国税の人を紹介する時私も立ち会うわ」
「分かりました・・・」
亮はしばらく無言でいた。

「ところで美咲さん、塩見の件はどうなりました?」
「飯田さんの件ね。10年前にお金を借りて
1円も返済していないので
 詐欺罪になるから捜査二課が準備しているわ」
「では明日の朝F電機の株主総会で塩見を逮捕してください」
「・・・逮捕すれば恐喝などの余罪が出てくるはずだから
 二課だけじゃなく一課も喜ぶわ、あの塩見を逮捕できるんだから」
美咲は大物総会屋を捕まえる事で
興奮していた。

「美咲さん、横領の証拠があれば逮捕まで
どれくらいの時間が掛かりますか?」
「証拠があれば内偵をして事実関係を
確認して早くて1週間あれば」
「了解です。では殺人なら?」
「もちろんすぐに動くわ」
「そうですよね」
「ねえ、さっきからもったいぶってだれの話をしているの?」
「黒崎正一郎です」

「まさか黒崎正一郎が殺人を犯したと言うの?」
美咲は亮が正一郎にみすみす殺人を
許したのか不思議でならなかった。
「いいえ。まだですよ」
「じゃあ、これから起こるの?」
「まさか知っているんですからそんな事はさせません。
 殺人はたとえ話です」

「じゃあ、横領は事実?」
「はい、一応だいたいのデータは集まったのですが
脱税と横領の事実を確定するには
証拠書類を押収しなければいけません」
「だから落合さんに国税の人間を探してくれと言ったのね」