引っ越してから都心に出るのに結構な時間がかかるようになった。

でも、そのおかげで本を読む時間が結構取れる。普通に生活してたらなかなか本を読む時間も取れないから。移動はちょっと大変だけど、ま、いっか。




 

 

頑張っても報われなかった女性の話

いや、頑張る機会も得にくく、頑張っても報われなかった話

 

そんな内容だった

 

この話は韓国での話。ものすごい反響があって映画化もされるという。

今の日本はここまでではないが、少し前、ちょうど私が就職をする数年前まではこんな感じだったではないか?と思う。

 

日本では男女雇用均等法が施行されているものの、まだまだ男女が本当に均等に(給与や昇級だけでなく)働き続けたり、活躍していくには越えるべきハードルがたくさんあると感じる。女性自身も変わらなきゃいけない部分もあるとし、世の中全体ひっくるめて変わっていかないと難しいと思う。

 

私自身、振り返ってみると、育ってきた家庭環境の影響で、女性はこうあるべきというものが知らず知らずのうちに刷り込まれていたと思う。(家庭環境が悪い時ことではなく、その影響がとても大きいということ)

この刷り込みは、生きていく上で自分で自分を苦しめることにも繋がっている、と感じる。この本の主人公キム・ジヨンの苦しみとちょっと重なるところがある。

 

自分が知っている、経験してきたことしか選択肢を持てないことの弊害は、比較対象もないから、それが本当に正しいのか、本当は他のやり方があって、別の世界もあるということに思考が及ばない、ということなんだと思う。特に家庭の中で培われる価値観は、自分の中の善悪の価値観を作るのに大きな影響を及ぼしていると思う。キム・ジヨンもそれに苦しめられる。

 

自分のことを振り返りつつ、綴ってみたいと思う。

 

私は父親が働いて、母親は専業主婦という家庭で育った。私が少し大きくなってから母は超家の近所の店にパートで働いていたが、休み時間に洗濯物を取り込みに帰れてしまうほど近くだったし、子供たちが帰ってくる前には帰宅して、掃除、洗濯、食事作りなどすべては母が担っていた。だから子供の私としても母が働きに出ているというように感じていなかった。

 

男性が稼ぎ、女性が家を守る。それが当たり前で、とても幸せだったし、家庭ってそういうものだと思って、そう刷り込まれてきたと思う。私が住んでいたエリアは一戸建てが多いTHE新興住宅地で、ほとんどの家庭がそうだった。働いている母親というのはほとんどいなかった。母親が働く=家庭に何か事情がある、みたいな風潮だったと思う。

 

そんな世界しか見ないまま育った私は、結婚したら仕事を辞めて家庭に入って、子供を産んだら専業主婦として子供の世話、家のことをやるのが当然。そんな人生になるのだ、と他の選択肢があるとも考えなかった。自分が経験してきた、育ってきた環境がとても幸せだったと感じてきたから、それが正しい女性の生き方、なんだ、と子供の頃からずっと思っていた。

 

今でも覚えていますが、高校生の保健体育の授業で、家族計画みたいな授業があって「どんなふうに将来を考えているか?」という質問があったのですが、私は「22歳で結婚して、2、3年後の25歳くらいで子供を産みたい」と答えていた。

質問にはなかったが、私の頭の中で、「働きながら」という選択肢は0。働きながら子供を産んで育てるなんて思い浮かばなかった。女性は仕事をバリバリやって、活躍していく、なんて将来はイメージできなかった。

 

学生時代、女性でインテリアの専門学校を作って、インテリア界の第一人者として活躍している方の話を聞く機会があった。その方はシングルで娘さんがいて、それでバリバリ仕事をしてきたキャリアウーマン。話を聞いた私は、講演の最後の質問で「子供がいるのに仕事をそんなにして、子供はちゃんと育つのでしょうか?」と、講演のテーマから外れたトンチンカンな質問をした。仕事のやりがいもわかったし、女性が活躍する大切さもわかったんだけど、子供を産み育てることと、仕事をバリバリとすることが並行してできるイメージが全くなかったのだ。

