こんなふうに抱きしめられるのは
初めてだった
同僚で年下の奏多くん
甘えるとか想像つかなくて
触れることさえ抵抗があって
今まで一線ひいてたけど
その一線を超えて
彼の手に抱かれた瞬間
私は深い安堵感に包まれた
体の力が抜けて
彼の胸が心地よくて
身を委ねて静かに泣いた
「寂しかった?」
奏多くんが聞く
私は彼の胸に顔を埋めたまま頷いた
恥ずかしくて顔が見れない
「嬉しいです、そう思ってもらえて」
奏多くんは私が泣き止むまで
私の手を握って
頭を撫でていてくれた
こんなに癒されたのは
いつぶりだろう
こんな透明な気持ち
いつぶりだろう
ありがとうって思った
いてくれて良かったって思った
頬にキスしたら
目が合って
奏多くんがキスした
「俺的にちゅーはエッチよりハードル高いです」
いつか奏多くんそう言ってた
奏多くんもハードル超えたんだな
でも複雑
私のこの感情は
とても深いけど
たぶん純愛じゃない
友情に近い愛情
たぶん奏多くんとは違う
でも確かに在って離したくなくて
失いたくない存在
「俺、明日向こう帰っちゃいますよ」
泣きやんだ私に
奏多くんが意地悪な顔して笑う
「いじわる」
私も笑った
奏多くんへの感情に
今は名前がつけられないけど
明日には消えてしまう
愛しい貴方に
今日だけ抱かれたかった
次会えるのは
きっとまたずいぶん先になるけど
それまで
あの夜の記憶を思い出せば
ひとりでも頑張れる
でも寂しくなるのも半分
ああ
この感情は
恋に似てる
奏多くん
私に恋させてくれて
ありがとう
いってらっしゃい
奏多くん