ブログ小説です。

夏休みが、もうじき終わる♪
そんな、ある高校生のお話です☆

 

シーズン1

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最初から読みたい方は、こちら☆

 

 

シーズン2「俺達の夏休み編」

こちら

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【本編】
8月30日の事である。
夏休みは、明日終わる...

渋谷家では、あるモノをそろそろ消費しないといけなかった。

その、あるモノとは・・・

冷やし中華であった!
渋谷家は、ラーメン屋を営んでおり・・・夏が終わると共に、夏期限定メニューである『ピリ辛冷やし中華』が終了となる。今年はブレイクする!

と、睨んで、冷やし中華の麺を大漁入荷してしまったが、予想以上に余ってしまった・・・


この際、赤字は覚悟する・・・としても、
麺を愛する渋谷家にとって、この大漁入荷した麺を処分するのは耐え難い!

そこで、実尋は友達を家に招いて冷やし中華をご馳走する事にした。

と、いっても渋谷家にやってきたのは、
新宿ネロと目黒恋華の2名である。

神田那智は、新学期が始まる前に美容院へ・・・
恵比寿・イ・ヤムチャは、なんだか亀の甲羅背負って走り回る謎の修行へ・・・
大崎秀は、用事があり。貴公子(プリンス)除闇に至っては、携帯電話(スマホ)を持って居ない為、連絡が出来ない。

「いやー、渋谷の家ってガチでラーメン屋なんだなぁ」
ネロは、カウンターに座ると辺りを見渡した。

「そうよ!ガチでラーメンよ。でも、ここに来るの久しぶりだわ・・・」
恋華は、少し下を向いて静かに笑った。

かつて、中学2年で知り合った恋華と実尋。
ずっと仲良しであったが、中学2年のクリスマスの時期から、ある事をきっかけに絶縁状態となり暫くは目を合わせる事すら無かった・・・

「ウフフ、新宿クン!!本日は来てくれてありがとう☆恋華も、久しぶりだね☆」
実尋も、少し下を向いて静かに笑った。

「みひろん、私・・・また、ここに来れて良かった////」

「うん、ワタシも、また恋華がここに来てくれて良かった////」

「こ、今度ウチにも遊びに来てね////お兄ちゃんの足、臭いから・・・・お兄ちゃん居ない時に///」

「うん、行くね!目黒先生が居ない時に☆」


店の亭主である、渋谷レイジは・・・
娘達が再び仲好く話している姿をみて、軽く鼻をすすり、
「よーし!!今日は特別に旨い冷やし中華を作ってやろう・・・実尋!お前も、今日は手伝いは良いから、恋華ちゃんの隣に座っとけ・・・」

レイジは、実尋に座るよーに伝えると自身は、手早く注文を取る準備を始めた。

実尋は、「ゴチになやす♪」と言い。
恋華の隣に座った。

「あいよ!ご注文は??」
レイジは、注文様の伝票を持ちメモを取る準備を始めた。

「じゃあ、冷やし中華を大盛でお願いします。」
ネロが頼むと

「冷やし中華大(だい)!チャーハン大(だい)!セットで♪」

 


「ワタシ、冷やし中華大(だい)!肉増しラーメン大(だい)!ライス小(しょう)セットで♪」

恋華と実尋は、大(だい)やら、小(しょう)やら、なんだか色々専門用語で注文をした。


「あ!みひろんのゴロゴロチャーシュー美味しそう・・・」

「ん?半分あげるよ~」


恋華と実尋のやり取りを聞きながら、少し固まるネロ・・・
「お前ら・・・良く食うな・・・」


そんな中、ネロ達が注文した食事を待っている時に、新しい客が一人やってきた。

短めの金髪に、スノーボードの選手のような、鋭角的なサングラスをした男性だった。
赤い作業着を着ており、袖はグイっと捲り上げ袖無しの様にも見える。



「オヤジ・・・すまないが、ワタシにも腹持ちの良いモノを何か頼む」

「腹持ちの良いモノ?ここのラーメンやチャーハンは、サイズを大(だい)にすると、どちらも量があるぞ・・・空腹かい?お客さん・・・」

「少し長い旅に出るのでな・・・携帯食を持たない主義なのでな、腹持ちが良いと助かるのだよ・・・」

サングラスの男を見ながら、ネロは恋華にこっそり話した。

「おい・・・恋華・・・コイツ、ここに来る途中に外の壁に貼ってあった(指名手配写真)奴じゃ?」
 


指名手配


「って、オイ・・・恋華?」
恋華は、ネロに話しかけられても
出来立てのチャーハンを食べるのに夢中で、ネロの話は全く聞こえていない。

「ふっふっふ、チャーハンに集中した恋華は・・・『ズルズルズル』・・・『ごっくん』・・・大地震があっても、気づかないからねー!!』
出来立てのラーメンを一気にすすり上げて、実尋はネロに話した。


