何処かの世界、次元と次元の狭間。

何処か美しく感じる、青々とした森、更にその奥。

そこには、『料亭』とも言える少し大きな建物が建っていました。



料亭に少し近づいた先に、何かの看板が樹に打ち付けられています。


見ると、紅色の文字で『この先、異次元三滅亭』と書いてあります。




行くのなら、あちらへ。

逝くのなら、こちらへ。



あなたは、いきますか?




異次元三滅亭物語

第一品目 三滅亭、これより開店





「……今日も晴れか」


料亭の厨房で窓を見て呟くのは、
アホ毛がたっているかなり長い白髪と左目の部分に包帯をまいている女。
左手には花束ではなくタオルを、右手には約束ではなく皿を持って磨いていました。

彼女は窓を眺めたまま、次々と食器を磨いていきます。
一瞬だけですが、プロの食器拭きのようにも見えます。

食器拭きにプロなんて在るのかが疑問ですが。




「何故……、何故なんだ……」

と、せっせと食器を磨き続ける女のところに、ふらりと魂が抜けかけた青年が現れました。


「朝からどうした、『ディアーノ』」
「……聞くな、今の私の姿について何も聞くな」


『ディアーノ』と呼ばれた紅い髪が特徴的な青年は、
女に返事をすると壁に寄りかかってため息をつきます。

そのため息には、片翼の元英雄が送る必要がない程の絶望が詰まっていました。


彼は『カプリチオ・ディアーノ・クロニクル』
とある次元の世界を滅ぼさんとした恐ろしい存在ですが、
今の彼は何故か和風のゴスロリを着ています。
その他にもかんざしなどの小物付きです。

元々イケメソな顔のせいなのか、その姿はとても良く似合ってしまっているのでした。


「………メイド服の次はゴシックロリータか」
「あの創造主のせいだから………、なっ!?」


的確な突っ込みを入れた女を(絶望が滲み出る瞳で)見た瞬間、カプリチオは固まってしまいました。



「安心しろ、我の創造主もやりおった」

女の服はいつも着ているロングドレス(×2)ではなく、青と白のセーラー服(深紅のスカーフ付き)でした。
スカート丈がかなり短いため、いろんな意味で危ないことになっています。

「「………………………」」






……コトン。

気まずい空気が厨房を満たし始めたとき、何かを置く音がしました。




「……諦めるしかなかろう」


それは、『レルヴァニカ』と呼ばれた女が最後の湯飲みを机に置いた音でした。

今更ですが、女の名前は『レルヴァニカ=シュヴァルツ=クロニカ』
彼女も世界を滅ぼそうと企むモノです。
カプチリオと違いまだ未定ですが、もう準備は出来ているとかなんとか。
そして今までずっと食器を磨いてたのかよ。


