「いいや、芹乃のせいではない。わたしが悪い。すべてわたしが悪いのだ


その時兵衛の胸の中の、母桔梗の形見の柄がカタカタ鳴り出した。

驚いて芹乃から離れると、兵衛の背中から光が放たれた。


兵衛は甘露を過ぎたところで、同じことが起こったことを思い出した。
兵衛が振り返ると少し離れたところで、二人の若者がやはり体から光を放っていた。

 

さらに柄が兵衛の胸から飛び出し、二人の方へ飛んだ
ひとりの若者の懐からは鍔が、もうひとりの若者からは太刀が飛び出し、三つの道具はぶつかってカランと音をたてて落ちた。


それとともに光も静かに消えていった。

兵衛は何事かと自分の柄の飛んだところまで走った。


二人の若者も走って来た。
兵衛にはまだ何の事やらわからなかったが、若者二人にはわかっていた。
二人は兵衛が駆け寄ると同時にひざまずいた。


「丈丸兄上ですね。父の名は草薙丈之介。母は桔梗。
俺は草薙大悟。幼名を梗丸と申します」

さらにもう一人が言った。
わたしは菊之介。先のいくさの後、生まれた弟です

 

 

兵衛は二人を見比べた。あまりに突然のことで声も出ない。
「驚くのは当然のことです。


だが我々は、何度か光の龍の紋章、鍔と太刀が呼応するのを体験しております。
兄上の柄は母上の形見ではありませぬか

大悟に言われて、兵衛は頷いた。

 

すると今度は菊之介が、
「この鍔は、母・桔梗から預かったもの。

また大悟兄上の太刀はやはり母が使っていたものなのです。
つまりこの柄、太刀、鍔はもともと一つのものだったのです。


ですから、こうして一つになろうと呼応して自ら集まったのです。

それに、これはわたし達もわからないのですが、今わたし達の体から光が放たれましたよね。


その時、わたしと大悟兄上には髭を蓄えた龍の紋章が現れるのです。
今丈丸兄上のは確かめないでしまいましたが、きっと龍が現れたはずです」


龍の紋章?そういえば義父上がそんなことを言っていたような‥‥‥」



兵衛がはじめて口を開いた。
兵衛の龍は、背中なので自分で見ることはできない。


甘露で背中が光った時、背中を見た洸綱が、龍の紋章を見たと言っていたような気がする。

ではこの若者たちは、本当に弟なのか。


「一つ聞きたい。母桔梗の家と兄弟については存じておるか
「もちろん」


二人は口を揃えて言った。そして顔を見合わせると、大悟が言った。

 

続く
ありがとうございましたm(__)m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