桜が咲く準備を着々と進めている三月のある日
私は仕事場のアメリカから故郷の日本に帰ってきた。
久しぶりの長旅は私にとっては少し苦痛であったが、
故郷に帰る喜びがそれを紛らわした。実家に帰るまでに
私は制服を着て、楽しそうに会話している青年を見た。
「卒業式のシーズンだ。」私はふと思った。
なれない電車を乗り継いで、私はダイトウという実家のある
地まで辿りついた。駅から街へ出ると、3年前とは変らない風景が
そこにあった。
駅から家までは徒歩20分親に電話をして迎えに来てもらうつもりで
あったが、私は携帯を充電するのを忘れたために電話が出来なかった。
大きめのスーツケースと共に歩き、私は家に着いた。家には私が高校時代
乗っていた自転車が門の近くにはもうなかった。きっと粗大ゴミとして捨ててしまったのだろう。
「I’m home」
私は大きな声で行った。英語でいうのは中学の時からの癖だ。
「あれお帰りなさい。」
母はまるで学校から帰ってきたように私を迎えた。スーツケースを自分の部屋において、私は
母とアメリカのおみあげのお菓子をつまみながら、色んな話をした。私からはハリウッドのスタッフとして
働いていること、アパートに住んでいること、3週間程日本にいることを母に伝えた。滞在期間を伝えたら母は残念そうに
「優太の結婚式にはそれじゃ出られないのね」
私はその言葉を聞いて驚いた。優太というのは私の兄である。彼は名前通り優しい人であったが、かなりの女好きであった。半年で4人も彼女を作る時もあった。
恋愛に消極的な私とは正反対の兄だった。こんなに早く身を固めるとは思ってもいなかった。母の話によると、相手は年下で私と同じ26歳だそうだ。
兄は面倒見がいいからきっと彼女はそこに惚れたんだと私は思った。
「健太にはいい話はないの?あんたは学生の時からそういう話は聞かないねぇ」
母が笑いながら、そう言ってきたので
「何もないよ。今は仕事で忙しいから。」
私も笑いながら答えた。3年目の若手に結婚なんて考えられなかった。
色んな話をしているうちに午後の4時になっていた。帰国、初日私はある人と夕食の約束をしていた。
私はそのために準備を始めた。