ほぼ完全に封鎖して、州の中に限定して自由が認められた」
ヴァルモン州の人々は喜びに祝杯を上げた。
仕事を自由に選び、住みたい場所を選び。
しかし――――――
「それは長く続かなかった。
貧困に苦しむ人々が続出し、ヴァルモン州はスラム街と化した。
日常茶飯事に犯罪が起こる、サイラスで最も治安の悪い街になったんだ」
「どうして?」unbrella
「身分制度が、無かったからだ」
人による人の支配。まさにサイラスはその形を成している。
村は村長が束ね、町は町長が束ね、彼らに指示を出すのは州知事。州知事の上に居るのが貴族、そしてその上に国王。
どんなに小さな村でも、一人一人を上に居るものが把握?管理する。
仕事を与えられ生活に困ることはない。親を亡くしても親類の誰かが面倒を見る。
そして下の身分の者から搾取した財を、貴族は研究に投資するのだ。
研究は平民を通して行われるため、これも民の仕事として給料が支払われる。研究で得た技術や知識は富を生み、さらに生活は豊かになる。
それが、サイラスが研究大国だと言われる所以だった。
そこには貴族にも平民にもお互いにメリットがある。
貴族は大量の税金を取って財産を肥やすことができる。研究に投資し成功すればさらにその財を増やす。
その代わり平民には確実に仕事が与えられ、一定の生活を約束される。
1人当たりの平均寿命は約4000。
1人でも労働力を失えばとてつもない損失になるため、絶対に平民であっても酷い待遇を与えられることはない。また、貴族が研究に投資し成功することで自分たちの生活をさらに便利なものにすることができる。
もちろん、貴族のようなリスクを背負うことなく。
サイラスは非常に豊かな国である。そして国だけでなく、国民一人一人の生活レベルは中心の国に匹敵するほど高かった。
カーマルゲートに平民が多いことはその証拠である。食べるので精いっぱいでは、勉強にお金が回らない。
また、サイラスには奴隷身分がないというのも大きな特徴の一つだ。
それだけサイラスでは人を“資源”として大切に扱われていた。
「要は、サイラスは国自体が大きな企業体系を成していたんだ。
身分制度が崩壊すれば、人は自由に移動して管理統制が利かなくなる。
仕事をもらえない人、親のいない子供。そう言った貧困層が出現してスラム街になった」
「社会保障はなかったの?」
「この国にはない。rihanna umbrella 歌詞
病人や障害を持った人は上が管理して、その人にできる仕事を割り振りすることで十分な収入が得られるよう配慮していたから全く必要なかったんだ」
自由を得られる代わりに失ったものは大きかった。そして悲惨だった。
その辺りに死体や汚物が転がり、家を無くした人は路上で物乞いの生活。
逆に成功した人も居るには居たが、そんなものは限られたごく一部の人たちだけ。
人々は荒んでいった。街も、心も。
そしてかつての繁栄していたヴァルモン州は見る影もなくなっていった。
「身分制を廃止して80年後。
スラム化し汚染したこの地に疫病が流行った」
生きている人も死んでいる人も混ぜこぜになっているような不潔な場所。疫病がは流行るのは必然だった。
ヴァルモン州は封鎖されていたため外に逃げることは叶わない。
人は、全て死んだ。
「ヴァルモン家は困った。
まさか自分から言い出した身分制度廃止がこのような悲惨な結果を招くとは想像できなかったから。
このことが国民に知れたら、自分の地位と信頼を失ってしまう」
「それからどうなったの?」
「ヴァルモン州は封鎖されていて国民は中の様子を知らなかった。
だからヴァルモン家はこう言った。『ヴァルモンの民はジーン?ベルンハルトの実験台にされ、全て虐殺された』と」
一筋の風が吹き、その場に沈黙が訪れた。
ヴァルモン家は逃げた。自分の失脚を目の当たりにして、それを恐れて責任をジーン?ベルンハルトに擦り付けたのだ。
「もともと研究熱心だったジーンは、ちょうどそのころ噂になっていた人物だった。もしかしたら錬金術に手を染めているのではないか、と。http://www.beejp.com/ umbrella yui
だから国民は簡単にヴァルモン家の嘘を信じた」
「じゃあ、ジーン?ベルンハルトの噂を利用したってこと?」
「そう、そしてその嘘を信じたのは貴族も同じだ。
ヴァルモン州に起こった事の顛末を知っている