「先日のリフォームの見積もりですが・・・。」
冬沢秀雄が施主の家に電話をしている。
「はい、ではご主人に聞いてみて、予定が合えば伺います。。」
ふぅ。
「ため息ですか、冬沢さん。」
「あぁ、鈴原か。いや、鈴原部長。」
「鈴原でいいですよ。
例のおおがかりなリフォームの件ですか?」
「鈴原ってわけにはいかないだろう。
そうそう、中杉邸。
あの見積もり、一千万近くなりそうでね。」
「リフォームで一千万?」
「そう。それにあの内容だと、引っ越ししないと難しいな。」
「住みながらは、無理ですか?」
「このままだったらね。」
このままだったら、とても住みながらは出来ない。
「やり直しですか?」
「そう、まったく予算が合わなかった。」
冬沢秀雄は、カウンター席で焼き鳥を口に運んだ。
「全部?」
「ほぼ全部。」
鈴原絵梨香は、もう何杯目になるのか、
酎ハイを片手に冬沢の顔をのぞいた。
「いくらが施主の予算だったんですか?」
「おそらく、半分くらいだったんじゃないかな。
それが一千万円。
さらに、壁を抜く工事もあって、
住みながらは無理だと話したら、とたんに工事縮小になった。」
「カーテンも・・・。」
鈴原絵梨香の提案したカーテンは、高すぎると却下になっていた。
「水回りの工事も、対面式にすると水栓を引く工事が入るから、大きいしな。
オール電化のはずが、風呂のガスは残しだな。」
冬沢秀雄#2へ続く