ブログ小説です。

 
修学旅行に行く事になった、新宿ネロ。
バスの隣の席に座った女子、暮時みどりから、道中のサービスエリアにて、「目黒恋華との仲を応援している」と伝えられたネロ。
暮時の真意は、思い人である大崎秀との自身の恋が上手く様にする為、邪魔を入れたくないらしい....
 
前回のお話は、こちら
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【本編】
「うーっ・・・寒っ、着いたなァ。」
修学旅行の現地、スキー場に到着した。
ネロは、バスから降りると両腕を胸の辺りで組み、身を縮めるようにして震えた。
ネロが、寒がりなのではない。バス内の温度と現地(スキー場)の寒暖の差が激しかったのだ。
 
「キャー寒い!!」
 
「ん??随分と大きな声が聞えるな・・・」
ネロが、声の聞こえる方を向くと、暮時であった。「キャー!」と大きな声をあげながら、大崎秀の所へ小走りで近寄って行った。
「ふふっ・・・アイツ、張り切ってるな・・・・」
 
「イヤン・・・」
暮時は、小走りで秀の所に、向かいつつ・・・足を滑らせて転びそうになった。
 
「はぁ・・・ワザとらしい・・・」
その様子を目を細くしてみている恋華が現れた。どうやら今バスから降りてきたらしい・・・
ネロの所属する2年5組が乗る5号車のバスと、恋華の所属する2年6組が乗る6号車が、丁度隣の駐車場に駐車している様だ。
 
「まぁ、別にいいじゃねぇかよ・・・」
ネロは恋華に言った。
 
「おっと、大丈夫?暮時さん。」
足を滑らせた所で、倒れそうな所を秀に素早く抱きかかえてもらう様に、受け止めてもらう作戦だった暮時だったが・・・自分を受け止めた相手は那智だった。
 
「あっ・・・ありがとうございます・・・・」
バツが悪そうな顔をしながら、暮時は下を向いた。
「ここ、滑るから気をつけろよー☆」
秀も、少し離れた位置から暮時に明るく声をかけた。
 
暮時は、ネロの所へやってきた。
「ん?どーした?」
「どーしたじゃないわよ!ちょっと、新宿くん・・・神田さん、大崎くんと同じ1組だから、どーしても一緒に行動してて・・・」
「あぁー・・・そうだな、アイツら生徒会だし・・・中学同じだし、仲良いかもなー・・・」
 
「ふっ・・・詰めが甘いわね。アンタ・・・」
暮時が、秀に近づこうとしてワザと転んだ所を、一部始終ネロと一緒に見ていた恋華が、口を挟んだ。
「ちょっと、詰めが甘いとかじゃなくて・・・転んだのは、ワザとじゃなくて・・・私、ドジっ子だから・・・」
「別に、ワザと転んだなんて・・・私言ってないわよ?」
「うっ!」
「まぁ、ワザとでも、ワザとらしく見える転び方をするドジでも・・・どっちでも良いんだけど・・・」
「ちょっとォォ!結局ワザとやったって思ってるじゃないの!」
 
「神田さんが、傍に居るからって・・・イチイチ、コイツ(ネロ)に頼んで引き離してもらおうなんて甘い事は、考えない方がいいわよ?コイツが、そんなに気の利く使える奴に見える?」
「あっ・・・」
恋華に言われてから、暮時はネロをチラッと見た。
「使えない奴でも、居ないよりマシよォォ!!」
「悪かったな!使えない奴で!!」
ネロは、少し声を大きくして恋華と暮時に突っ込んだ。
恋華は、どこからか‘そり‘を持ってきた。
「暮時さん・・・ちょっと見てなさい☆手本を見せてあげるわ・・・」
「えっ?」
 
恋華は、陸上部顔負けの猛ダッシュで、そりを押し始めた。
「うおりゃああああああああああああ!!!」
助走をつけた状態で、そりに乗った。
 
ズザァァァァァァァァァ
 
恋華の乗ったそりは、勢いよく秀と一緒に居る那智の方へ突っ込んだ。
 
「おい!危ねぇぞ!!!恋華ァァァ!!」
「どいて!どいて!どいてぇぇぇぇ!!!」
 
ドカ
 
「キャァァァァァァァ!!」
「ウワッ!!」
那智は、恋華の乗った‘そり‘の体当たりをまともに喰らい、1メートル程吹っ飛んだ。恋華は、秀の目の前にドサっと転がり落ちた。
 
