獣医鷹子 3 | 渡夢太郎家の猫

渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

「どういうわけだったの仁」

「まず、バスルームで見つかった、

血液反応は生理の血液だった。

きっと長旅で予定以外の生理だったのだろう。

便器に微妙だけど血がついていた。



恥ずかしいことだったので、

きっと部屋を抜け出して、

ナプキンを買いに出たんだろう」

御神は言った



「だから晩餐会を休んだのね。

ホテルの中にあるんじゃない、

言葉も通じるし」

仁は黄色の縞が入った

ライトバンのラム肉の

ケバブ屋を指差しながら

「きっと、ロビーに出た後。

あのラシードの車が見えたんだろう。

それを見つけてイリヤがホテルを

抜け出して前まで行くと、

新聞かテレビで顔に見覚えがある

イリヤさんに声をかけたんだろう、

東京を案内するって言ってね」



「偶然に?」

「たぶん、あの男、

最初は親切心で声をかけたけど、

気が変わって身代金を取るつもりだった。

そして仲間と打ち合わせするために

外に出た所だった」

「それより彼らの居場所良くわかりましたね」

森岡が言った

「企業秘密です」

「ええ、九鬼さん、いくらお支払えば」

御神は指を一本出した。

「鷹子、無事終了。ありがとうお礼は」

「いつもの通り、ペットシェルターへ寄付してね」

OK


2 望郷

朝6時、田端駅に着くと

ゴルフバックを抱えた男たちが

次々に北口へ向かう。

改札をでると車が止まっており

手をちょっと上げて同じ挨拶をする。

「ウィース」

「おはようございます」

バタン、バタン次々に車の

トランクの音が聞こえると、

次々に扇大橋へ向って走り出した。



約束の6時半にちょっと早く着いて

しまった宮下は、タバコに火をつけて

下りの新幹線がゆっくり走って行くのを見ていた。

反対側の右側を見るとビルの前の

長椅子に11月の風に吹かれて中年が横になっていた。



「酔っ払いか」

宮下は気になってくわえタバコで近づいた。

年齢は60歳くらいでよれよれのワイシャツに、

シミがついたネクタイをしていた・。

右手はなにかを強く握っていた。

「死んでる」テレビでやるサスペンス

のような驚き方はしなかったが、


心臓がどきどきしていた。

ゆっくり後ろを向いて改札に向かい

「人が死んでいます」そう言った。

「鷹子、今日は夕方から源さん

 来るから2階使うよ」

「えー、今年はもう源太郎さん来るの」

「うん昨日電話があった。

今年冷夏で農家の仕事が早く終わったんだって」

「今年も公園のそばのアパート」

「うん、じゃあ早く2階掃除してよ」

母の里佳子はドタドタと階段を上がっていった

「こんにちは」男が2人店先に立っていた。

「はい」

「こんにちは、お久し振りです、

滝野川警察署の岡本です」

身分証を見せた

「あれ、岡本君。和菓子の田端屋のよし君」

「はい、ご無沙汰しています。」

「どうしたの」

「はい、実は田端駅で男性の変死体が見つかって、おばさんなら知っているかと思って」

「そうね、この街の主だから。どんな人」

「似顔絵ですけど」絵を見せた

「あっ」鷹子は小さな声を上げた

「三沢源太郎さんです」

「本当ですか、知っているんですか」

「ええ、母の三味線の先生です」

「何処にお住いかわかりますか」

「青森からの出稼ぎの方なんです、母が知っているんですが。」

「親しいんですか」



「ええ、だからショックが」

「どうしたの」里佳子が降りてきた

「ご無沙汰です。田端屋の岡本芳典です」

「あら、よし君なの大きくなったわね。

警察に勤めているのよね」

「はい」

「それで、何なの」

「三沢源太郎さん亡くなったんですって」

「えっ」里佳子の手と唇が小刻みに震え、

老眼鏡の奥から涙が零れ落ちた。そして、

鼻をかみながら「それで、どこで、どうして」

「田端駅で、たぶん凍死かと思います」



「どうして、昨日電話が有ったばかりなのに」

「今司法解剖をしていますので、

はっきりした事が判ります。

住所わかりますか?あと連絡先」

「はい」紙に書いた住所を岡本に渡した。

1233分、青森県八戸の三沢家の電話が鳴った。



「もしもし」三沢早苗が電話を受けた。

「三沢さんのお宅ですか」

「はい」

「東京の警視庁滝野川署の岡本です。

源太郎さんは?」



「私の主人です」

「実は114日田端駅で身元不明者

の死体が発見されまして、

聞き込みで三沢源太郎さんじゃないか

という事でお電話をさし上げた次第で」

「はい」早苗は電話の前に正座した

「FAX送れますか?」


つづく