「へい!お待ち~冷やし中華大(だい)3つ!!」
「ほら、恋華ちゃんと実尋は、エビフライ一本ずつオマケだ!」

「うわ~エビだぁ」
「フフフ、レイジさんは恋華が来た時は、エビフライ出してくれるんだよね~・・・ワタシだけの時は、エビフライどころか、チクワフライだよー」


「ほい!!ワリィな、エビはちょいと高いから、お兄さん(ネロ)の所には、から揚げだ☆サービスだから、コイツを冷やし中華に乗せてくれ~」

「あ~、いえいえ・・・ワザワザ、スミマセン・・・俺、結構唐揚げ好きなんですよ~・・・って、デカ!!」
ネロは、男女の差別があるのか・・・と一瞬だけ思ったのだが、そんなキモチは直ぐに消えた。

サービスとは思えない唐揚げの大きさ!!っていうか唐揚げ二個も、俺一人で食っていいのか?
こっちの唐揚げの方こそ、大当たりだ・・・

ここに来たら、毎回こんなサービスが出るのだろうか?もし、そうなら・・・また来よう!



ネロは、店の亭主(レイジ)に言われたように、唐揚げを2つ!ドンと冷やし中華に乗せた。

――うめぇ!!この冷やし中華・・・麺ののど越し、ピリ辛のスープとの相性!!そして、カナリ具沢山(唐揚げを差し引いても)☆・・・どれどれ、唐揚げも食べてみよう!んぐ☆外はカリっと中はジューシーの自家製唐揚げか!!そして、周りの衣に染み付いたピリ辛スープとの相性も抜群・・・蕎麦汁に天ぷらの相性が良い・・・それに近い感覚か!!とにかくウマイ!


「ご馳走様ぁ☆」
「ご馳走様ぁ☆」

「って、お前ら早すぎだろ!!」
実尋と恋華が同時に食べ終わる、ネロ冷やし中華を食べている途中だが、ラーメンやらチャーハンやらも含め二人は完食していた。


「ねぇ!!おじさん・・・腹持ちの良いモノって、沢山食べたいって事??」
実尋は、サングラスの男に話しかけた。

「あぁ・・・これから、長い旅に出るからね・・・」

「遠くに行っちゃうの?」

「あぁ、ずっと遠い所に旅に行くんだ。」


「あぁ☆おじさん、もしかしてラーメン好きなの?そこに置いてあるの・・・マイ丼ぶりだよね?」


実尋は、サングラスの男の椅子の隣に置いてあるラーメンのどんぶりの様な形のモノが非常に気になった。
 


指名手配

 


「間違いない!奴だ!奴が来たんだ!指名手配写真の2枚目写真のヘルメットだぞ・・・オイ、恋華・・・」
ネロは、サングラスの男に注意を払いつつ、恋華に呼びかけたが、恋華は満腹になりテーブルに覆い被さるように寝てしまった。

――オイ!!寝ちまうのか・・・っていうか、街中に危険人物として貼られている男だ・・・渋谷(実尋)の奴、あんまり近づくと・・・


「ねぇ!おじさん・・・ラーメン好きで沢山食べたいならさぁ☆ウチの超級特盛名物、次郎盛りに挑戦してみない?」

「次郎だと・・・?」

「実尋、あまりお客様を煽るモノじゃない・・・お客様、次郎盛りは・・・俺は、あまり進める事は出来んぞ・・・俺が、次郎ラーメンで修行して会得した超ベビー級のラーメンだ。ラーメン好きの実尋ですら、それを食べこなすだけの胃を持ち合わせていない・・・なんといっても、麺の重さだけでも、通常の3倍はある。」

