芹乃は少し大きめの木を探して、その近くで火を起こそうとしていた。
「芹乃、俺がやる」
大悟が芹乃に追いついてきた。腕には薪が抱えられている。
「あいかわらず、こういうことには用意がいいのう」
芹乃がふっと笑った。大悟は火をおこし、薪をくべた。
「こういうことだけ。俺はこういうことだけなのだろう」
「何をすねているのだ。あぁ、さっきの夫婦がどうの、という話か。あれは・・・」
「説明せずともよい。わからないわけがないだろう」
大悟は芹乃に背を向けたまま、話を続けた。
「それよりおまえは、これで良かったのか。
二人が夫婦でなかったのであれば、兄上の芹乃への気持ちは真実だったという証しにならんのか」
「あぁ、私も葵様から打ち明けられた時、そう思ったさ」
「だったら何故、葵殿をここへ連れて来たのだ。ここへ来れば、こうなることはわかっていたろうに」
「ここへ来ようと来まいと、兵衛様が生きて帰ろうと帰るまいと、何が変わる。
何も変わらない。
葵様は兵衛様の奥方で、私は女刀鍛冶。それのどこが変わるのだ」
芹乃は吐き捨てるように言った。
大悟はしばらく考えていたが、やがて薪をある程度くべ終わると、芹乃の隣に座った。
「芹乃、北燕山で暮らしていた時は、まさかこんなことになろうとは、考えてもみなかったな」
「そうだな。ずっと源じいと丈おじと、それから大悟とずーっといっしょに暮らしていくのだと思っていた」
「・・・源じいのことは、すまない。結局俺たちの争いに巻き込んでしまった」
「いや、すべてはいくさを起こした三つ口定継のせいだ。
私の両親もいくさで死んだのだからな。
それに粛清に来て、私は生きる道を見つけた。すべては運命のなせる業だ」
それから芹乃は大悟の肩にもたれかかった。
「でも、もしあのまま北燕山にいたら、大悟に嫁いでいたのかな」
大悟は震える手で、ゆっくりと芹乃の肩を抱いた。
続く
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