復路、西湖を順調に抜けて残り時間の心配も少ない状況となったことで、信号待ちやエイド以外の「歩き」をこの日はじめて挟みます。
・・・さすがに走っているときのリズムとは違うので、全身が一瞬ガクンとなります。
加えて、次に走り出すタイミングが取れない。
これは冬の寒い朝、温かいふとんにくるまっているようなもの。
まだ遅刻する時間でもなく、ふとんを引っぺがすオカンもいないけど、いつか自分の意志で起きなければならない。どうしよう。という感覚にきわめて近いものがありましたよ。ええ。
どうしよう、どうしようと思いつつ歩いていたら、
ほどなく西浜小学校のエイド(58km)に辿り着きました。
周りもみんな、エイドを前にして歩きに変わります。これはいい区切りになってラッキー。
気温は大きく下がりませんが、冷たい風がだんだん強くなっていて
身体の中からちょっと冷えてきた感じがしました。
「ココア、いただけますか?」
このエイドではホットドリンクを頂戴します。
レースで温かいものを飲むのはつくばマラソンでのおしるこ以来ですが、甘さと温かさで心から落ち着きました。感謝。
後ろから来るランナーも、レモンティーやコーヒーなどホットドリンクのリクエストが次から次へと。思いは同じということでしょうか。
エイドで必要以上の長居は禁物。
軽くストレッチをして、再び下りとなった道を河口湖に向けて走ります。
あと14km。
練習でも普通に走っている距離が、とんでもなく長く感じます・・・
ただ、心は折れません。
むしろこの状況は走る前から望んでいたものじゃなかったのか、と。
どこも痛いところがなく、疲れもせずにゴールなんて、何がおもしろい?
心身ともにすっかりヤラれてしまいながらも、その状態を楽しむことこそウルトラの醍醐味。
満足に身体が動かなくなることを覚悟して、著しい疲労をむしろ歓迎して走るからこそ、ウルトラのやりがい。
よくマッサージで「イタ気持ちいい」という表現をしますが、
同じ理屈なのです。辛くもあり、楽しくもある。「ツラ楽しい」。
麻痺ではないんですね。
痛みや苦しみをすべて「受け入れている」状態。
初めてのフルマラソンでも、ここまでは思いませんでした。
ということはこれが、
「相棒」の舞台挨拶で水谷豊が言ってた『ゾーン』というやつなのでしょうか。。。
とことん自らを苛め抜いた先に見えるのが富士北麓のゴールテープだという思いを胸に、河口湖もしっかりと走り抜け、あと約6km。いよいよ立ちはだかる最後の難関へと向かうのでした。
(つづく)