「だ・・・大丈夫か?目黒(恋華)!」
秀は、心配して恋華を抱き起した。
「えへへへ・・・私って、ドジっ子だから・・・・」
 
「パクられたァァァァァァ!!思いっきり、私のさっきの台詞パクられたァァァ!!!」
暮時は、恋華の様子を見て思いっきり両手で頭を押さえて叫んだ。
 
「ちょ、ちょっとォォォ!目黒(恋華)さん!アンタ、私に思いっきりぶつかっといて2人でイチャついてんじゃねぇよ!」
那智は、流石に怒った。
 
「あー、あー・・・ご、ゴメン!ちょっと勢いがつき過ぎちゃって・・・」
「おぉ!神田、無事だったかぁ☆心配したぞー!」
秀は、明るく那智に声をかけた、なんとなく明るすぎて・・・那智からすると全く心配しているように聞こえない。
 
「ちょ、ちょっと・・・大崎くん、心配しているなら吹っ飛ばされた私のトコに来てよ!」
「アハハハハ、スマンスマン!まぁ、神田は・・・その、合気道やってたんだよな?まぁ、体重の軽い目黒にぶっつかったくらいなら、平気かと・・・」
「あのねー!いくら私だって、あんな勢いのある突進喰らったらケガするかもしれないでしょう!」
「いやー、スマンスマン!」
 
「あ・・・今度から気を付けて滑るねー!」
恋華は、そーいうと秀と那智をその場に残して、ネロ達の方へ走って行った。
 
「どう?☆」
恋華は、ドヤ顔(自身満々のやりきった表情)で暮時に言った。
「ど、どうって・・・アンタ、思いっきり神田さんにぶつかってたじゃない!」
「そりゃ、二人っきりになる時は、やっぱりなっちーは、邪魔だから‘そり‘で跳ね飛ばしてやったわ☆・・・・ハイ!」
恋華は、‘そり‘を暮時に渡した。
 
「えっ!・・・・私に、これ使えって事?」
「私、みひろんトコに行ってくる!」
恋華は、ネロと暮時を置いて走り去っていった。
 
「恋華の奴、‘そり‘おいて行きやがった・・・コレ、どこから持ってきたんだ?」
「・・・よし!、私、・・・思い切ってぶつかってみるよ!」
暮時は、‘そり‘を抱えて押そうとした。
 
「オイ・・・まさか、暮時まで・・・アイツ(恋華)と同じ事する気じゃないよな?」
「だって、目黒(恋華)さんは、大崎くんに抱きかかえて起こしてらってたじゃない!」
「・・・・天然か?オマエ・・・」
ネロは、暮時の言い分に目を細くした。
 
暮時が、助走をかけて‘そり‘に乗ろうとした・・・その時、
「コラァ!!!」
 
「!!!」
ネロ達の所へ、管理人のオジサンがやってきた。
「お前達か?無断で子供用のレンタル‘そり‘持ち出したのは!!!」
 
「えっ・・・無断でって??」
「えっ・・・・その、私達は・・・その・・・・」
ネロと暮時は、突然オジサンに怒られたので慌ててしまった。
実は、暮時に手渡した‘そり‘は、恋華が無断で持ち出したスキー場の子供用のレンタル商品であり、有料だったのだ。
 
――ったく、あの野郎!
 
ネロは、2000円支払いレンタル商品を返品した。
 
 
☆☆
 
勢いよく、斜面をスキーで滑り降りる実尋。
実尋は、基本的に運動神経は良い方だったので、スキーでもスケートでも、なんでもこなすのだ。
みひろん☆すっごーい!」
恋華は、実尋の滑りっぷりを見て大はしゃぎだった。
「いえ~い☆どんなんもんよ♪」
実尋は、恋華の目の前で得意げなポーズをとって見せた。
「みひろんは、いいな~・・・なんでも出来て~・・・私なんか、みんながスキー滑れるのに、一人だけ滑れないから、ただぼんやり立っているだけよー・・・」
実尋は、恋華が寂しそうに思い自らもスキー板を外した。
「あっ・・・みひろん・・・・」
「よし!恋華☆一緒にゆきだるま作ろう♪」
「えっ、でもみひろん・・・せっかく、スキーに来たのに・・・」
「ん?こんなに雪あるんだから、せっかくだから大きいの作らないと♪損しちゃう!」
実尋は明るく声をかけた。
 
どんな時でも、独りぼっちの状態や仲間外れの人を作りたくないのだ。自分が同じ立場になった時、とても寂しい思いをするのでは無いか?そんな感情が少しでも芽生えた時、見ているだけでも心が痛むのだ。
実尋と恋華は、不思議な形のアヒルのような雪だるまをつくった後、二人は雪合戦を始めた。
 
