書いた小説の内容と全く同じ出来事が現実でも起きてしまうことに、ある作家は悩んでいた。
大型旅客機の墜落の物語を書けば、数日後には実際に墜落事故があり
大地震の話を書けば、大きな地震が起き大勢の人が亡くると言うことが続いてしまっていた。
彼の仲間たち、全ては偶然だと言ったが彼は、そうとう思い詰めていた。
ある日、彼は1つの短い話を発表した。
それは、たったの一行の作品だった。
題名は『今から起こる事』だった。

「思い悩んだ男は、自ら命を絶った」

これが彼の最後の作品になった。

浦島太郎は玉手箱を開けなかった。
玉手箱を開けると、彼女とは会えなくなるような気がしたから。
ただ、浦島太郎は気づいていた。
彼女には、もう会えない事を。
せめて思い出だけは、ずっと残したい
そして、最後に言われた「玉手箱は、絶対に開けてはならない」その約束を守るために。
この先も浦島太郎は玉手箱を開ける事はないだろう。
一番大事な女性(ひと)との約束を守るため、無いのと等しい希望を捨てないために。
浦島太郎の物語は、永遠に終ることはないだろう。
彼女の事を、ずっと忘れる事は出来ないから。
僕は、彼女のために宇宙に行く。
何度もフラれたけど、僕は諦めない。
大学生の頃から想いは変わらない。
だから、宇宙から帰ってきたら、彼女に告白をする。宇宙飛行士として。
彼女も、彼氏が宇宙飛行士だと嬉しいだろう。だから、今回は成功する!!絶対に。

私は、あの男から逃れるために海に潜るのかもしれない。
何度も私に告白をしてくる男から逃げるために。
大学生の時に知り合い、大学1年の時に告白をされたのが最初で、それから15年が経とうとするけど
まだ、懲りずに想いを伝えてくる。
しかも、手紙で。
もちろん、答えはいつも「NO」返事も返さない。最近は、私がお世話になっているダイビングショップに手紙が届くらしい。
いい加減、気味が悪い。
大学時代からの友達から聞いたけど、あの男が宇宙飛行士になったらしい。
だけど、私には関係のない話。
もし、あの男が私の気を引くため宇宙飛行士になったとしたら・・・
いくら何でも、それは無いか。
もしそうなら、ますます気味が悪い。
あんな男の事を考えるより、海の事。
海に潜り、キレイな海の写真を撮る。
その写真を世界史の人に見てもらう、それが私の仕事。
あの男から逃げるためじゃなく、世界中の人の喜ぶ顔を見たくて、私は海に潜るんだ。
だから、私は世界中の海に潜る。
あの男は私が、今どこにいるかも分からない。
もう、あの男の顔も見たくない。

僕は今日、彼女に告白をする。
宇宙から地球に帰って来て数週間。
ようやく、世界中の報道陣の前での会見の場。
きっと彼女はビックリするだろうな。
宇宙飛行士になり英雄になった僕に、自分の名前を呼ばれ、そして告白される。
テレビの前での涙を流し喜ぶ彼女の姿が目に浮かぶ。
いつもは手紙だったけど、今回は僕の声で直接、想いを伝えるんだ。
テレビの画面越しだけど、絶対に想いは届く。間違いなく、今回は成功する!!
さあ会見が始まる。緊張してきた。
待っててね。今から僕が最高の告白をするから・・・