「通常の3倍のか・・・面白い・・・」
サングラスの男は、静かに呟いた。

「すまないが、ワタシに次郎盛りを貰えないか?」

「次郎盛りは、チャレンジメニューだ。時間制限は、30分。時間内に食べきれば無料だ。だが、時間内に食べきれない場合・・・料金は、3倍支払いとなるぞ。宜しいかな?」
レイジは、手早く説明した。

「ふっ。構わんよ。」
サングラスの男は静かに言った。

レイジは、封印していた『次郎専用麺』を取り出し、手早く茹でて、力強く湯切りした。

「へい!お待ち!!」

次郎盛り・・・次郎専用麺がスープに濃い目スープと背油に浸かっており、上にはかき氷のように盛られたもやし炒め等、シャキシャキ野菜が乗っている。

「さぁ、制限時間は30分だ!ストップウォッチで計らせてもらうぞ・・・こちらも、真剣勝負だからな。では、スタート!!!」
レイジのかけ声で、サングラスの男の次郎盛りチャレンジが始まった。

「おっ、始まったぞ・・・」
ネロも興味深々で身を乗り出した。

――貼り紙で貼られていた指名手配の男。一体何者なんだ?

サングラスの男は、静か次郎盛りを観察すると、挙手をした。

「オヤジ・・・ワタシに、これと同サイズのどんぶりをもう1つくれ!」
サングラスの男は、レイジにラーメンどんぶりをもう1つ頼むと、粋なり次郎盛りのもやしの上に蓋をする様に被せた。


――!!!なんだ、てっきり、小分けにして食べやすくするのかと思ったけど

「真剣勝負と聞いたからには、こちらも食べ方に拘りは捨てよう・・・手加減は出来んようだからな・・・」
サングラスの男は、どんぶりで蓋をしたラーメンを両手で持ち上げた。

「!!!!あ、あの技は・・・」


秘技!!天地返し!!!

サングラスの男は、どんぶりの上下をひっくり返した。


どんぶりの蓋を開けると、スープに浸かっていた麺が上にあり、もやし等の野菜はどんぶりの下にうつっていた。

サングラスの男は、一気に麺をすすり始めた。

――早い!!みるみる、麺が消えていく。だけど、あの食べ方、麺のすすり方は、まるで渋谷(実尋)と同じ・・・・!!!

ネロは、実尋を見た。実尋は真剣な顔でサングラスの男の麺のすする所を見ていた。

「兄ちゃん(ネロ)も、気づいたか?あの麺の独特なすすり方。まず、1度麺をスープから上げ、口に運びすすり、1度すすると、さらに再び麺をスープから上げ口に運ぶ、2度めの麺がすすり終わる前に、3度めの麺を上げ口に運ぶ!一度に3回麺をすくい上げる事で、麺を食す早さは・・・通常の3倍!!実尋が得意とする麺食いの秘技・・・」

三すくい!!


「だが、三すくいの弱点は元々顔の小さい実尋にとって口の中に一度に三倍の麺を運ぶ為、三倍の量を口の中で咀嚼(噛む)し、飲み込まなければならない。麺の量を加減しないと、食べきれない為、かえってペースを落としてしまう諸刃の剣なのだ。」

「確かに、渋谷が『三すくい』をやるのは、カップ麺の時が多い。このサングラスの男は、まったくペースが落ちない・・・カナリ重厚な次郎麺なのに・・・」

「むむむ・・・・・・」
実尋の見ている前で、サングラスの男は遂に麺の八割を食した。

「あんな、速さで・・・・」
ネロは、言葉無くした。

「次郎麺は、時間が経つ程、麺はスープを吸ってしまい更に重厚な麺へと姿を変える。食べきる為には一定のペースと速さが必要だ・・・」

サングラスの男は、一度箸を止めると水を飲もうと
グラスを手にしたが・・・水は飲まずに再び箸を取った。

「小休憩に水くらい飲めば良いのに・・・」
ネロが言うと

「いや、呑みたくても飲めんのだ。水を飲んでしまうと体内の次郎麺達が膨張し暴れ出す・・・最悪嘔吐しリタイアとなってしまう。」
レイジは腕を組んだまま、淡々と語った。

