地獄タクシーⅡ 三章 煙鬼⑩ | 渡夢太郎家の猫

渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

「二匹目」
礼司が空を見上げると二体の煙鬼はクルクルと旋回していた
「こら、降りて来い」礼司が叫ぶと
「タバコを吸ってもだめ?」
「警戒しているのか?それとも時間稼ぎか?」
そうしているうちに、礼司の持っていた金束の火がだんだん小さくなっていた
「くるぞ!」
煙鬼の一体は隼のように猛スピードで礼司に向かって降下してきた
その瞬間に、礼司はダーツに火をつけ二本の矢を投げた
それはパーンと言う軽い音を立てて破裂した
「今日のは弱いなあ」
「うん」

礼司は後ろを振り返って浜田を見ると、タバコに火をつけようとしていた
「おい、浜田何するんだ!」
「大丈夫です」
浜田がタバコを吸うと、最後の煙鬼が飛んできて浜田の体を覆った
そして、浜田が息を止めて塞いだ両手を煙鬼はすごい力ではずそうとしていた

礼司は金束に火をつけ、それを切ると数メートルの青い炎を出して燃え尽きた
「大丈夫か?」
「大丈夫です、ちょっと熱かったけど」
「馬鹿やろう、なんてことするんだ」
「いや、少しでも夜野さんのお手伝いをしようとおもって」
「俺とお前のレベルが違うんだ。もうまねするなよ」

「はい」


礼司は浜田を優しい目で見た
「23時30分、ミッション終了」魔美が言うと
「まだみたいだ」
礼司が青山の方向を指差すと100メートルほどの
白い煙の塊がやってきた
そして、礼司たちの上空を覆った。
「ひょ、ひょっとしたら煙鬼の親玉」浜田がびびっていた
「ええ、大きい」
「どうりで弱いと思ったよ」
「じゃあ。今やっつけた煙鬼は?」
「あれは、煙鬼じゃない殺された5人の魂だ、これが煙鬼だ」
「そうか、なるほど」
「でも5人も食うとさすがでかい」


礼司は木でに布を巻いて燃料ジェルに火をつけて
魔美と浜田に渡した
「こんなのも買ってあったの?」
「うん、念のためにな」
「さすが夜野さんですね」
「とりあえず避難しよう」
三人とナイルはデパートの中に入った
煙鬼はすぐにデパートを覆った。
「もう脱出不可能ね」
「ええ、ここは地下道もつながっていないし」
「別に逃げるつもりはないさ、浜田後何分だ?」
「20分です」
「この先は何になっている?」
「ええと、別館は映画館とか美術館とか喫茶店もありますね」
「ああ、そっちへ行ってみよう」
「はい」


三人とナイルがデパートを通り抜けると別館は
地下から吹き抜けになっている構造の建物だった
「よし!ここだ」
礼司は地下へ降りると外へ出るガラスのドアの前に立ち
ジュラルミンのケースを開けた
「例のものですね」
「ああ、うまくいくといいけどな」
「なんなのこれ」魔美が不思議そうにすると
「四硫化四窒素だ」
「なんなの?」
「あはは、見てからのお楽しみ」
礼司は吹き抜けになっている空を見上げながら
「浜田、魔美俺が外へ出たら、入り口からできるだけ遠くに離れろ」
「でも夜野さん・・・」魔美は心配そうな顔をしていた
「あれ?このシーンどっかで見たような?」浜田が言った
「俺は大丈夫だ?、魔美たいまつの火が消えて10秒後爆発する」
「はい」
礼司はボトルを2本とたいまつを持って外に出た
煙鬼の白い色は次第に濃くなって上空で渦を巻いて礼司を襲う準備をしているようだった

「さて、行くか」
礼司のはたいまつの火を消して二本のボトルビンを地面にたたきつけて割った
煙鬼はゆっくりと下へ降りてきた
「8.7.6」
礼司はポケットにあるライターを探り火を点ける準備をした
「5.4.3.2.1ファイヤー」
しかし、ライターの火は点かなかった。
すると煙鬼は礼司の体を覆い、口と鼻から入ろうとした。
「夜野さん、何か変」
魔美がガラス窓からのぞくと、ライターを咥えたナイルが
ドアをカチャカチャと前足で引っかいた。
「ナイル行けー」
ナイルは勢いよく外へ飛び出し礼司の前に立った
「おお、サンキューナイル」心の中で叫んだ
礼司はナイルを自分の体で覆い、ライターに火をつけた

その瞬間炎が渦を巻いて数十メートルの火柱を上げた
その爆風で外と中の境のガラスはすべて割れ、破片が
壁に突き刺さった
「夜野さん」浜田が外へ飛び出した
「魔美ちゃん夜野さんがいない」
「大丈夫よ」魔美はにっこり笑った
「大丈夫って?」
二人の前に礼司とナイルが現れた
「ど、どこに行っていたんですか」
「ああ、爆発する瞬間向うの世界に戻っていた」
「よかった」
「23時58分任務完了」
「イェーイ」礼司と魔美は手を合わせた
突然、浜田が頭を抱えてしゃがみこんだ
「どうした?浜田」


煙鬼 完