「浜田何時だ?」
「10時50分です」
「あと10分だ」
「小島タバコ吸うなよ」礼司は願ってナイルの後についた
円山町の狭い裏道を歩きながら
「なんだこの道は」
「ええ、昔の遊郭の名残ですね」
「小島の奴完全に巻く気だな」
その時、渋谷の街の空が真っ黒になって青山の方から暖かい風が吹いてきた
それは、さっき起きた二度の空の黒さではなく強大なドームで囲われたような感じで
礼司の額が痺れるような感覚だった
「来るぞ」
「ええ」
「浜田、あと何分だ」
「あと3分です」
礼司は歩きながらポケットに入れていた
金束を手に持ち鬼の世界に行く準備をしていた
その時、小さな神社の前でナイルが止まり
尻尾を振った。礼司は浜田と魔美に合図を送った
魔美は礼司に鬼のノブを受け取り
礼司と浜田は足音がたたないように
息をこらして祠の裏に近づいた
「小島」タバコに火をつけた小島に声をかけた
「小島吸うな」
「ここは道路じゃないぞ」
そう言って小島はタバコを吸うと
空に有った白い煙が小島の持っているタバコを通して
吸い込まれていった
「あのバカ」
礼司はそれを止めようと小島に飛び掛る瞬間だった
「11時、夜野さん鬼退治の時間よ」
「OK」
礼司が持っていた鬼のノブが光ると
礼司と魔美と浜田とナイルは鬼の世界に移動した
そこには宙に浮いたサッカーボールくらいの白い煙が浮いていた
礼司は1mくらいに伸びた金束にライターオイルを塗って火をつけて上段に構えて真っ二つに切ると煙は一瞬で燃え上がり爆発した。
「やった」魔美は飛び上がって喜んだ
「やりましたね、夜野さん」
「あはは、一匹目ね」
「ええ?まだ居るの」
「たぶん後、3匹」
「そうか、分裂したのね」
「ところで向うの小島は?」
「たぶん生きているだろう、肺の一部分が食われているかも知れないけどな」
「じゃあ、戻ってすぐに病院へ運ばないと」
「いや、真理子さんが通報しているはずだよ」
「真理子さん?」
「うん、ずっと俺達の後をつけていたから」
「ええ?そうだったの」
「さすがですね」
「ふん、歌手を辞めて探偵でもやればいいのに」
魔美はほっぺたを膨らませた
「あはは、さて後4匹やっつけよう」
「どうやって戦いますか?」
「こっちへ向かってくるよ。奴ら俺達の肺を食いたがっているから」
「げっ!」
「魔美これを付けろ」
「何?これ」
「防煙マスク、これなら煙鬼が体に入らない」
「なるほど」
「私の分は?」
「あるよ」礼司が防炎マスクを浜田に渡した
「夜野さんは?」
「俺がつけたら囮にならんだろう」
「でも危険です」
「いつも危険だよ武器がいい加減だから、あはは」
「うん、そうね」魔美も笑っていた
浜田は二人の明るさに驚いていた
「さて、第二段がくるぞ」
「ん」浜田は空を見上げた
「いいますよ、夜野さん」
「ああ」
礼司は金束に燃料ジェルを塗り始めた
「ライターオイルじゃないの?」
「うん。あれはだめだ」礼司はこげた上着の袖を見せた。
「本当だ?」
礼司は耐熱手袋をしてシルバーの耐熱ジャンパーを羽織ったそして
透明のグラスをしてヘルメットをかぶった。
「準備完了」
「ピカピカだね」
「あはは、いくぞ!」
礼司はタバコを口にくわえてZIPPOライターの火をつけると
4体の煙鬼が礼司の上でくるくる回り始めた。
「吸うぞ!」礼司の手が震えていた
「夜野さん、タバコ吸ったことないんですか?」
「ああ」
「一度も?」
「ああ、そうだよ。健康志向だからな」
「夜野さん子供みたいだな」
「うん、かわいい」魔美が笑っていた
礼司が震える手でタバコに火をつけて吸うとすぐに咳き込んだ
「それ、吸いすぎですよ」浜田が言った瞬間
煙鬼の一体が礼司の口と鼻をめがけてぶつかってきた
、礼司は手で口と鼻を覆うとその勢いで礼司は数メートル飛ばされた
もう一度襲ってきた煙鬼に背を向けた礼司は、長く伸びた金束に火をつけると
テニスのバックハンドの用に切り替えした。
その瞬間白い煙はガス風船が爆発するように一瞬で消えた。
つづく