アメリカに住んでいると、日本にいるとなかなか入ってこない情報がポロリと入ってくることがあります。
セントラルパークに今頃咲く不思議な木の花
例えば上皇さまに関して90年代にこんな微笑ましいエピソードを聞いたことをふと思い出し、暖かい気持ちに包まれました。
その人はトニー賞も受賞したミュージカルの歌手でした。
もう、名前も忘れてしまったのですが、その黒人の歌手のマネージャーと、当時とてもよくしていただいていた憧れのマダムが親しくされていて、そのマネージャー宅のクリスマスパーティにお誘いいただいたことがありました。
マネージャーも歌手の人も、もう、めちゃくちゃ気さくな人たちでした。
少しお酒が入り、歌手の人と話しているうち、その彼は、上皇さまが90年代にニューヨークをご訪問された際、多分お忍びで（？）ご覧になったミュージカルに出演していたということを知りました。
ショーの後、上皇さまがお声をかけてくださり労いのお言葉もあったそうです。
本人はもちろん、マネージャーも大喜び。
これですっかり気を良くした二人。
その翌年、彼らは公演で日本に行くことになりました。
「せっかくだから天皇（当時）に会いに行こう」
ということになったそうです。
「え〜、会いに行こうって、皇居に行くの？」
もうその発想にびっくりしてしまいました。
「そうだよ〜。皇居に会いに行ったんだよ」
と、彼は屈託がありません。
でも、勝手に行っても入れてもらえないでしょ。
いきなり白人と黒人のアメリカ人のコンビで天皇に会わせてくれ、って言って会えるわけがない。
「もちろんだよ〜」と彼。
ところが。。。
会えたんですって。
どうやって？？？？？
マネージャーが皇室か外務省かにアポイントを取ったそうです。
どうやって？？？？？
わからないけれど、とにかくアポが取れて、いついつにお越しください、と言われたそう。
で、皇居に参内し、天皇と皇后両陛下にお茶をご馳走していただいたそうです。
わたし、目が点です。
つい、根掘り葉掘り、
「その時、陛下のこと、どう呼んだの？」
などと聞きました。
きちんと、ユア・マジェスティ/Your Majestyと彼らは言ったのかと、プロトコールをつい考えてしまいました。
ところが、
「ううん、ジミーと呼んだよ」
と。
えっ？ ジミーって。。。
ジミーって、何それ、だれのことですかって、最初は意味がわかりませんでした。
ジミーというのは、戦争直後、上皇さまがまだお小さい時、アメリカ人の英語教師が付いていて、その教師が陛下につけたアメリカの名前だったのです。
お茶目に、ジミーと呼んでくれていいよと、おっしゃったのでしょうか。
それでどんな会話をしたの？
って、もう興味津々でした。
で、突っ込んで聞いてみました。
「何か、覚えた日本語はありますか？」
と、そのジミーが聞いたそうです。
で、彼は
「はい」
と答えました。
そしてちょっと凄んで、
「ジョーダンジャネイヨ！」
と、続けたのです。
これで大爆笑の渦に包まれたとか。
わたしたちも大爆笑でした。
これを聞いて、わたしはいっぺんに当時の天皇陛下に対する印象が変わったことを思い出します。
もちろん、100万倍大好きになりました。
彼らがアメリカ人だから、いろいろなしがらみもなく、心からくつろいだ時間を楽しまれたのでしょう。
彼らもまた、ジミーと陛下をお呼びするのは、ある意味、計算してのことだったのかもしれませんね。
却って特別扱いしないその気軽さを楽しんでくださると想定して。
そうは言いながら、絶対に失礼がないのはもちろんのこと。
親しみながらも、ある線からそれ以上は絶対に立ち入らない距離感の保ち方も、彼らは職業柄、完璧なのでしょう。
そのエピソードを聞いて以来、両陛下が災害などの時、すぐに被災地に向かわれ、お寒い中、膝をついて被災者の方達の手をとり、お声をかけてまわられるお姿に、「ああ、本当に人間がお好きでいらっしゃる」「人間を心から信頼してらっしゃる」ということを実感しました。
両陛下におかれましては、これからはお好きなことをお好きなままに、お好きな方々と会われ、思う存分楽しんでいただきたいと切に願います。
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