サングラスの男は、どんぶりの中のもやし等野菜を食べ始めた。天地返しでスープが浸っており味がしっかり染みている。もやしには水分が多く含まれている為、水を飲まなくても多少の水分補給が出来るのだ。

「ふー・・・・でも、麺を八割食べきれば・・・後はもやし中心の野菜麺だ☆これなら安心だな・・・」
ネロは、ほっとため息をついた。

「甘いわ・・・新宿クン!!次郎盛りには、レイジさんの八連打のパンチが隠れているの・・・一撃だけでも、相当重いわ!!」
実尋は言った。

「っ!!!!!」
サングラスの男は、お腹を擦った。

「どうやら、一撃入ったらしいな」
レイジは静かに笑う。

レイジ作の、チャレンジ様の次郎盛りには、大人の拳大の4分の1の大きさ豚角状の肉厚チャーシューが入っている。満腹状態の逆に一個だけでも下腹部を押さえてしまう程のパンチ力。それが8個も入っている。空腹なら相当美味しい味付けだが・・・

サングラスの男は、何とか3個のレイジの拳(デカイチャーシュー)を喰らったが、額に汗が滲み出た。カナリ苦しい様子。

「サングラスのおじさん!!ギブアップしても良いんだよ・・・」
実尋は、言った。

サングラスの男は、デカイチャーシューを8個全部食べきり、椅子から少し立ち上がり、再び座り、また立ち上がり、再び座り・・・といった簡単なスクワットの様な運動を3回した。

「レイジさん!!あれは、テレ●チャンピオンのジャイアン●白田が使う、ヒグマ落としですね!」

「そうだな、恐らく体内の幽門を開く為のスクワット運動・・・ヒグマ落としと似たような物だが・・・」

-ヒグマ落としは、限界来た証拠だ-

「・・・・・・お嬢さん、良い色の眼をしているね・・・名前は?」
サングラスの男は、実尋に聞いた。

「え?渋谷・・・実尋・・・」

「実尋・・・・か・・・大きくなったな・・・」


「えっ?」


「残り時間は、3分だ・・・そろそろ限界か?」
レイジは、サングラスの男に訊ねた。

サングラスの男は、ベルトを少し緩めた。

「フフフフ・・・この程度、ワタシが本気を出せばどうと言う事はない。」

「ほう?残りの麺は確かに2割だが、既に背油系濃厚スープを吸ってしまい、最初に食べた麺より更に重厚なモノとなってしまっているぞ?さぁ、残り時間2分20秒で食べきれるかな?」


「おじさーん!!!!」


サングラスの男は、立ち上がりどんぶりを持ち上げた。

ガツガツガツガツ・・・


サングラスの男は、スープをたっぷり吸ってしまい重厚になった麺を牛丼の様に平らげた。

「む、この直立の姿勢で一気に食べ尽くす!日本古来の奥義・・・その名も・・・立ち・・・」

「立ち食いくらい解説なくても解るっつーの!」

ネロは、流石にレイジの解説にツッコミを入れた。

サングラスの男は、そのまま残ったスープまで飲み干した。


サングラスの男が完食し、レイジ、実尋、ネロによる拍手が沸き起こると同時に、店の外では警察のサイレンの様な音が聞こえてきた。

ネロは、直感で解った・・・サングラスの男はやはり指名手配中であり警察から追われているのだ。

「新宿クン!もしかして、外の警察のサイレンって」
「あぁ・・・多分、このサングラスの男を追ってきたんだろう・・・あれ?」

ネロと実尋が振り替えると、サングラスの男は姿を消していた。

店の中には作業着を着た細い眼のオールバックの男が入ってきた。

「スミマセン、こちらに金髪の怪しい男がやってきませんでしたか?指名手配中の危険人物なんです。」

「さぁな・・・ウチは、ラーメン屋だし金目のモノは置いていないし、ウチにくるのは、腹を空かせた客だけだ。」
レイジは淡々と答える。

「そうですか・・・どうも、お騒がせしました。何かありましたらこちらの機動戦艦ビックバター本部にご連絡ください!」
細い眼の調査中の男は、レイジに向かって敬礼をした。

