●PPシリーズの始祖

 

 ワルサーの二大巨頭といえば、PPとP38だ。未だにこれらを使っている軍隊や警察は殆どないだろうが、トイガンの世界ではバリバリの現役だ。

 

 さて、PPシリーズはPP、PPK、PPK/Sと大きく3種類に分けられるのだが、ダントツの人気は007で活躍したPPK、次いでバランスが良いPPK/Sという感じで、PPはいつも3位に甘んじているような気がする。そして、何となく地味な印象がある。

 

 しかし、PPKにはない“しなやかさ”のようなものをPPからは感じる。よく見ると、全体的なバランスもPPK/Sよりも良い気がする。前方にクローズアップすると、チョンと伸びたスライドがエレガントに映る。あら不思議。しっかりと向き合えば、だんだんと魅力的に見えてくるじゃないか。

 

 

 PPシリーズの歴史についてはこちらの記事で詳しく解説しているが、簡単にその歴史を振り返ってみる。

 

 ワルサー社はカール・ワルサーが1886年に創業して以来、主に小型ピストルを製造を行ったが、デザインはどれも垢抜けない感じで、目新しいメカニズムなども搭載されていなかった。しかし、ワルサー社は1929年に発表した「PP」は従来の製品とは一線の画するものだった。

 

 ダブルアクションのトリガーを採用し、デコッカーを兼ねたマニュアルセフティとハンマーブロックを搭載しており、当時としては非常に先進的なピストルであった。そのうえ、デザインも素晴らしかった。PPはドイツ警察だけでなく、ヨーロッパ各国の警察が採用し、ワルサー社の知名度を大きく向上させた。1936年にドイツで再軍備が始まると、ドイツ軍の制式ピストルにも選ばれた。

 

 第二次大戦の終戦後、ドイツは東西に分割され、ワルサー社は東ドイツとなったため、ワルサー社の二代目、フリッツ・ワルサーは西ドイツへと脱出する。その後、1950年にフランスノマニューリン社とライセンス契約を結び、マニューリン社がスライドの再設計を行ったのちに、1952年からはライセンス生産が始まった。1961年にはウルムにワルサー社の新工場が完成し、自社生産が開始された。

 

 

●マルシン ワルサーPP

 

 ウクライナ情勢、円高などのさまざまな要因で物価が上昇している。値上げに次ぐ値上げで懐も寒い。当然のことながら、トイガン業界もその影響を受けており、マルシンから再販されたPPシリーズも値上げとなった。

 

 ただし、値上げといっても、前回のロットと同じものを値段だけ上げてポンと出したのではない。今回から発火カートが新型のアルミ製となったし、パッケージもリニューアルされてカッコいいものになった。マルシンのモデルガンは進歩を続けているのもまた事実である。

 

 

 今回からパッケージが新しくなった。爽やかな青を基調とし、中央にはワルサーバナーが入る。素っ気ない段ボール時代とはエライ違いだ。お店でこういうカッコいいパッケージを見つけると、ついつい手が伸びてしまうだよなぁ。

 

 

 今回の目玉である新型アルミカート。おぉ、軽い!重さを量ってみると1発当たり2g。従来のPP、PPK/S用カートが1発当たり7gだったので、1/3以下と大幅な減量に成功。手動で排莢してみたが、真鍮カートに比べて飛びが良く、作動も軽やかになった。弾頭が銅色になったのも雰囲気があって良い。また、従来はPP、PPK/SとPPKでカートの寸法がわずかに異なっており、それぞれ専用のカートを使っていたが、アルミカートでは両者共通となった。

 

 

 ①PP、PPK/S用カート、②PPK用カート、③新型アルミカートを並べて比べてみる。全長は①は23.8mmに対し、②は22.6mmと1mmほど短く、③は23.0mmだった。リム径、リム厚みはいずれも同じだが、ヘッドの長さが①2.5mmで②と③が2.0mmだった。重量は①が7g、②が6g、③が2gだった。

 

 なお、デトネーターは形状、長さともに従来のものと同一であった。また、手動で作動させた限りでは以前のモデルに新型アルミカートを使っても、問題なく排莢することができた。

