※75話の続きです。
ワタシは、新宿ネロの事が好きだよ!!!
実尋の高い声は、廊下中に響き渡った。
「渋谷、オマエ・・・・」
「うっ・・・」
実尋は、力なく座り込んでしまった。全身全霊を込めた思いを叫んだ為か、一気に緊張の糸が切れたのだ。
「渋谷・・・・」
ネロは、実尋の元へ駆け寄った。
「は・・・鼻血が出てしまった~☆ふ、不覚~・・・こんな良いシーンで、、まさかの鼻血でオチを作ってしまうとは・・・」
「オイオイ・・・泣いたかと思ったぞ!」
「トホホホホ・・・泣いていた方がマシだったよ~」
ネロは、素早くトイレットペーパーを大量に持って来て、実尋の鼻血の止血作業と、床に垂れた鼻血の掃除をした。
「うっ・・・ようやく止まった・・・・」
実尋の鼻血は、5分程で落ち着いた。
ネロは、実尋を見て静かに笑った。
ネロと実尋は、学校の最寄り駅まで一緒に帰る事にした。勿論、カナリ遅い時間であったので職員室に残っている田端景親に見つからないように、裏門から学校を出た。
「新宿クン・・・さっきの続きだけど・・・」
「ん?」
「ほら、さっき2年生になったばかりの時、校庭でずっと御徒町さんと話していて、ホームルームに遅刻したって話。」
「あぁ・・・その話か・・・」
「あの時ね・・・その様子が窓から見えてね・・・ワタシ、ちょっとヤキモチ焼いてたんだよ?」
「えっ・・・ヤキモチ?・・・俺に??」
https://ameblo.jp/rum-xxx-03/entry-12425999616.html
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※そんなシーンあったのか?と思った方は、こちらの01話をどうぞw
「ワタシね、あの時から見てたんだよ?新宿クンの事・・・」
「お、俺の事を・・・」
「うん、グレイコフのお世話をしている時も・・・ずっと見てた。」
「・・・・こんな俺の事を・・・・」
「うん・・・だから、ワタシには解るんだ☆」
「えっ・・・」
「新宿クン!キミは、恋華の事が好きだよね☆」
「・・・・・あぁ!」
ネロは、実尋の問いに即答した。
「よし!合格だ☆ワタシも恋華の事が大好きだ・・・だから、恋華の事はよろしく頼むぞ♪」
実尋は、拳を突き出し・・・・
そっと、ネロの唇に当てた。
「///////////」
「新宿クン☆電車きたよー♪ワタシは・・・逆方面だから、じゃあまたね!」
「おう!」
ネロは、実尋を駅のホームへ残して一人電車に乗った。
実尋は、ネロの唇に当てた拳にそっと自分の唇を当てた。
これが、実尋にとってのネロとのファーストキスとなった。
ファーストキスとしては、余りにも切なく・・・
涙が次から次へと出てきた。
電車に乗ったネロは、実尋のそんな姿をただ焼き付けた。
――こんな俺の為に、泣いてくれる女性が居たのか・・・
――俺は、渋谷の事を一生忘れない・・・
――ありがとう
☆☆
翌日の昼休み。
ネロは、恋華を探した・・・・
前日、実尋が何かキモチをため込んでいる・・・と言っていた事も気になるが・・・
今、恋華と話がしたい!ネロは、そう思ったのだ。
恋華と初めて会った時は、「邪魔!」という一言だった。
ホントに面倒な相手だと、ネロは思った・・・
実尋から「恋華が好き、そうだよね?」と聞かれた時ネロは、迷いなく首を縦に振った。
――そういえば、俺は・・・いつから恋華の事を好きだと思い始めたんだ?
――いや、「いつから好きになったか?」じゃない!一番大事なのは、俺にとって・・・「誰が必要なのか?」だ!
――俺が、困っている時も笑っている時も、・・・アイツ(恋華)は、いつも傍に居てくれたじゃねぇか!
――それに、卒業してアイツ(恋華)に会えなくなるのは、やっぱり寂しい!
―― -バイバイ☆新宿クン‐なんて、もう二度と言わせるもんか!
https://ameblo.jp/rum-xxx-03/entry-12444600984.html
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15話バイバイ新宿クン 参照
――クソ!このままじゃ、昼休み終わっちまう・・・アイツ、ちっこいから中々見つからないのか・・・
――こうなったら、ここから聞こえる様に叫んでやる!アイツが、昔(4月の時に)やった公開告白だ!
