水泳の選手コースに所属しながら、家庭学習で中学受験を目指した体験記です。2022年に書いたブログを読み返してリライトしています。

 

小学四年生になり、選手コースに所属する公立小学校組はだいぶ減りました。選手コースに残った子の大半は受験の心配をする必要のない子供たちです。立教、学習院などの大学付属の初等科、またはインターに通っている子たちです。ご家庭が裕福で、スイミングクラブにはベンツで送迎、公立小学校組とはまるで別世界に生きる人たちでした。

 

公立小学校組のこどもが選手コースに所属しながら中学受験を目指す場合、かなりの覚悟と努力が求められます。クラブ練習は週6日、土日は朝と昼の練習でしたので、当然、勉強する時間は十分に取れません。小四から大手進学塾に通っている子と戦うにはハンディキャップが大きすぎるのです。

 

家庭学習でなんとかするしかない。

 

それしか思いつかなかった我が家は、小学四年生の夏、四谷大塚の予習シリーズ(国語・算数・理科・社会)を購入し、妻が可能な限り、息子の傍で教材をベースに教えることにしました。

 

塾に通う子供たちと比べると勉強量はかなり少ない状態です。そのため夏休みはクラブ練以外のほとんどの時間は勉強に費やしました。夏休みが終わっても、登校前や下校後の練習に行くまでの間、練習から帰ってきてから寝るまでの隙間時間を活用し、受験勉強を進めました。

 

国語力は壊滅的で、四谷大塚の予習シリーズは難し過ぎました。「いったいどんな子がこのレベルをこなせるのだろうか?うちの子が出来なさ過ぎなのか...?」このまま進めても勉強嫌いにさせるだけだと考え、小学館が出している国語ドリル(小学四年生)を購入してやらせてみましたが、それでもダメでした。さらにレベルを下げ、三年生版をやらせましたがダメでした。仕方ないので二年生版をやらせ、ようやく点が取れるようになりました。

 

息子は小学四年生の時点で二年生程度の国語力しかなかったのです...。

追いつくにも時間が足りません...。

国語だけでも大変なのに、他の科目をやるには圧倒的に時間が足りません...。

 

そのため、理科、社会を捨て、目標を立教池袋中学の第2回(偏差値58)の入試に絞りました。この入試はAO入試で、国語、算数のみで、あとは自己アピール面接です。

 

その後、立教池袋中学を目指し、小学四年生から小学六年生の夏まで、その状態で頑張り続けました。

 

当時、「下剋上受験」という本が出版され、夫婦で読みたいへん励まされました。進学塾に通わせず娘さんを家庭学習のみで御三家レベルの中高一貫校に合格させるための実体験記です。ですが本の中で著者が言っているように、塾に通わせず、自力でこどもを合格させるのはかなり難易度の高い話です。中学受験は、小学生の中でも上位層の戦いであって高校受験と比較しても熾烈な戦いになります。東大合格者が二桁台の難関校ともなれば、出題問題は異次元過ぎて、大人でもよく分かりません。あの本の著者は中卒でありながら、よく成し得たと思います。

息子は地元の公立小学校に通っていました。

幼少期から習い事は嫌いで逃げ回り、これは無理だなと諦め、自由に遊ばせて育ててきました。やっていたのは幼稚園生の頃の「こどもチャレンジ」くらいです。

 

妻は若い頃、水泳選手でした。結婚してからも国際水泳大会やオリンピックの水泳種目は欠かさずに見ていました。2016年、息子が小学二年生の時にリオデジャネイロオリンピックが開催され、その時、妻の傍らで水泳種目を見ていた息子が「水泳をやりたい!オリンピックに出たい!」と言い出しました。当然、妻も大喜びです。インターネットで調べ、都内にある選手コースのあるスイミングクラブに通い始めました。

 

息子が入会したクラブはオリンピック選手の育成を目指しているところで、入会資格は小学三年生未満です。息子は年齢的にギリギリでした。しかも中学生になるまでに規定タイムを切れないと実質的にクラブをやめることになります。出遅れた息子は毎日、小さい子供たちに混ざりながら基本的な泳ぎ方を練習し続け、半年後になんとか選手コースに昇級しました。

 

選手コースに入ると週6、土日祝日には2回、練習があります。一日に少なくとも5000m以上は泳ぎ込むなど、練習がハードになります。当然ながら遊ぶ時間も勉強する時間もほとんどありません。そのコースに通うこどもは毎日、オリンピックを目指し必死に頑張っています。

 

小学三年生の2月になりました...。

こどもが人生の岐路に立つ最初の時期だと思います。

 

この時期、スイミングクラブでは息子と同学年のこどもたちはどんどんとやめていきました。「あ、この子、速いし才能あるな。」と感じる子でもです。親がこどもが小学三年生になる時点で「オリンピックへの夢」に終止符を打たせるのは可哀想です。小学三年生ですとまだ肉体的に未発達で、その競技に対する肉体的な優位性があるかどうかは見極められません。残念ながら、このような状況で、こどもの潜在的な可能性が潰されていくんだなと感じていました。

 

でも一方、水泳の競技人口はかなり多く、その中でオリンピック選手になれるのはごく少数です。しかもゴルフ、野球、サッカーなどのスポーツと違い、プロとしてお金も稼げません。冷静に考えれば、「学業」を犠牲にしてオリンピックを目指すのは無謀なチャレンジとも言えます。なので、クラブをやめさせ、中学受験に舵を取る親御さんの気持ちも分かります。

 

私も息子に水泳をやめさせ、中学受験のために進学塾に通わせた方が良いと思っていました。しかし妻は違っていました。妻は若い頃、オリンピック強化選手にスカウトされましたが、「水泳では食べていけないだろ!」と父親から猛反対を受け、泣く泣く諦めた過去があります。その後悔がある彼女は、自分が果たせなかったオリンピックへの夢を息子に託したい気持ちがありました。

 

中学受験をさせるべきか?否か?

 

結果的に夫婦で何度も議論を重ね、選手コースと受験勉強を両立させて大学付属を目指すことにしました。第一志望は立教池袋中学校です。しかしその後、選手コースと受験勉強の両立がいかに無謀で、とんでもなくつらい「いばらの道」になるとは思ってもいませんでした。

 
 
 
 
 
 
 
 

はじめまして

このブログは主に「中学受験と高校受験」についての我が家の体験記と子育てから学んだことについて書いています。公立中学に進学し、高校受験を考えている親御さんにとって、我が家の体験が参考になれば幸いです。

 

(2024年10月に読み直しを行い書き直しを行なっています。ご了承ください。)