「芹乃は何も言いません。俺はあいつと幼なじみです。
十四年間いっしょに育ってきました。芹乃の悲しみは俺の悲しみです
兵衛は苦しそうに、口を開いた。


「愛していた。本気だった。逃げようと誘ったが、芹乃の方から断られてあきらめた。


もう会わないと思っていたが、今日たまたま義父上と葵が出かけることになり、我慢できず会いに行ってしまった

 

だがもう会わない。何もかもわかってしまい、芹乃を傷つけた


当たり前だ!」
大悟は言うが早いか兵衛を殴りつけた
。兵衛はふいをつかれて転んだ。


菊之介は驚いて兵衛のもとへ駆け寄ると、兵衛は口が切れて血が出ている


大悟兄。急に殴るとは、ひどいではありませぬか
菊之介が言うと
「良いのだ、菊之介。悪いのはこのわたしだ


逃れることのできない運命を呪いつつも、自分でどうすることもできなかった。

 

 

葵のこともいっしょになるしかないのだと諦め、すべて受け入れて来た


今になって好きな女子(おなご)ができたなど、どの面下げて言えるのか。
言えるはずもない

 

芹乃と逃げることが出来なかった時からこの日が来るのはわかっていたことなのだ。


だがわたしの芹乃に対する気持ちに嘘はない。ほんとうのことだ」
「まだ言うか」


大悟が再びこぶしを振り上げようとした、その時、菊之介が大悟の前に立ちはだかった。


「大悟兄。兵衛兄には兵衛兄の事情がありましょう。
それに男と女というものは、本人同士でなければわからないことがあります。

 

これは兵衛兄と芹乃殿の問題です。
私たちのとやかく言う問題ではないのです」


「しかし、芹乃は・・・」
大悟兄、芹乃殿への自分の気持ち、やっと気づきましたか
菊之介に言われて大悟は狼狽した



「な、なにを言い出すのだ。俺は別に・・・」
「それは今、関係ないですね。あえて追求しません」
菊之介は兵衛の方を見た。



兵衛兄上、傷は大丈夫ですか」
大事ない
兵衛は、ゆっくりと立ち上がった。

 

続く
ありがとうございましたm(__)m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