「フライト艦長!!あちらで金髪の怪しい男を目撃したという情報がありました。どうやらこの近辺を逃走中の模様です。」

「よし!何としてもソイツを捕まえろ!ビックバターの極秘資料を持ち出したかもしれん!!追うぞ!エマリーくん!!」
調査中の人達は、急いで立ち去った。


「ふー・・・なんだか、この辺り物騒だな・・・治安悪くなったか?」
ネロが言うと実尋は不安そうな顔をした。

「あ、大丈夫だよ・・・きっと直ぐに捕まるし、ここに居れば安心だろ?」

「ううん・・・そうじゃないの」

「えっ?」

「あの、おじさん・・・どうしてか解らないけど、悪い人に見えないの・・・追われているのも、何か事情があると思うの。ワタシ達じゃ、大人の事情に立ち入る事は出来ないけどさ・・・このまま、お別れも出来ずに、あの人が捕まるのは・・・なんか嫌だな・・・と思ってさ」

 

 

渋谷は、当然ながら・・・あのサングラスの人物の正体は解らない。それは俺も同じだ。ただ・・・ラーメン屋で育った娘として、お客さんが、ラーメンを食べた直後に警察やら軍隊に捕まってしまうのは後味が悪かったのだろう。

 

それに、渋谷も何かを感じていたんだろう・・・突然現れた、金髪の得体の知れない男性客が・・・色々な部分で渋谷(実尋)と共通点が多かった事・・・・俺自身、夏休みの旅行に行った時、渋谷(実尋)のホントの血が繋がった両親は日本人では無いというのを聞かされた事もあり・・・何の確証もないのだが、今回突然現れた客が、渋谷(実尋)と赤の他人であるとは思えなかった。

 

それに、今にも泣き出しそうな渋谷の顔を見た俺は・・・

今の選択肢は、一つしかない!

 

「渋谷!」

 

「!!!!」

 

「一緒に行こう!!あのサングラスのお客さんを探すんだろ?勿論・・・探した所で何かが解る確証は無いけどよ・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「それでも、・・・・オマエが探したいなら、俺は一緒に探しに行く!」

「//////////・・・・・新宿クン、一緒に来て!」

 

「//////////へっ・・・・」

レイジは、二人の真っすぐ過ぎる純粋な会話を聞いて、「聞いてるこっちが恥ずかしい・・・」と言わんばかりに、鼻をすすりなながら寝ている恋華にブランケットをかけた。

 

二人は、店を出て駆け出した。

二人で人探しをする為に、駆け出すのは御徒町霧恵の捜索依頼だった。あの時は2時間くらい走り回った。

 

今回も、実尋が諦めるまでずっと走り回る覚悟はしていたネロだったが・・・・

 

サングラスの男は、案外すぐに見つかった。

警察のパトーカーが鳴って探し回っている方面と真逆に潜伏していたのだ。

 

「フ・・・戦いとは、二手三手先を考えて行うモノだ・・・・」

「遠くに逃げたと勘を外したか・・・まぁ、気がついたなら己の不運を呪うが良い・・・ん??思ったより、早くここが解ったな」

サングラスの男は、ネロと実尋が駆け付けてきた事に気づき振り返った。

サングラスの男は、素材ゴミ置き場に立っていた。

 

「おじさーーーん!!!」

実尋は、高い声で呼んだ。

 

「やぁ!見送りにきてくれたのか・・・・」

サングラスの男は、実尋に話しかけた。

 

「おじさん・・・・行っちゃうの??どこか遠くへ・・・」

 

「あぁ、ラーメン屋で話したように、おじさんは行かなければいけないのだよ・・・ラーメン、美味しかったよ!大分腹持ちしそうだ・・・」

 

「うん・・・・・・・・・」

実尋は、黙ってしまった。

ネロも、実尋の隣に立ったまま黙っていた。

 

「ほぉ?おじさんの正体とか・・・何故、追われているの?とか・・・指名手配中の写真やら・・・何か質問があってここに来たのじゃないのかな?」

サングラスの男は、逆に質問した。

 

「うん・・・・・・・・聞かないよ☆あんまりお客さんを困らせちゃダメだって、レイジさんに言われてるから・・・ホントは、気になるけど・・・聞かない☆」

「レイジさんは、ワタシを育ててくれた・・・たった一人のお義父さん(おとうさん)だから☆」

 

ネロは、実尋から眼を逸らし・・・視線を下に向けた。非常に胸が痛かった。

 

――渋谷・・・オマエは、なんで・・・こんな時まで演技をするんだ・・・・もっと、素直に聴けばいいじゃないか!

