明け方のまどろみ(微睡み)の中、それまでみていた夢のさきを追いかけることがある。夢のつづきだ。
 たいていの夢は目が覚めた瞬間から記憶から消え始めるので、面白い夢は反芻して頭に覚えさせようとする。その作業が終わると今度は夢のつづきの妄想が始まる。
 そんな夢のつづきをブログにとどめておこうと思い立った。


 水谷豊似の元コメディアンがひとり、事務所のテーブルに腰かけ何やら想い出にふけている。どうやら彼は芸能事務所の社長のようだ。
 彼が思い浮かべているのは、若い時の想い出のようだ。
 彼は海辺のホテルに営業にきている。隣にはマネージャーらしき人がいて何やら文句を言っているようだ。
「まったく、こんな田舎まできて出番が無いなんてどういうことなんだ」とマネージャー。
 ホテルの都合で宴会の出番がなくなったらしい。
「怒ってもしょうがないですよ」と彼。こういう事はよくあるようだ。若いマネージャーと違い彼は経験が豊富なのだろう。
 そうしていると廊下の先の宴会場から、賑やかな音楽が聞こえてきた。何事かと見に行くふたり。
 宴会場のふすまを少しだけ開けて覗いてみるとそこには、ゴールデンハーフの3人がハデな衣装で歌っていた。曲は「天使のささやき」
「ちぇっ、金髪なのにスリーディグリーズかよ」と毒づくマネージャー。
 
 その時、事務所の扉が開いて1人の女が入ってきた。
「社長大変です。私のマネージャーが行方不明です」
 突然現実に引き戻された彼は目を白黒させて女を見る。
「マネージャーがどうかしたのか」
「今朝から連絡がつかないんです。これから青森に行かないとならないのに」と困惑する女はどうやらこの事務所の所属歌手らしい。途方にくれて社長に訴えに訪れたようだ。

 場面は変わって青森のとある温泉旅館の非常階段。階段の先には宴会場があるらしく前座の芸人の品のない声が漏れ聞こえている。
 階段の下で座りながら何やらぶつぶつと小声で話しているのは事務所の彼だ。隣にはドレス姿の女が不安げな顔で立っている。
 消えたマネージャーの代わりに社長自ら青森の営業に同行してきたようだ。先程からのぶつぶつは女の出囃子であった。
 心配する女は
「社長大丈夫ですか、私ひとりでも舞台に上がれますよ」と。
「なあに、昔とったきねづかだ。任しておけ」と彼。すぐに再びぶつぶつが始まった。
 と、非常階段の上の踊り場から声がする。
「なんだ、誰かと思ったら豊じゃねえか」
 どうやら彼の知り合いのようだ。
「俺だよ俺。忘れたのか」
「あっアニキ~ィ」と彼。
 若いときに一緒にドラマに出ていたアニキ~のようだ。懐かしそうに笑顔で話しかけようと階段を降りてくる。だが彼はそのアニキ~が嫌いなようで、ドレスの女を連れて外に出て行ってしまった。

 再び場面はかわりここは津軽の先端、竜飛崎。彼はドレスの女を連れて岬の先端にある歌碑の前に立つ。
流れる曲は「津軽海峡冬景色」吹きつける海風がふたりの顔を刺す。
 ポケットに両手を突っ込み背を丸めながら「知ってるか」と彼。
「石川さゆりは紅白でこの曲を五回も歌ってるんだぞ」
「他にヒット曲がないからですか」と寒々しいドレス姿の女。
「バカ野郎、それだけ日本中の人が聞きたがっているってことだよ」
「俺だってヒット曲はあるがあの大舞台で歌ったことなんかないんだ」
 岬の先の津軽海峡を見ながら独り言のようにつぶやく彼。
流れる曲はいつの間にか変わって
「じ~ぐ~ざ~ぐ~♪」
 それを見ていたドレスの女は
「社長~私もっと頑張りま~す!」
寒々しいドレス姿の女は海に向かって叫んだ。


 途中までは夢、竜飛崎からさきは夢のつづきを妄想したもの。

おしまい