「あっ!そうだ☆・・・・イ・ヤムチャさんだ!一匹狼(ロンリーウルフ)のイ・ヤムチャさ・・・‘‘ボス(雪玉が顔面に直撃した)‘‘ふぐ!!」
実尋は、何かを思い出した様に手を叩いた。しかし、手を叩いたと同時に恋華の投げた雪玉が顔面に直撃した。
 
「あっ!そっかぁ~、イ・ヤムチャも雪だるま作りに誘うんだね?みひろん、優しい~♪」
「いやいや・・・イ・ヤムチャさんを・・・・」
「??」
「罠にハメるんだった!!すっかり忘れてた!!」
 
 
プルルルルル
 
「ん?電話・・・恋華からだ・・・あ、もしもし!どーした?」
イ・ヤムチャは、スキーウェアーのポケットから半ば強引にスマートフォンを出して電話に出た。
 
「なに?実尋さんが、待っているだと!俺のスキーの腕前を見てみたいだって?ふむふむ・・・そこの、斜面の麓で待っているだって?」
「ん??どこだー?」
イ・ヤムチャはスマートフォンを片手で耳に当てながら、雪山の山頂から額に手をかざして見ると・・・
 
「おーい☆イ・ヤムチャさーん♪、こっちこっち~」
スマートフォンを耳に当てている恋華の隣で、実尋は笑顔で手を振っていた。
その笑顔は、とことん無垢であり・・・万物から愛されるような純粋な顔だった。そんな無垢な笑顔に実尋は、恋華と一緒に罠を張って待っているとは、イ・ヤムチャには到底思えない。
 
「見ていてください!実尋さーん☆・・・・よーし!イ・ヤムチャいきまーす☆」
まるで、機動戦士ガン●ムのパイロット(古谷徹さん)の様な声を出して勢いよく山頂から滑り降りてきた。
 
「ぬしししし・・・・イ・ヤムチャさん、勢いよく滑り降りてきたぞー!」
「うぷぷぷぷ・・・・実は、この斜面・・・転びやすい様に作った凹凸(デコボコ)が8か所、そして落とし穴が12個も作ってあるとは知らずに・・・」
「ウフフフ・・・まぁ、良いのだ恋華よ・・・夜の俺は狼になるぞ!とか言っている若者には、昼間タップリ疲れてもらって・・・夜はぐっすり寝てもらうという・・・ワタシの親心よ~☆」
 
シュワァァァァァ
イ・ヤムチャは、カナリ山頂から滑り降りてきた為、どんどん加速していた。
 
「さぁ、来るが良い!これぞ、実尋流!八卦の陣!!一度ハマれば抜けられぬ、覚悟せい!!」
実尋は、謎の格闘家のような構え(というか不思議なポーズ)をとった。
 
ズザザザザザザ
 
イ・ヤムチャは、高速の速さで左右にカーブをしながら、実尋達の作った罠を次々に回避した。
「な、なんとぉぉぉぉ!」
実尋は、罠を避けながらカッコよく滑るイ・ヤムチャを見て絶句。白目むき出しで大きなリアクションをとりつつ、その場で石の様に固まってしまった。
「よ、避けられちゃった・・・・」
「この諸葛亮孔明からの直伝の、石兵八陣がぁぁぁぁ!抜けられたぁぁぁぁ!!!」
「み、みひろん・・・・こんな天気の良い雪山じゃ、石兵八陣なんて出来ないから・・・ってか、架空の話だし・・・」
「ならば、恋華よ!虎戦車を持ってくるのだぁぁ!!」
「いや・・・無いから・・・・」
 
 
滑り終わったイ・ヤムチャは、爽やかな表情で実尋の方へ向き直った。
「フッ・・・・」
イ・ヤムチャは敢えて何も言わずに、「フッ」と言った最高にカッコイイと思える一言(一呼吸と言った方が正しいのかも知れないが)を口にした。
――クゥゥゥッ!決まった!にくい程に決まった・・・夏の旅行ではサーフィン決めても、実尋さん見てなかったしな・・・今度は、俺のカッコよさと雄姿を瞳に焼き付けていたハズだ!まん丸な目を(苦労して作った罠を避けられて瞳孔が見開いていたが・・・・)して、俺を見ている。
 
――しかし、実尋さん・・・何も言ってこないな・・・カッコイイとか、一言くらいあっても良さそうだが・・・もしかして、放置プレイか?
 