 

――『もしかしたら、ワタシのお父さんじゃないんですか?会いに来てくれたんじゃないんですか?』って・・・・どうして聞けないんだ!

 

――もぉ、こんなチャンス無いかもしれないんだぞ!!

 

 

「そうか・・・父親か・・・・」

サングラスの男は、実尋の傍にやってきた。

 

「いい父親の元で育ったんだな・・・・」

「ワタシが、突然店に現れたワタシが、こんな事を言うのは、おこがましいのかもしれないが・・・折角の巡り合えた何かの縁だ。老婆心だと思って聞いてくれ・・・」

サングラスの男は、静かにサングラスを外した。

実尋の姿を映し出すのは、目の前の男の青い瞳だった。

 

「いい女になったな・・・・今度は、良い男に巡り会ってくれ・・・・」

「そして、良い恋を実らせてくれて・・・・」

 

 

男は、再びサングラスをかけると・・・

「キミ、一つ頼みがある・・・・30秒だけで良い・・・彼女の目を塞いでやってくれないか?」

 

「え??」

ネロは、理由を聞こうと思ったが・・・・

 

「新宿クン・・・・やって・・・・」

実尋は、理由を聞かずにネロに指示した。

 

「ありがとう助かるよ・・・・ワタシは、これからこの場を去っていくのだが・・・知っての通り追われている身だ、軍の連中やら警察やらに、ワタシが、向かった方向等を詳しく聞かれると面倒だろう・・・ワタシとは、この場で会わなかった事にしてくれ・・・キミ達は、この場に二人しかいなかった・・・いいね?」

 

「・・・・・はい。」

 

サングラスの男は、素材ゴミ置き場の奥の方に走っていくと・・・・

 

 

「え!!!あれって・・・・」

 

 

ゴミの山の中から、赤い大きなロボットの様なモノが現れ、瞬く間に光の様な速さで消えていった。

 

 

「・・・・・・一体何だった?あの人は・・・」

 

「新宿クン・・・もう、良いかな?」

「あ・・・・ゴメン・・・」

ネロは、実尋の顔から手をどけた。

 

「なぁ、渋谷・・・・オマエ、結局あのサングラスの人に何も聞かないままだったけど・・・良いのか?」

「うん☆いいの!」

 

「え・・・・まぁ、オマエが良いって言うならいいか・・・・」

ネロは、色々実尋に聴こうと思ったが辞めた。実尋の顔はとても清々しい顔をしていた。

何かが解決したかのような・・・そんな顔だった。

 

「ワタシね・・・やっぱり、解った事があるの!」

「ん?・・・・何が解ったんだ?」

 

「ホントに大事なのは、血の繋がりとか・・・そーいうのじゃなくて、どれだけ、その人を思って・・・傍に居てくれたか☆って事・・・・」

 

「・・・・お、おぅ!・・・つまり・・・」

 

「うん☆つまり、レイジさんは・・・やっぱり、ワタシにとっては一番のお父さんなんだって事が解った!突然現れた人が、もしもホントのお父さんだとしても・・・・17年ほったらかしで・・・ワタシの元へ来ないか?とか言われたら・・・やっぱり、感動とか・・・ちょっと違う気がして・・・ワタシ頭上にクエスチョンマークが3つ位出そうだよ・・・・」

 

「ハッハッハッハ・・・・そうだよな・・・ピンと来ないよな!それに、レイジさん・・・・ラーメン美味いしな~・・・」

「でしょ~・・・ワタシ、やっぱり、胃袋の全てをラーメンに捧げるって誓う!」

「なんだそりゃ~・・・流石に栄養偏るぞ??」

 

些細な会話で笑い合いながら、ネロと実尋は並んで歩いた。

実際手を繋いでいる訳では無いのだが、並び立つ影は、手を繋いでいる様にも見えた。

 

 

 

こうして、ネロ達の夏休みは終わった。

 

夏が終わり、秋がやってくる・・・・

 

文化祭の季節を迎える。

実尋達、生徒会は忙しい季節を迎えるのだが・・・・

 

