息子は地元の公立小学校に通っていました。
幼少期から習い事は嫌いで逃げ回り、これは無理だなと諦め、自由に遊ばせて育ててきました。やっていたのは幼稚園生の頃の「こどもチャレンジ」くらいです。
妻は若い頃、水泳選手でした。結婚してからも国際水泳大会やオリンピックの水泳種目は欠かさずに見ていました。2016年、息子が小学二年生の時にリオデジャネイロオリンピックが開催され、その時、妻の傍らで水泳種目を見ていた息子が「水泳をやりたい!オリンピックに出たい!」と言い出しました。当然、妻も大喜びです。インターネットで調べ、都内にある選手コースのあるスイミングクラブに通い始めました。
息子が入会したクラブはオリンピック選手の育成を目指しているところで、入会資格は小学三年生未満です。息子は年齢的にギリギリでした。しかも中学生になるまでに規定タイムを切れないと実質的にクラブをやめることになります。出遅れた息子は毎日、小さい子供たちに混ざりながら基本的な泳ぎ方を練習し続け、半年後になんとか選手コースに昇級しました。
選手コースに入ると週6、土日祝日には2回、練習があります。一日に少なくとも5000m以上は泳ぎ込むなど、練習がハードになります。当然ながら遊ぶ時間も勉強する時間もほとんどありません。そのコースに通うこどもは毎日、オリンピックを目指し必死に頑張っています。
小学三年生の2月になりました...。
こどもが人生の岐路に立つ最初の時期だと思います。
この時期、スイミングクラブでは息子と同学年のこどもたちはどんどんとやめていきました。「あ、この子、速いし才能あるな。」と感じる子でもです。親がこどもが小学三年生になる時点で「オリンピックへの夢」に終止符を打たせるのは可哀想です。小学三年生ですとまだ肉体的に未発達で、その競技に対する肉体的な優位性があるかどうかは見極められません。残念ながら、このような状況で、こどもの潜在的な可能性が潰されていくんだなと感じていました。
でも一方、水泳の競技人口はかなり多く、その中でオリンピック選手になれるのはごく少数です。しかもゴルフ、野球、サッカーなどのスポーツと違い、プロとしてお金も稼げません。冷静に考えれば、「学業」を犠牲にしてオリンピックを目指すのは無謀なチャレンジとも言えます。なので、クラブをやめさせ、中学受験に舵を取る親御さんの気持ちも分かります。
私も息子に水泳をやめさせ、中学受験のために進学塾に通わせた方が良いと思っていました。しかし妻は違っていました。妻は若い頃、オリンピック強化選手にスカウトされましたが、「水泳では食べていけないだろ!」と父親から猛反対を受け、泣く泣く諦めた過去があります。その後悔がある彼女は、自分が果たせなかったオリンピックへの夢を息子に託したい気持ちがありました。
中学受験をさせるべきか?否か?
結果的に夫婦で何度も議論を重ね、選手コースと受験勉強を両立させて大学付属を目指すことにしました。第一志望は立教池袋中学校です。しかしその後、選手コースと受験勉強の両立がいかに無謀で、とんでもなくつらい「いばらの道」になるとは思ってもいませんでした。