――ん?実尋さん、下を向いて雪をいじり始めたぞ?
「み、実尋さん?」
イ・ヤムチャは、せっかくカッコつけてる時に実尋が下を向いて恋華と一緒に雪で遊び始めてしまった為、声をかけた。
すると実尋と恋華は、立ち上がり一斉に雪を投げ始めた。
 
「うおっ!・・・・ちょっと、オイ!いきなり・・・‘‘ボス(雪が顔面にあたった)‘‘ふぐ!!」
イ・ヤムチャは2~3発雪玉を回避したが、一斉に投げられた雪玉を全部回避する事は出来ず、一発、二発と次々に当たり始めた。
 
「うっ!こ、これは・・・雪の当たった顔面から・・・赤い、何かが・・・もしかして、血?」
イ・ヤムチャは、額から流れた赤い何かを、雪に当たりながら見た。
 
「お、おい!もしかして・・・雪玉の中に石とか入ってないよな?・・・くっ・・・俺の凛々しい顔が・・・」
「み、みひろん・・・もしかして・・・ケチャップいれた?」
恋華は、雪を投げ続けながら実尋に聴いた。
「わっはっはっは☆」
実尋は、雪を投げ続けながら高らかに笑った。
 
「ん?ケチャップ・・・そーいえば、ちょっと酸っぱい匂いだな・・・」
イ・ヤムチャは赤い流れた物の匂いを嗅ぎ、ちょっとだけ舐めた。
 
「ふっ・・・ケチャップか・・・驚かせやがって~☆」
イ・ヤムチャは雪を顔面に喰らい続けながら、笑った。
「ならば、丁度小腹が空いた所だ!その雪玉・・・この俺が、喰らってやるぜ☆」
イ・ヤムチャは、ケチャップと思われる物が入った雪玉を何発かキャッチして口の中に入れた。
「ふっふっふっふ!実尋さんの作ったケッチャップ味の雪オニギリ!手料理を頂けるなんて、俺はラッキーだぜ!」
「あえて言おう!それは・・・ケチャップでは無い!デスソースだ☆☆」
 
 
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
イ・ヤムチャは、雪の中に横たわる様に、静かに倒れた。
 
「わっはっはっは~、イ・ヤムチャさん!昼間沢山動くと、夜は沢山眠れるぞ~☆」
実尋は、夜更かしの男子を一人更生させる事に成功した☆と満足そうに笑った。
 
 
 
 
☆☆☆
スキー場のリフト付近だった。
大崎秀が、他のメンバーと共にリフト乗り場に向かった事を知り、暮時も共に向かう事にした。
高い所から滑る事等は、暮時の中では問題ではない・・・彼女の狙いは、大崎と一緒にリフトに乗る事である。
 
「ねぇねぇ・・・伊吹さん、私・・・大崎くんと一緒に乗りたいんだけど、あのさ///一緒に乗ってるトコ、このデジカメで撮ってもらえないかな?」
暮時は、友達の伊吹栗子にデジタルカメラを手渡した。
「OK☆頑張っておいでー♪」
伊吹は友人(実広川)と共に手を振った。そんな所へ上野がやってきた。
「なぁ、暮時・・・そのリフト一緒に乗らないか?」
暮時を誘った上野は、暮時が大崎秀にアプローチをかけたいという流れは勿論知らない。
 
「えっ、あっ・・・ゴメン。また次にね!ねぇねぇ・・・その、大崎くん・・・リフト、一緒に乗ろう?」
暮時は、秀を誘うつもりだったので上野の誘いを断った。
暮時は、照れなが秀をリフトに乗る際の同席を願い出た。照れ屋の暮時にとっては、非常に勇気のいる事だった。
 
「あぁ・・・スマンなぁ☆俺は、リフトに乗る時は景色を楽しみたい派なんだ♪悪いが、他の奴を誘ってくれ。あっ・・・上野と一緒に行ってくると良い☆」
上野が暮時を誘う様子を見ていた秀は、明るく答えた。自分の目の前で、上野は断られている・・・そんな状態で暮時の誘いを受ける事は出来ない。秀は上野と同じ中学を出ている仲である。そんな彼の目前で暮時と仲良くリフトに乗っている姿な見せられない。
 
「えっ・・・・」
暮時は、予想外の答えに悲しそうな表情を浮かべた。
秀が暮時を断る一部始終を見守っていた伊吹と実広川は、暮時の傍へ駆け寄ってきた。
 
「ひっどーい!」
「大崎くんの、その天然な性格って・・・そこまでいくと完全にイジメだわ!」
「いつも、高笑いしちゃって何様のつもりー!」
「生徒会長になったからって・・・ちょっと天狗になったんじゃないの?」
「いえいえ・・・彼は、元々天狗だったわー」
暮時の元に集まってきた女友達(伊吹と実広川)は、暮時に加勢するかのように一斉に、秀を非難した。
 