――これぞ、主人公の告白!!
――驚けェェ・・・俺は、いつまでもオマエの言う駄犬じゃねぇ!!
「恋華ァァ!!!俺の嫁にィィ・・・・
「へ?呼んだ?」
「・・・・来い・・・よ・・・へ??」
ネロは、木陰から声がしたのに気づき、駆け寄った。
すると・・・
なんと、恋華は、学校一のモテ男!プリンス除闇と密着状態に近いくらいの距離で添い寝していた。
「何しとるんじゃぁぁぁ!!!オマエらぁぁぁ!!」
「何って?付き合ってるの☆」
恋華は、あたり前のように言った。
「って!!いつから???」
「昨日から♪」
「ちょっと、待てよ!!!この感じ、この空気からして・・・オマエ、俺の事好きじゃなかったのかよ?」
「??何言ってるの?そんな事よりー・・・見て☆見て☆ペアリング~」
恋華は、半ば強引に除闇の左手を持ち上げ、自分の左てを揃えてネロに見せびらかした。
「・・・・・・・・・・・・」
「昨日、私が除闇を呼び出してぇ、ちょっとバイクでドライブに連れてってもらったの~そしたらね~」
「除闇が私の事を見つめて・・・『可愛い恋華ちゃん///俺は、キミの事が好きだったんだ』とか言い出して~」
「いえ・・・そんな事は言ってません・・・・」
恋華は、除闇と付き合う事になった経緯を話し始めたが、若干話を盛っている感が強すぎる為、ネロは全部聞いている訳では無い。
しかし、除闇は自身のイメージが崩れるのを恐れ恋華の語りに訂正をした。
「そんでねぇ『俺は、喫茶店で働くのが夢だったんだ!俺の美味しいコーヒーを、毎日飲んでくれ☆』とか言い出しちゃって~」
「いえいえ・・・そんな事は言ってません・・・」
恋華の妄想語りが、続く中除闇は冷静に訂正を続けた。
「ただ・・・新宿ネロ。俺から一つだけ言わせてくれ・・・」
「えっ?」
除闇は、静かに言った。
「ホントに大事だと思ったら・・・思いを伝えるのは、後回しにするんじゃダメだ。」
「一番大事なモノは、誰にも渡すな・・・しがみついてでも、どんな事があっても守り抜け。」
「!!!」
その時ネロには、プリンス除闇がどれだけ一途な思いを持っていたのかがハッキリ解った。
除闇は、イ・ヤムチャや大崎秀に比べ決して目立っては居ないが・・・恋華の傍らで彼女を助け続けた。
夏休みの旅行前に屋上で男子達で語らいをした際、彼は自分の好きな者の名前を語らなかったが、その思いはブレていなかった。
積極的にバイト先や近所の年上の女性とコミュニケーションをし交流や交際を重ねたネロと、静かに「ここぞという瞬間を待っていた」除闇の中に差が産まれたのだ。
そして、恋華はネロでは無く・・・除闇を選んだのだ。
――クソ!冷静に考えると恋華と除闇はずっとバスケ部で一緒に居たんだし・・・いま、思い返すと夏旅行や、学園喫茶やら、異常にこの二人のツーショットが多い・・・もしかしたら、
最初から俺と恋華の付き合える可能性って
ゼロだったんじゃねぇか??
――最終回直前で、俺はどーするんだ!!
