アガサ・クリスティー没後50年の企画だったと思いますが、BSテレ東の「あの本、読みました?」で、湊かなえさんが、アガサ・クリスティーの魅力について語っているのを見ました。
その番組で紹介されていた本のひとつ『春にして君を離れ』が気になって、早速、Audibleで聴いてみることにしました。![]()
主人公は、イギリスの地方弁護士の夫と3人の子供たちに恵まれ、「良き妻、良き母」として完璧な家庭を築いてきたと自負している女性・ジョーン。
遠く離れたバグダッドに暮らす娘を見舞った帰り、悪天候のため砂漠のレストハウス(駅)で数日間足止めされ、ひとり時間を持て余すなか、これまでの自分の人生を振り返り始めます。
はじめは、次々と浮かんでくる過去の記憶に戸惑い、「自分は少しおかしくなってしまったのではないか」と不安を覚えますが、記憶をたどっていくうちに、これまで見ようとしてこなかったものが少しずつ姿を現します。
自分では家族のためと思っていたことが、実は無意識のうちに夫や子どもたちを支配し、苦しめていたのではないか——と自身の独善性に気づき始めていくのです。
そこに至るまでの様々な回想、例えば、学生時代に先生に言われた言葉とか、子供たちとのやりとりや、夫の言動、等々。。。
自らの心と向き合う姿に、聴きながら色々と考えさせられるものがありました。
この物語は、ほぼ全編がジョーンの視点で描かれていますが、最終章では一転して夫・ロドニーの視点へと変わります。
それによって、これまで見ていた世界がガラリと変わり、最後は何とも言えない、複雑な気持ちになりました。
「poor little Joan」
かわいそうな、ひとりぼっちのリトル・ジョーン。
人はどこまで自分自身を知っているのか。
そして、気づいた真実と、どう向き合っていくのか。
聴き終えたあとは、ある種の怖さも感じましたが、アガサ・クリスティーの、人間の心の奥に潜むミステリーを見事に描いた作品だったと思います。
気になる方は是非![]()

