生命力を強くするためには | 一灯照隅万灯照隅

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9月14日 岩手県浄法寺町のお祭りの山車



生命力というと、すぐに体力を思い浮かべる人もいるでしょう。もちろん体力も生命力の一部には違いありませんが、これも見てくれとはだいぶ違うものです。

昔から「柳に雪折れなし」と言われていますが、柳という木は一見、ひ弱で頼りなさそうな感じを受けます。ところが、台風や大雪などにあっても、文字どおり柳に風を受け流してビクともしません。それは、根がしっかり張っているからです。

その反対に、大きな松や杉の木が、ちょっとした嵐であっさり倒れてしまうことがあります。同じように、筋骨たくましくて体躯(たいく)が堂々としていて、とても元気な人が、あっさり亡くなるということがあります。こうした人は本当の意味での生命力が弱い人といっていいでしょう。

最近の若い人は、確かに見てくれは大変よくなっています。食事の内容や椅子生活などの環境の変化で、背は高くなり、足も長くなりました。年々、体格はよくなってきてはいますが、それに反比例するかのように体力は落ちています。このことは、国や民間などのいろいろな調査で明らかにされています。

それを象徴しているのがスポーツ界ではないでしょうか。アマチュアでも、またプロでも、世界レベルに達している日本選手は果たしてどのくらいいるのでしょうか。

私は何も、オリンピックでメダルを取ることがいいことだとは思いませんが、体格が立派になったのに勝てないというのは、本当の体力、つまり生命力や気力が弱くなっているからで、それはスポーツ選手ばかりでなく、日本人すべてを象徴しているように思えてなりません。ところが、見てくれは丈夫ではなさそうなのに、とてもエネルギーがあって、よく困難に耐えたり、実行力のある人がいます。見てくれのいい人が、かならずしも健康であるとはかぎりません。立派な体格をした人がころっと死んだり、弱々しい人が、さまざまな苦労に耐え、長生きするということがあるのは、生命の可能性と用心の相違なのです。

私たちは、そうした生命に含まれている潜在的な力や、遺伝的伝統的な力に恵まれるというのが幸福といえるのです。どんな困難にも負けずに、可能性を大きく開いていくことのできる生命力こそ人間にとって何よりも大切なのです。

人間を弱くしている理由に文明の発達があげられます。文明は、たしかに便利で有難いものですが、便利さ、快適さに慣れきってしまって、かえって人間が弱くなってきたような気がします。暑ければ涼しくする。寒ければ暖かくする。交通機関が発達したおかげで何時間も歩く必要がなくなりました。食べ物も、世界中のあらゆるところから運ばれていますので、昔のように飢餓の心配もありません。

このように、文明の発達は、たしかに人間にとって幸福であることには間違いありませんが、この幸福は無条件に喜べるものではありません。たとえば、空調機器に頼りきってしまうと、皮膚や呼吸器内の粘膜の抵抗力が弱まり、風邪などをひきやすくなりますし、クルマばかりに乗っていると、足腰が衰えてきます。体を動かさないで、グルメとやらの美食にふけっていると、肥満や成人病を招きます。

要するに、物質文明によって、人間の生命力、気力・体力が大変弱くなってきているわけで、このままいくと、文明の発達のゆえに人間は減びるのではないかと警鐘を鳴らす学者や文化人も少なくありません。

そこで、学者の中には、人間をもう一度鍛え直さなくてはならないと言っている人もいます。具体的には、大都会から離れて、できるだけ自然の山野に接し、太陽の光を全身に浴び、風雨氷雪と取り組み、食べ物もあまり調理されたものばかり食べるのではなく、もっと自然のものをそのまま食べるようにする。薬も、化学的につくられたものより、草根木皮といった漢方薬のようなものを活用する――といったことを提唱しているのです。
 
また頭のほうも、参考書やマニュアルをただ暗記するという頭脳の機械化では、きわめて脆弱な頭脳となってしまうでしょう。その結果、人間性や徳性の欠けた、気力・創造力のない人間がたくさん生まれることになるのです。

経営者がもっとも心をくだいているのは、いい人材をいかに確保するかということです。ところが、新卒のレベルは年々低下する一方だといいます。確かに頭はいいのですが、自分はこうやりたいという覇気が感じられず、人間関係でもうまくいかないという人が増えているそうです。これは、いまの日本の教育が、人間の本質を無視して付属的・条件的な教育ばかりをしたために起きた現象といえます。安岡先生も、これからの日本を背負って立つ若者たちの気力、心力が衰えていることを、非常に気にかけておられました。

本当に事を生み成す力、すなわち生命力・創造力というものを養わなければなりません。そのためには、絶えず何かを成そう、何かを生もう、という姿勢、つまり、理想を持つことが重要なのです。