「ああああああああああ!クッソ!!なんだか解らねぇけど、ムカついてきたァァァ!!恋華ァァ!俺の告白シーン返せぇぇぇ!!主人公である新宿ネロの最大の見せ場を!!」
「だから、アンタは駄犬なのよ!告白するなら、もっと早くしてよ!」
「なら、いつが良いんだ!俺は、恋愛経験は殆ど無いんだぞ!」
「例えば、4月とか!」
「4月・・・って、早くねぇか・・・」
「4月といえば、私が大崎くんにフラれて落ち込んでたじゃない!忘れたの?落ちこんで傷ついたヒロインに、優しく声をかけたらイチコロじゃない!」
https://ameblo.jp/rum-xxx-03/entry-12445260968.html
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恋華は、16話の事を言ってますw
「オマエ(恋華)全然落ち込んで無かったじゃないか!諦めないわよ!大崎くんラブリーの姿勢を貫いたじゃねぇか!」
「なっ・・・あれは、演技よ!ホントは傷ついてたのよ!そんな所を見抜いて、『無理すんなよ☆俺が傍にいるよ☆』とか言うのが、イケメン主人公でしょ!!」
「うるせぇ!恋愛レベル1しか無い俺にそんな台詞浮かばないっつーの!」
「恋愛レベル1のクセに、御徒町霧恵とか、ちえモン先生とか、バイト先のセンパイ・・・それにまさかの、不倫相手ギリギリのお付き合いとか・・・充分恋愛レベル99よ!法律ギリギリの恋愛に手を出すなんて、カンスト(←レベルMAXという意味)者よォ!」
「・・・・・はぁ、やっぱり最後は、こーなるのか・・・」
窓から外の様子を見ていた実尋はため息をついた。
ネロと恋華が痴話ケンカをしている所に、
「ふっふっふっふ・・・ネロ!どうやら、オマエもイロイロとしくじったようだな!」
髪をバッサリ切ったイ・ヤムチャが現れた。
「実尋さんとも、上手くいかずに・・・恋華にもフラれたか、へっ♪ざまーみやがれ!」
イ・ヤムチャは、ガッツポーズを取りながら軽く笑った。
「なに!」
ネロは、少し怒った。
「フラフラとイロイロな所の女のコに、目移りしてばかりいるから、こーなる☆日本語では、二兎を追う者は一兎をも得ず!ということわざがあるからな☆どーやら、運は俺に向いてきたようだぜ~」
「!!・・・イ・ヤムチャ、お前は・・・その渋谷の事は完全に諦めたんじゃ?」
「へっ、バカヤロー♪俺達が人生の方向性や、結論をすぐに出すのは、まだまだ早い!これから、50年60年と生きていかなきゃならないからな!」
「・・・・・・・・・・・」
「だって、そーだろ!俺達、まだ学生だぜ☆学校を卒業してからでも、大人になって働きながらでも、男を磨き上げる機会なんていくらでもあるさ☆」
「イ・ヤムチャ・・・・オマエ・・・」
「あぁ☆俺は、誓ったんだ!世界のどこかに散らばる、願いが叶七つの玉(ドラゴ●ボール)を集めて、実尋さんを幸せにするって!」
「・・・・でも、そんな玉・・・見つからないかも・・・集めるったって、どれだけかかるか・・・・」
「簡単に見つからないから、簡単には達成出来ないからこそ!その為に、男は努力をする!そーやって、真剣に一途に努力をすれば・・・いつか、きっと☆」
イ・ヤムチャは目を輝かせて言った。
「フフフ・・・バーカね、そーいうカッコイイ事は、駄犬の前じゃなくて、みひろんに直接言うのよ☆」
イ・ヤムチャの台詞を聴きながら静かに恋華は笑った。
「なに!」
「そーすれば、ガンバル男☆嫌いじゃないわ☆って、好感度UPじゃない☆」
「!!!!・・・コイツは、良い事を聞かせてもらったぜ!いただくぜ実尋さんのハートを・・・荒野のハイエナ、イ・ヤムチャ!!ここらでお遊びはいい加減にしろってトコを見せてやるぜ!」
イ・ヤムチャは、走り出した。
「クッソー!行かせるかァ!!渋谷は、俺の事を好きだって言ってくれたんだ!この際、今までの事を土下座して謝ってでも・・・俺だって、渋谷の前で、男を上げる台詞を言ってやらァ!イ・ヤムチャァァァ!!最終回目前で、お前だけカッコイイ所を言わせてたまるかぁぁぁ!!」
ネロは、中学時代陸上部だった事もあり、カナリの速さで走りイ・ヤムチャに追いつき並んで走った。
「ほぉ?この俺の韋駄天に追いつくとは、中々やるなァ!コイツは、面白くなってきたぜ☆ハイィィ!」
