ニューヨークってアメリカにあって
他州とはまったく違うことがたくさんあります。
その一つが住居形態です。
ニューヨークには、コンドミニアム以外に、Coopが存在します。
コンドもCoopも一見見たところでは違いはまったくないアパートメントビルです。
Coopを買っても登記されるわけではなく、そのビルの住人に割り当てられた株主になるのです。
しかもアッパーイーストのアパートメントビルの90％近くはCoopなんです。
問題は、Coopのアパートを買うとなると、住人たちで組織された理事による審査があって、それを通過しないと買えないのです。
しかも面接審査まであるんです。
（まるで就職試験みたいでしょ）
そこではねられると、どれだけお金を積んでも入居できないのです。
わたし達家族が20年以上住んでいるのもCoopです。
この仕組みはニューヨーク独特で、他州からくるアメリカ人たちはまずここで驚きの声をあげ、戸惑います。
アパートを買うのに、どうしてそのビルに住む人たちに自分たちの財政面の情報をすべて公開しなくてはいけないのか。
ここで多くの人が抵抗します。
しかし、この審査を通過しないと購入はできないのです。
しかもCoopの理事たちは、なぜその買い手の入居を拒否するか、その理由を明かす必要がなく、それは法的に守られています。
理事たちが、彼、彼女には同じビル内に住んでほしくない理由を見つけてしまえば、極端な話、お断りできるのです。
パークアベニューには昔、ユダヤ人の弁護士は絶対に入居させたくないというビルがありました。
どんな理由でビルを訴えてくるかわからないから、というものでした。（呆れます）
わたしも今住んでいるCoopの面接の際、かなりドキドキしました。
その当時、ビル内に住んでいたのは白人家族だけで、アジア人は一人もいなかったからです。
また、仕事がらみの上司などの推薦文、プライベートの友人の推薦文も通常3人ずつ必要です。
さらにコンドミニアムと違い、貸し出すにも借り手も面接を通過する必要があります。
だいたい貸せるとしても3年ぐらいまでと期間に限りがあります。
だから投資目的ではなかなか買えません。
特にアメリカでの納税証明書を提出できない外国人はまず買えません。
普通、買うと決めると、全額を現金で払うのは大変なので、まずは住宅ローンを組みますよね。
Coopの場合は、住宅ローンを組めるパーセンテージもビルによって決まっています。
アッパーイーストのパークアベニューから五番街の間のCoopですと、だいたい購入価格の50％までしか住宅ローンは組めません。
しかも、その金額を払ってしまった後、すぐに現金化できる資産がほとんどなくなってしまうとなると、これまたダメなんです。
ということでそれを調べるための書類審査なのです。
書類審査では、過去３〜5年の納税証明を提出する必要があります。
わたしが今住んでいるビルでは、それに加えて今ある資産の詳細も提示する必要があります。
株式を保有している場合は、その逐一の会社名と現在の資産価値をリストにし、絵画を所有している場合は査定した上でリストにします。
わたしが不動産の売買を仲介していた頃は、この書類審査用のパッケージを作ると、膨大な枚数になり、厚さにして10cmの紙の束になることもありました。
今はこの審査、すべてオンラインでできるようですが、昔は、それをそのビルの理事たちの人数分コピーして製本しなくちゃいけなかったんです。
また、Coopはコンドミニアムと違い、簡単に人に貸せません。
貸すときも借りる人は理事面接が必要です。
当然ですが、投資物件にはなりにくく、外国人でCoopを買う人はとても少ないです。
ただ、Coopにもいい面はあって、隣に住んでいる人が得体のしれないドラッグディーラーだったとか、テロリストだったということはまずありません。
全員入居する際、審査を経て面も割れてます。
だから一旦住み始めると隣人と親しくなりやすい利点は大きいです。
お値段的にも、コンドミニアムよりうんと制約が多い分、20％ほど割安です。
と言っても、アッパーイーストの一等地にあるのはほとんどがCoopです。
さて、こうしてアパートを探し始めた娘。
最初は、コンドミニアムを買う予定で探し始めました。
ー続くー
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