そんな中・・・・

ついに、「鯖学☆」のラスボスが・・・・

シーズン3に参上しようとしていた。

 

 

 

つづき

 

47話

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おまけ

 

「宇宙のおじさん」

実尋達と別れ、宇宙を流れる様にロボットに乗ったサングラスの男の話です。

ここからは、ちょっとガ●ダムネタでマニアックです。

「ナナイ・・・ワタシだ。」

 

ナナイ

「こちら、レウルーラ・・・大佐!どーしたんですか?また10年位前のコスチュームなんて着て・・・」

 

サングラスの男

「ハッハッハッハ・・・どうやら、ワタシは、スタイルは余り変わらない方らしい・・・昔のコスチュームが着れてしまうのだ・・・中々似合うだろ?」

 

ナナイ

「ハァ・・・お似合いでございます・・・・」

 

サングラスの男

「ひどいな・・・ため息なんてつくなって・・・それより、一つ調べて欲しい事がある・・・」

 

ナナイ

「なんでしょう?大佐・・・」

 

サングラスの男

「地球の日本の高校生の卒業式とは・・・何時頃だ?」

 

ナナイ

「・・・・お会いになられたのですね?ご息女に・・・・」

 

サングラスの男

「あぁ・・・・17年ぶりだ・・・やはり成長が早いな。もうすっかり大人の顔になっていた。傍に恋人まで居たぞ・・・いや、あのコはワタシに似て、引っ込み思案で奥手の所があるからな・・・別のコに取られてしまわないか・・・心配だ・・・」

 

ナナイ

「・・・・ラーメン屋で育った、渋谷実尋・・・ですね?現在高校二年生なので、卒業は再来年・・・の3月ですね。」

 

サングラスの男

「来年では無いのか・・・随分先だな・・・・あぁ、それと・・・・サイコフレームの情報は、ロンドベルの研究上に流す事には成功したのか?」

 

ナナイ

「ハイ・・・届いており、ロンドベルでは最新のモビルスーツの開発が行われているそうです・・・・」

 

サングラスの男

「そうだな・・・やはり、情けないモビルスーツと戦っても勝つ意味は無い。ナンセンスだ・・・・娘の卒業式も少し先だ・・・先に、ミネバ様を迎えに行くとしよう・・・・おっと・・・そーいえば、レウルーラに戻る時間は大幅に遅れてしまうので、そのつもりで居てくれ・・・何しろ、旧型のモビルスーツを使ったもんだから、速度が遅い・・・かつては、通常の3倍の速度と言われていたが・・・今は、どのモビルスーツよりも遅い・・・」

ナナイ

「大佐・・・あの、どのモビルスーツで行かれたのですか?・・・・あ、その形式番号は・・・・ザクⅡ??どうしたのですか??」

サングラスの男

「うむ・・・博物館に展示されていたのでな・・・ワタシが本名を名乗り、免許者を見せたら・・・すぐに譲ってくれたのだ☆ハッハッハッハ・・・」

 

ナナイ

「博物館って・・・・それ、ホントに使える期待なのですか??ちゃんと整備士に見てもらいましたか?」

 

サングラスの男

「なに・・・まぁ、飛んでいるからいいのだよ!」

 

ナナイ

「あ・・・・あの、では気密性などは?・・・・そこ、宇宙ですよね?・・・空気とか・・・足りてますか???」

 

サングラスの男

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なに!」

 

ピーピーピー・・・・酸素が残量残り僅か・・・残り僅か・・・ノーマルスーツ(宇宙服)を着用してください!

 

ナナイ

「大佐!!!すぐに、宇宙服を着用してください!機体が仮に動かなくても、座標さえ把握出来れば、こちらで回収できます!大佐???宇宙服は???」

 

サングラスの男

「・・・・・・・・・・・・ナ・・・・ナナ・・・・イ・・・・・宇宙服・・・・」

 

 

ナナイ

「・・・・・忘れた・・・・とか言わないで下さいね・・・・大佐??大佐ァァァァァ!!!」

 

こーして、実は地球に隕石を落とそうかな・・・とか思ってた、サングラスの男は、ちょっとした事情で悪い事は出来なくなりました☆

 

 

この良く解らない、サングラスの男は・・・今後鯖学には出ません☆