「……そう、だな」


レルヴァニカの言葉を聞いてか、カプリチオの瞳から絶望の割合が減りました。よかったね。


「さて、店のコーヒーでも飲むことにするか」
「レルってコーヒー飲んだのか」
「あぁ、ついこの間だがな」


レルヴァニカが食器を全てしまい終えると、2人は話しながら料亭のメインルームに向かいます。

そこは和風と洋風の客席が入り交じり、入り口付近にバーがあるというおかしな風景ですが、それが三滅亭の特徴です。




二人が入り口付近に設置されたバーの席に座ったとき、




カランコロン。



入り口の扉に取り付けられた鈴が鳴り響いたのでした。





―――最初の客は、どちら様?―――


・あとがき
やってしまった、三滅亭物語。
カプリチオさんはナマコさんからお借りしました。でもゴスロリ着せてごめんなさい!やってみたかったの!!(

と、いうわけで客……誰にしようかな(ぇ
・解呪術
某寮にて、アウアが使用。
その他にも異世界渡り組とかが使用可能。

ミカヅキ世界設定だと、呪いを解く魔法は『反魔法』と呼ばれているため、
『解呪術』という名の魔法は存在しない。
そのため、オリジナルの魔法に分類される。


効果は名前の通り呪術の解除。
だいたいは、解呪術を宿した手や道具などを対象の印や紋章に当てることで呪術を解除する。

発動方法は使用者によって変わる。
今のところ、『詠唱』、『魔法陣』が主流。


威力はまちまち。使用者の魔力に左右される。だってオリジナルだもん(←
人によっては、詠唱を重ねたりすることによってより強い呪術の解除が出来る。

利点は呪術の系統や効果に威力が左右されないこと。
そのため、魔力や威力があれば全部の呪術を解除可能。

欠点はオリジナル魔法であるために扱いが難しいのと、魔力消費が半端ないこと。
大抵は、高位魔法4回分ほどの魔力をもっていかれる。



・忘却術
ルライトが使用。正式名称「記憶封印魔法(メモリーズ・スフラギタ)」
元はルナヴィアースの禁術。今ではルライトのオリジナル魔法になっている。

効果は、対象者の記憶を深層心理に封じ込め、「記憶があることを忘れさせる」
誤解されがちだが、あくまで記憶を「忘れさせる」だけ。
記憶を「消す」のではない。

発動方法は詠唱。
使用時には、対象者の記憶(精神)に侵入しなければいけない。
なので忘れさせる記憶が過去であればあるほど、多ければ多いほど使用者に負荷がかかる。

ルライトの忘却術は、とある街の物語を元にしているため、発動した時に鐘の音が鳴り響く。











……まだ増えるかもしれない


突然だった。
医者の人にもらった薬によって、やっと眠りにつけたときだった


暗い昏い眠りのセカイ。
何もないはずなのに、苦しい。

息が出来ない。
悪夢なのか。
リカイ出来ない。
首に誰かの手が掛かっている。


誰、だれ、ダレ?
それとも、ナニ?

やめて、苦しい、苦しいよ。
眠らせて、眠らせて、もう、眠らせて。



「……貴様の願いが『眠り』ならば、我はそれを叶えようぞ」



首に手を掛けている『何か』が、口を開く。
何故か、見えていないのに、『わかる』



「その代わり、貴様を使うがな」




『使う』?どういうこと?



疑問が浮かぶより前に、




私の意識は堕ちてゆく。
















「―――思い出せ!ダークフェザーボルトッ!」

電撃が破ぜる音。
私は意識を取り戻す。


昔、何処かの物語で読んだ地獄を思わせるような炎の海に囲まれた場所。
そこに立っているのは、4人。
ラウムさんと、大剣を構えた人と、知らない女性と、この前に影を使っていた人。


でも、何かがおかしい。


ラウムさんたちの顔には焦り、緊迫感、不安、敵意、怒り。
全て、影を使っていた人と、私に向けられている。




……でも、全てが、まるで他人事。
自分の視点で撮った、ビデオテープのようで。



何故、ねぇ何故?
分からない、解らない、ワカラナイ。


自問を繰り返しても、映像は続いていく。
大剣を構えた人を罵り、ラウムさんを嘲笑い、血を出しても何も感じない。



ダレ?
私の姿をした、お前はダレ?



「レエエエエルウウウウウウウヴァアアアアアアアニイイイイイカアアアアアアッッ!!」



『レルヴァニカ』?
なんで知ってるの?



ソレ、ワタシノ二ツ名ジャナイカ。













「―――!死ぬなあああああああ!!」

目を開く。
そこには、必死に私の肩を揺するラウムさんがいた。


「よ、よかった……待ってろ、今すぐ医務室に連れていくからな」

私が目を開けたのを見て安心したような表情を見せたあと、何故か背負おうとされる。
とりあえず、自分で起きようとする。

でも、余りの痛みで、出来ない。

……見ると、腕が切り裂かれたりしていて、私は血まみれだった。

何があったんだろう?

「――――――、洒落にならないくらい、痛い……」


思わず、声に出ていた。
……痛みを感じるなんて、いつぶりだろう。



私は、狂っているハズなのに。








それにしても、あの夢はなんだったんだろう。




自問を繰り返しても、ダレも気付かない。




(何で、ラウムさんは私の二つ名を知っていたんだろう?

……まぁ、所詮は夢なのだろうけれど)





―――『レルヴァニカ』、その意味は『血染め』―――




・あとがき
某寮のイベントの、もう一つの視点。
何となく書きたくなったんだよ、うん。


狂った少女に潜む、もう一つの魂。

果たして、気付く者は現れるのか……?