私の思考では、母親は基本的にいつも家にいて、家事、育児の一切をするものだったから。

その方からの答えは「子供は親の背中を見て育つので、一生懸命仕事をしていたら、その背中を見てちゃんと育ちます」そう言ってくれました。半分納得、半分疑問、だった。そんなの見たことがない世界だったから。

 

社会人になって最初は事務職だった。隣で活躍している総合職の同期は輝かしく羨ましいとも思った。でも私はどこかで自分に歯止めをかけていた、いや、明らかに歯止めをかけていた。

自分の性格上、仕事が楽しくなっちゃったら、結婚なんてしない、子供もいらない、となってしまうとわかっていたから。言ってみれば腰掛けOL(今はもう死語だと思うけど)だったと思う。

まぁ結果的には3年くらい腰掛けでいたけど、どうやら結婚しそうもないぞ、と思い、そこから総合職に転身し、仕事もめちゃくちゃ楽しくなり、今に至る(笑)って感じ。今の私を知る人からは多分想像できないと思う。

 

30を前に結婚した時は、周りの古い方からは「仕事はやめるのよね?」と確認された。まだまだその頃は今よりも女性は結婚したら家庭に入る価値観が強かったのだと思う。結婚したくらいで、仕事は辞めせんよ、いまどきは。この頃には私も仕事が楽しくなっていて、結婚しても、子供を産んでも続けたい、と思っていた。まぁ正確には子供を産んで働くイメージはなかったし、仕事が楽しいうちは子供はいらないと思っていた。(そんな考えでいたために結果的に超高齢出産になってしまった!)

 

出産は思っていた以上の環境の変化、心の変化があり、戸惑った。

出産すると女性は物理的に動けない時期がある。その間はお休みしなきゃいけない。まだ小さな子供を保育園に入れるかどうか?も人によっては悩むことになると思う。

この物語の中でキム・ジヨンは「子供ができてもいないのに、預け先のことを考えている罪悪感」と言っている。「育てられもしないのに、どうして子供を欲しいのか?」

預けて働くことの大変さ、を産む前から感じているのだ。

実家がすぐ近くにあるとか、何かの時に安心して預けられる先があるか、ないか。預けるのだってそれなりのお金がかかる。その出費をどう捉えるのか?これは今の日本の女性が結婚後子供が欲しいと思った時に悩むポイントになっていると思う。

子供を預けて働くことへの葛藤。周囲からの目線、いろんなことがぐるぐる回って言い表せない苦しみを味わいながら過ごしている人は本当に多いと感じる。

キム・ジヨンの葛藤する気持ちにとても共感した。

 

・女性自身が家庭のこと、家事、育児、旦那さんのことを全部やろうと思う刷り込みは捨てること。(これが一番自分で自分を苦しめることになると思う)

・世の中が子育てしやすく変わっていくこと。

・男性が、女性が抱えている葛藤や悩みを理解する姿勢を持ち、協力的になること

 

これらのことが子育てしやすく、結果女性が男性と同じように社会で活躍できる世の中を作ることに繋がるのかと思う。生産人口が減っていく中で女性の活躍というのは重要な課題となっていくと思う。

 

ちなみに生産人口減のなかで、この先必要になってくる女性の活用についてはこの本の内容がとても説得力がある。




まだ結婚、出産していない女性が、結婚をためらったり、出産を諦めることないような世の中になって欲しい、と切に願う。今って、女性が子供を産んで仕事を続けることは大変ってイメージしかないように感じる。
 

この本は夫婦間の会話では、男性が理解しきれない働く女性の葛藤が描かれていると思う。

物語の最後はとてもショッキングだけど、産後の女性なら誰しもそうなる可能性があるのだと、ことの深刻さを教えてくれる。

子供が生まれたばかりのパパさんにぜひ読んで欲しい!と思う。