「今日、国へ帰りました」
「そうさっきいた知的な女性は?」
明美はしっかりと亮を観察していた
「見ていたんですか?」
「あはは、あなた目立ちすぎるわ」
「彼女はちょっとした友達です」
「あなたはちょっとした友達とでもキスするんだ」
「あはは」
「あなたは何の仕事しているの?」
明美は興味深く亮に聞いた
「3ヵ月前に会社を辞めて今は無職です」
「本当?でも英語ができるんだからすぐ仕事見つかるわよ」
明美は慰めるように言った
「明美さんは何の仕事をしているんですか?」
「ナイショ」
「ファッション関係かな、それの服スタジオDですよね」
「ええっ!?わかるの?」
「はい」
「私、スタジオDのランジェリー好きなの、体にフィットして最高よ」
「ありがとうございます」
亮は思わず頭を下げた
「えっ?何が」
「去年のファッションショー観ました?」
「観たわ、あの日からスタジオDのファンになったの、
スーパーモデルもかっこよかったし」
「昼と夜どちらを観ました?」
「両方観たわ」
亮は両方観る立場の職業を思い浮かべた
「両方観たとなると明美さんの職業は、ファッション係か
ファッション誌係ひょっとしたら・・・広告代理店係かな」
「うふふ」
明美は微笑むだけで亮の目を見つめていた
「そうか。ファッション関係ならわざわざ
ライバル社の服を着ないから・・・」
明美は一所懸命考える亮を見て笑いながら
「うふふ、私は音楽関係」
「ええっ?歌手ですか?」
「ううん、アイベックというレコード会社の著作権管理の
仕事をしています、あの時はバックにうちの楽曲を出していたから」
実は亮はファッションショーのディレクターの近藤と
打ち合わせをしていた明美を覚えていた
「すごい、今人気のレコード会社ですね」
「でも、うちの扱っているアーティストレベルが低くて
聞くのも嫌になってくる、だからここに音楽を聴きに来るの」
「勉強家ですね」
「昨日新宿で美容院のオープンでブルックっていう
女の子が唄ったんだけど凄くうまくて、
何処のレコード会社から出るか聞きに言っちゃった」
「なるほど」
亮は昨日島崎が言った事を思い出した
「あんなにうまい歌手を育てられるんだいいなあ、アメリカは」
「日本はダメですか?」
「ええ、日本はプロダクション主導だから歌が下手
でもルックスとお金があればヒットする世界よ」
明美は馬鹿にしたように舌を出すと亮は
「そういえば、明美さんは外人好き?」
「ううん、ここへ来るのは音楽を聴きながら踊るのが目的だから
私から男性に声をかけたのは昨日が初めてなの」
「本当ですか?」
「ええ」
明美は自分を弁解していた
「昨日外人と話をしていたでしょ?」
「うん、ホテルに誘われた。今日も来ているわあの男。
相当やりたがっているわね」
明美はボビーの方を見ると睨みつけた
「昨日もナンパかな?」
「どうもそのようね」
二人は乾杯してお酒を飲むと
「ねえねえ、あそこの人だかり。幸田美喜がいるのよ」
「本当、一人で?」
「うんそうよ、今まで彼女をここで見た事なかった」
「僕ファンだったんです、明美さんちょっと見て来ます、
一緒に行きませんか?」
「ううん。ここで待っている」
明美は亮もただのミーハーだと思ってがっかりした
「すぐに戻ってきます」