「俺は、イ・ヤムチャだけには負けん!!うおおおおおおお!」
ネロとイ・ヤムチャは並んで走り、すぐに恋華と除闇の一からは見えなくなった。
「恋華・・・オマエは、それで良かったのか?」
ネロとイ・ヤムチャが見えなくなってから除闇はゆっくり起き上がり、静かに話した。
「ん???」
「オマエは、昨日俺をポケベルで呼び出した時泣いていた・・・オマエは、ホントは新宿ネロの事が好きだった・・・違うか?」
除闇は、高校に入ってから恋華と同じバスケット部、実は中学時代から同じ学校で同じ時間を過ごしてきた旧友である。
だからこそ、恋華の事を誰よりも解っている。除闇の見てきた恋華は・・・「明らかに新宿ネロが好きだった」
「うん・・・好きだった////。私もネロの事が好きになってたよ・・・・」
「オマエは、女帝(実尋)に新宿ネロを譲ったのか?」
除闇は、直球で聞いた。聞かなくても良い事なのかもしれないが、自分が大事に思う相手だからこそ、知っておく必要があると思った。
「・・・・うぅん・・・譲ったとかじゃなくて・・・私には、ネロ以上に・・・ずっと傍にいてくれた奴が居た☆・・・みんなを盛り上げる中心人物になるスーパーヒーローより、目立たなくても・・・一緒に居てくれる人の方が、居心地が良いんだ////」
「・・・・・私が、独りぼっちになった時でも、アンタは傍にいてくれるよね?」
「・・・ふっ・・・俺は、喫茶店のオーナーになる男だ。一生こき使ってやる・・・」
除闇は、少し照れ臭かったのか・・・ちょっとだけ目を逸らした。
「それ、殺し文句というより、死刑宣告ね☆」
勿論、恋華の言う死刑宣告とは悪い意味ではない。殺し文句というモノの上位という意味である。
顔だけカッコイイ、もっとも口下手なツンデレ男・・・プリンス除闇。この男は絶対に裏切らない。恋華はそう思ったのだ。
――目黒恋華とプリンス除闇。この二人は3年後、子供が産まれる事になった。名前は邪武(ジャブ)とつけられた。
☆☆☆
「実尋さぁぁぁぁん!!」
「渋谷ァァァァァァ!!」
イ・ヤムチャとネロ。男二人は、ひたすら渋谷実尋の名前を連呼しながら廊下を走り続けた。
「つきあってくれぇぇぇぇ!!」
学校の校内に響き渡る、男二人の大きな声・・・
当然実尋にも聞えており、周りの生徒達から冷やかされ続けた・・・
実尋は真っ赤な顔をして学校内に居られない!と早退した・・・・
「実尋さんを、先に見つけるのは俺だ!」
「いや、俺はイ・ヤムチャには負けるつもりは無い!」
イ・ヤムチャは走りながらネロの顔を見て笑った。
「へっ☆なら、このまま3年生になってからも、勝負だ!」
「よし・・・」
「それで、3年生になってからも・・・・」
イ・ヤムチャが話している途中から、昼休みが終わるチャイムが鳴った。
キーンコーンカーンコーン
「3年生になっても、決着が着かず・・・このまま卒業する事になった場合、卒業してからも勝負だ!」
「イ・ヤムチャ・・・」
イ・ヤムチャは前を向いてネロと目を合わさず話し続けた。
キーンコーンカーンコーン
昼休みのチャイムが鳴り終わった後も、尚二人は廊下を走り続けた。
「卒業してからも、大人になって仕事を始めてからも、俺達は・・・ずっと勝負だ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「イ・ヤムチャ、どうしてそこまで俺との勝負に拘るんだ?」
「ふっ☆そいつは、愚問だ・・・」
「俺にとっては・・・」
「新宿ネロ!!」
「お前が、初めて出来た友達だからだ!!」
イ・ヤムチャの少しだけ涙声が、ネロの心に重く響いた。
高校に入ってから、1年生の頃は誰も友達が居なかった自分には、考えられなかった事だ。
はじめて屋上で会った時に、お互いに握手をして、お互いの手にワザと力を入れて握りつぶそうとした奴が・・・
生涯忘れられない友達になった。
両親は、ドイツで働いている為・・・日本の学校で高校生活を送る為、一人日本に残った新宿ネロ。
この時、心から両親に向かって叫んだという・・・
お父さん!!
お母さん!!
俺は、学校に来て上手くいかない事は沢山あったけど
この学校に来れて良かった!
ここの友達に出逢えて良かった!
「鯖学☆」(サバガク)に入れてホントに良かった!!
最終回につづく