毎日事件ばかりのベトナムの日々がすぎていきました。

寿司屋を始める時、とりあえずは立ち上げに3ヶ月いれば大丈夫だろうと思い、9月の誕生日には帰国する予定でした。


前回の記事


しかし、寿司屋の経営には、すべての書類にサインをしなくてはならないという仕事があり、そう簡単に帰れる状況でなくなってしまいました。
(前回の記事でも触れましたが、立ち上げの段階で共同代表が離脱したこともありましたので)

なので、日本の経営は兼ねてから任せることを決めていた代表に委ねていました。

2018年の春には、ほとんどのスタッフを辞めさせていたため、彼女はひとりで営業をしなくてはならなくなったのですが、何人も辞めさせたおかげで、人件費のコストは下がっており、既存の販売店のサポートだけでもそれなりの売上がありましたのでしばらくはなんとかなっていました。

でも、現状維持だけでは事業は衰退していきます。

販促のためのキャンペーンも、それまで私が主導で企画をし動かして来ましたが、代表となったからには、そこも自分でなんとかしていけるようにしないといけない。

これまで会社が回っていたのは、その他のスタッフみんなが動かしてきたからだということに、気がついてくれたら良かったのですが…

自分が蒔いた種に気がつかずに、自分が選んだ道なのに、そんなことはお構いなしに、経営が悪化していくことで、残ったスタッフにも非情な行動をするようになっていたようです。

管理部門の部長に言われていた
「これからどうするんですか!このままじゃ会社潰れますよ!!」
というセリフが、辞めさせて言われなくなったとしても、どんどん現実に迫って来ていました。

もちろん、お客様にはきちんと接しますし、そこを評価しての代表として託すことにしたわけなので、その裏側を知る人は身内しかいません。

それはもう、その年の夏に、就任記念も兼ねた優秀販売店さんのベトナムへの招待旅行の時も大変だったといいます。

寿司屋で行った会食での素敵な集合写真もカメラマンに撮影してもらいましたが、差し支えがあるので料理の写真で。

いい加減な仕事で起こるミスやトラブルなど、様々な尻拭いをしていたのは、残された他のスタッフでした。

ずっとフォローをしてきた梶本も、あまりの心のなさに涙して、これ以上は申し訳ないですがついていけません!と私に漏らし、退職することになりました。

ベトナムもどんどん人がいなくなりましたが、日本もどんどん人がいなくなりました。
(と書きながら、ちょっと笑えて来ました)

大変だったと思いますよ!
でも、日本の経営をすることで、望む給与を得ることを約束したわけですし、その約束の中には、私の家族のための私の給与も支払うことが条件となっていました。

私もベトナムの立ち上げに必死で土台を作っていたわけなので、それぞれがそれぞれのパートで全力を尽くすことが約束でした。

しかし、いつからか、その約束は反故されて、自分は赤字の会社を押し付けられたというストーリーに変わって行ったようでした。

赤字の会社って…笑
なんか本を読んで感化されたみたいですね。
黒字にするのも簡単ですし、赤字にするのも簡単です。

問題はそこじゃない

支払いをどんなに減らしても
人を減らしては売上は増えない
人を減らすなら人に変わる営業手段を持たないといけない

しかし、それに気が付かないまま、とうとう、彼女は禁断の「安売りのまとめ買い」でその場の売上を凌ぐようになってしまいました。

何度もアドバイスをしましたが、被害者意識で自分は悪くない、悪いのは周りだ!と思ってしまっていては、自分を変えることに辿り着きません。

どこかで気がついてくれることを祈りながら、私はギリギリまで力を貸さずに、成長を見守ることにしていました。

「安売りのまとめ買い」
安売りは利益を削り、まとめ買いはその先の売上の前借りです。

それだけはやるな!と厳しく言いましたが、もう聞く耳はもちません。

そこからは、あっという間に困窮することになってしまいました。

残った僅かなスタッフ達から、職場での傍若無人な態度を聞かされ、また私との約束にも「誰々がこういった!」と、守らないことが正しいと言い始めました。

そんなころ、魔が差すんですね。

知人の宗教じみた女性が彼女に近づき、毎日のように事務所に通うようになったそうです。

その女性は挨拶もせず、オフィスをシェアされている方々がいる部屋のドアを気が悪くなるから閉めろとか、私が購入して飾っている千手観音が悪いからどこかにやれだとか言い出し、彼女も仕事そっちのけで、その人の信者になったようにいろんなことを言い出したそうです。

私はそれでも、じっと待っていました。
最後の最後まで…

日本を支えてくれているスタッフ達には、本当に申し訳なかったけれど、でも、スタッフ達も私と同じ気持ちだったと思います。

気がついてほしい。

しかし、最後の踏んではいけない境界を踏んでしまったのを見逃しませんでした。

何をしたかは控えておきますが、それはひとつではありません。
これ以上彼女に任せてはおけないと、私は意を決して日本の代表に戻る決意をしました。

そのことにより、彼女がどのような行動を取るかを予測していました。
熱心にオフィスに入り浸る宗教じみた女性が、何を入れ知恵していたかも想像できていました。

でも、最後に責任を取るのは私です。
代表として任せていましたが、会社の債務などの連帯保証人は私のままでしたし、彼女は雇われ社長で株も持っていませんでしたから、彼女は会社を潰しても、辞めても何のリスクもなかったんです。

そこまで守られた状態で、任せられていたことに気が付いたでしょうか?

魔が差すという意味。
悪魔が心に入り込んだように、一瞬の判断や行動を誤る。普段は思いもよらない誤った行動、モラルに反した行動をしてしまうこと。

善意という名の悪魔に、多くの無責任な人たちがなっていたことに、今になって気がついた人はいるでしょうか?

本質を知らずに、勝手な憶測で彼女に魔をさした人たちがたくさんいたことも知っていますが、
魔が差すことのなかったスタッフ達がいます。

すべては本人の心の在り方だと私は思います。