スタートが近づき、招待選手が入場してきた。
目の前は片岡純子。その隣には藤原新の姿。
カウントダウンが始まり、Wさん、Kさんとエール交換し合砲とともにスタート。
大学構内は思ったよりも下り基調に感じられ、かなり速いペースでの入りとなった。
寒さで凍えた体を温めようとしたことや最前列に並んだため周りのランナーが速いこともあるが、1キロ3分50秒切りは想定よりも速過ぎる。
このままでは最後まで持たないのではないかとの不安も頭をよぎり、いったんペースを落ち着かせ、周りのランナーを前にやり過ごしながら自分のぺースをつかむことを意識する。
他のランナーが汗をかき始めているのに、自分の体はそれほど温まっておらず焦りを感じる。
スタートは寒かったが、レース中に10度以上も気温が上昇する予報のため、給水ごと
(約7〜10キロ間隔)に炎熱サプリを摂取しながらアミノバリューを飲み、極力首の裏に水をかけることにする。
昨年のレースでKさんのガーミンが狂ったことを聞いていたため、最初の10キロくらいまではペースコントロールにナーバスになった。
時刻とグロスタイムを見比べて問題ないことを確認し出してからはペースも安定。
キロ3分58秒くらいを意識し、4分を超えないように気を付けながら走る。
いくつかできる集団の後方に位置することが多かったが、自分のペースよりは2〜3秒速く感じたため単独で走ることを選択。マイペースの維持だ。
途中から尿意を感じながらのランとなり、給水ごとにドアのないトイレが設置されているのが見え、入りたい誘惑にかられる。
でも確実にタイムロスとなるため「今日は入らない」と決意するのだが、トイレを見るたびに入りたくなる。
次第にペースが安定し、このまま3分58秒前後で行ける感覚が強くなってきた。
スピードに不安は感じないものの、ハーフまでが意外と長く感じる。
ここで最初のピンチ。ハーフのラインを越えた瞬間、右の臀部に鋭い痛みが。
「ひょっとしたら途中でリタイアか」と一瞬不安になったが、淡々と走ることを意識。痛いのは気のせい。
30キロを超えてもペースは落ちない。周りのランナーも微妙に順位が入れ替わるだけで同じ顔ぶれでの並走が続く。
アンダーアーマーのタイトなウェアを着た200番台(300番台の僕より持ちタイムの良い格上だ)のランナー。
競歩の選手かと思うほど膝を伸ばしたまま走る200番台の年輩ランナー。
ウサギの被り物をした若いランナー。
ウサギランナーは特に人気があり、沿道からの声援を一身に浴びている。
淡々とラップを刻んだまま34キロ過ぎへ。
給水所が見えたところで、シーズン中ずっと苦しんできた右ハムに嫌な張りが走った。ヤバい、このままだと攣ってしまう。
こんな時のために用意して来たのがこむら返り用の錠剤(その名もコムレックス)。
短パンの後ろのポケットに入れていたが、うまく取り出せず大きくペースダウン。
封を切るのにも手間取り、6粒のうち4粒くらいしか口に入れられなかったが、給水直前に口の中に放り込み、給水所の紙コップを受け取り喉に流し込む。
ペースが落ちて若干タイムを落としたが、これは必要な事と割り切る。
とにかく足を攣るわけにはいかない。
呼吸は苦しくない、身体もまだいける。脚も動く。でも攣ることだけは避けたい。
ペースアップもできそうだけど、それで足を攣っては元も子もない。
イーブンペースを守ろう。
大学構内に入った。
ゴールまではまだ4キロくらいあるか?北海道マラソンで北大に入るよりも随分早いんだな。
脚はまだ大丈夫。身体も動く。3分58秒をずっと維持できている。
途中からはペースが落ちたランナーをほぼ抜き去る一方。自分を抜いたランナーはほとんどいない。
経験上これはいける。
抜く方のランナーはメンタルも維持できる。脚も思う通りに動く。
残り2キロ(?)の折り返しに到達。
大学構内に入った辺りから、目標の1キロ4分切り達成のイメージが頭に浮かんできたが、ここまで来るとほぼ確信となる。
最後の左折を終えると陸上競技場が見えた。
ここからが長い地元の大会とは違ってゴールもすぐ目に入る。
もう大丈夫。目標達成は確実だ。
最後の直線は身体の底から湧き上がってくる感情でガッツポーズが抑えられない。
そのままガッツポーズとともにゴール。
2時間48分30秒(ave.3'59''60)。目標達成だ!
ゴールしても雄叫びが止まらない。
周りを見ると同じような人がたくさんいる。
少し遅れてウサギランナーがゴールして来た。
僕と同じく彼も初のサブエガ(2時間50分切り。語源は江頭2:50より)とのこと。
お互いに感謝と栄誉を讃え合う。
10年以上走ってきたけど、今日が間違いなく自分のベストレース。
雨の日も、風の日も、雪の日も、すべてはこの日のために準備してきた。
心からの喜びは、決してお金で買うことはできない。
今まで走り続けてきて本当に良かった。