「お、オイオイ・・・ちょっと、待ってくれ!俺は何か悪い事を言ってしまったのか?その、もし・・・気にさわった事があるなら言ってくれ!」
秀は、いきなり女子から非難声が殺到してしまい、軽く混乱してしまった。
 
暮時は、その場で泣き出してしまった。
 
 「なんだよー。泣き出す事無いだろ?」
上野は、困った表情で言う。
 
「はぁ~やってらんないわ...大崎くん、貴方そーやって、俺は何も知らなかったって顔をして、一体何人の女子を泣かせる気なの?天然だか演技だか、私には理解出来ないけど・・・そこまでいくと重罪ね・・・」
様子を見ていた那智が言う。
「何!!俺が悪いって言うのかよ!」
秀は、珍しく感情的になって怒った。複数の女子から集中的に避難され劣勢の状態で、中学時代からの知り合いで同じ進学科(1組)のクラスで同じ生徒会に所属している神田那智が・・・「今まで我慢していたけれど・・・」と言わんばかりに敵に回った。
いままで、何か我慢している事があったなら、気づいた時点で言ってほしかった・・・俺は、指摘されたら治す努力だって出来る・・・秀には、そんな怒りもあった。
 
泣いている暮時の周りには、どんどん女子達が集まってくる・・・
 
そして、状況をどこまで知っているかは別として・・・泣いている女子は基本的に可哀そうに見えるのだ・・・
そして、暮時の友達の伊吹と実広川は、周囲に集まってきた女子達に伝言ゲームの様にその時あった事(にプラスして尾ひれがついた様にありもしなかった事)がどんどん回っていく。
 
秀は、下を向くしかない。
 
 
実尋は、恋華と一緒に(デスソース入りの雪玉を食べて倒れた)イ・ヤムチャに雪をかけるのを辞めて、急いでスキー板を装着して、秀達の居る所に雪道を滑って加速した状態で駆け付けた。
 
 
シュワァァァァ
 
「はーーーい!ストーップ!!!!」
実尋は、勢いよく秀と女子達の間に入った。どーみても、複数の女子を一人で相手にしている秀が不利である。
 
「ケンカは、良くないよー!それに、どんな理由にせよ!複数で一人を責めたんじゃあ・・。お天道様が黙っていても、渋谷実尋が黙っちゃいねぇ~よ~!」
なんとなく歌舞伎のノリで実尋はポーズを取った。勿論、状況からしてシリアスな感じがするのが解るのだが・・・不謹慎なノリであるのは、百も承知であえて目立つポーズを取った。笑いにかえたい!というより、注意を一時的にでも・・・自分に引き付ける事が出来れば、秀一人への集中砲火は避ける事が出来ると考えた。この際、自分に非難の声が飛んでこようがお構いなし!仲間外れが一人出来るよりは、自分も仲間外れになってやろう!という実尋流の発想だ。
 
しかし、女子の一名が、実尋も女子軍の仲間に引き入れようと・・・こっそり、近づき現状を耳元でささやく様に、「コソコソコソ」と伝えた。
 
「な、なんだってぇぇぇぇぇ!!!!」
実尋は、大きな声をあげた。
 
「大崎くん!キミって奴は・・・・暮時さんのリフトに乗ろうとしていた所で、お尻を触ったですってぇぇぇぇ!!!そして、暮時さんは、触れて衝撃で・・・オナラを・・・」
 
 
 
「触ってねぇぇよォォォォォォ!!!!」
 
「オナラなんか、してません!!ついでに、触られてもいません!!」
 
 
 
他の女子生徒から、実尋がどの様に耳打ちされたかは定かでは無いが・・・
 
実尋は、この時嘘をついたのだ
 
この状況で、どちらかの肩を持っても、丸く収まる事はない
 
だからこそ、一時的でも良いので両方を敵にする事を考えたのだ
 
誰か一人が責め続けられる状況を、いち早く解決する為には、
 
話題を逸らすか・・・
 
自身が全員を敵に回してしまった方が、
 
責め続けられている一人を助けるのに最も効率がいいと考えたのだ
 
メンタルは、そんなに強い方では無いが、
 
誰かを守る為に行動する時、人は強くいられるのだった・・・
 
 
つづき
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つづく・・・って、
あの・・・σ(゚∀゚ )オレ ・・・忘れてませんか?