あきちゃんがまだ小さな頃のお話です。(わたしのことです)
小学校に上がったばかり…ぴかぴかの1年生だった頃のお話。
あきちゃんは、おかあさまに連れられて鹿児島のおばあちゃんちにいきました。
おばあちゃん…今はなくなってしまいましたが
当時は、まだ元気でたくさんのお話をきかせてくれたんです。
これは、その中のひとつ。暦の中の特別な日についてのお話です。
一番最初の特別な日、これは1月1日についてのお話でした。
あきちゃんとおばあちゃんでは、同じ日でも感じ方がちがっていました。
1月1日…あきちゃんは、身体も周りの景色も全部新しくなる気がします。
おばあちゃん…ただ一日が過ぎただけ、特に何もかわらない。
去年今年(こぞことし)貫く棒の如きもの…なんだって!
おばあちゃんが教えてくれた俳句(昔の偉いお坊さんの俳句だそうです)
そのあとも、3月3日、5月5日、7月7日と特別な日が続きます。
あきちゃんが知っていることを話すと、
おばあちゃんが楽しいお話を付け加えてくれるんです。
あきちゃんは、そんなおばあちゃんが大好き!!
9月9日のお話になりました。
あきちゃんは、困ってしまいました。
その日が特別な日だとは、誰も教えてくれませんでしたから。
おばあちゃんが言いました。
「その日は、重陽節句(ちょうようせっく)と言って
中国から伝わってきた特別な日のことなんだよ。」
「…特別な日?」
「うん、あきちゃんは長生きしたいよね?」
「…うん、長生きした~い」
「だったらその日は菊の花びらをお茶に浮かべて飲みなさい。」
「…菊の花びら?」
「食用菊っていうのがあるから、その花びらを浮かべるといいよ。」
「…へぇ~そんなのがあるんだ?知らなかった。でも、どうして?」
「太陽は明るいよね。なので明るいことを『陽』という。
それに対し暗いことを、光がないので『陰』というんだよ。
135のような数字を陽の数字という。」
「…246とかは、陰の数字なの?」
「すごい!あきちゃんは利口だね。」
「…えへへ、それほどでも(照れ)」
「『陽』で一番大きな数はどんな数?」
「…135の次は…7…その次は……9…かな?」
「正解、9が一番大きな「陽」の数。」
「…9が一番明るいってこと?!」
「そうだよ。気持ちを明るくしてくれて長生きもさせてくれるのが9の数字。」
「…すっごい。」
「さて、9月9日には?」
「…あっ! 9が二つもある!!!」
「はい、よくできました。
1年は365日もあるんだけど、この9がふたつつく日は、たったの1日しかない。」
「…だったらお祝いしなくっちゃダメだね?」
「9月9日、暦からは消えてしまったけれど
ちゃんとお祝いをする人は必ず幸せになれる日なんだよ。」
「…わかった、9月9日、重陽節句、忘れないで覚えておく。」
それ以来、毎年9月9日には、菊の入ったお茶を飲むあきちゃんでした。
天国のおばあちゃんも、きっと今ごろ飲んでるよね!! おしまい。