 

 

 「PPシリーズ三兄弟」がようやく揃った。とりあえず、戦後型はこれは一段落だが、PPシリーズには戦前型もある。コレクターとしては90度セフティを押さえておきたいところ。

 

 

 続いてはP38とのツーショット。P38はマルゼンのガスブロだが、これが非常に素晴らしい。ロッキングブロックはリアルに噛み合っているし、刻印もホンモノに忠実。マルゼンなのにガス漏れもしない。それでいて値段も安い。

 

 

 PPの魅力であるスライド先端をアップで。平面と曲線が織りなす絶妙な形状が実に優美だ。フレーム、トリガーガードへと至るカーブも柔らかで繊細な雰囲気が漂う。ヨーロピアンオートらしい精巧で気品溢れるデザインはもはや芸術の域に達しているといっても過言ではない。

 

 

 一時期は版権の問題で、ワルサーの文字が変更されているものがあったが、今回はワルサーバナーがバッチリ入る。スライド側面のヘアラインが上品で良い感じ。

 

 

 以前は“MARUSHIN MADE IN JAPAN”の刻印があったが、なんと今回のロットでは削除されていた。但し、版権関係の刻印は相変わらず。

 

 

 セフティを回すことでハンマーをデコッキングすることができるのだが、これがとんでもなく固い。何かの拍子のポキッと折れそうで怖い。

 

 

 さて、肝心のトリガーフィーリング。シングルアクションはストロークが短いものの、かなり重めでレットオフのタイミングが掴みづらい。ダブルアクションは最初から最後まで重い。モデルガンということでハンマースプリングが強いことも影響していると思うが、とにかく重い。グルーブが食い込んで痛いので、トリガーはスムースのほうが良いかもしれない。

 

 

 スナッグフリーを意識したデザインということもあり、フロントサイトは極小。

 

 

 リアサイトは戦後型になって大型化されたが、それでもサイズは小さい。極小のフロントサイトとこれまた小さいリアサイトの組み合わせ。しかし、スライドトップには反射防止のセレーションが付く豪華仕様。

 

 ローディングインジケーターはライブ。チャンバーにカートが入ると、シルバーの棒がチョンと突き出す。

 

 

 PPシリーズには木グリよりもプラグリのほうが似合う。PPKのグリップは握り心地が妙にカクカクしていて平べったい感じ。対して、PPは曲線が優しく、程よい太さもあり、総じてふくよかな握り心地。長さもマガジンのフィンガーレストと合わせて、小指までがピタリと収まるジャストサイズ。妥協の末に生まれたのにもかかわらず、PPK/Sに人気が出たのにも頷ける。

 

 

 ワルサーの製品は創業以来、ブローニングM1910のようなブッシングでリコイルスプリングを止めていたのだが、「Model 8」からこれを廃止してスライドで受け止めるようにし、分解はトリガーガードを下げて行う方式に改めた。PPシリーズでもこの方式が採用された。ブッシング方式と比べると、こちらのほうが分解/結合は楽だ。

 

 

●ダミーカート化

 

 今回の再販のために、C-Tecのダミーカートを用意しておいたので、コイツを使うべく、ダミーカート化に取り組む。

 

 アルミカートとなったことで、飛びは良くなり、作動も軽やかになったが、重量減となったのが非発火派としてイタい。そういうわけで、何とも贅沢だが、重量とリアリティを楽しみたいときはダミーカート、伸びやかな排莢を楽しみたいときはアルミカートと使い分けることにした。

 

 

 ダミーカート化といっても、特に難しいことはなく、ただデトネーターを抜くだけ。PPシリーズのデトネーターはネジなどで固定されておらず、バレルに嵌っているだけなので、マズルから棒で押し出してやれば良い。

 

 ただし、PPのバレルは.32口径と小さく、中央にインサートが入っているので、ここへ入る細い棒が意外とない。そこで、私はホームセンターで直径3mmのアルミの丸棒を買ってきて、これを適当な長さにカットして使用した。ハンマーで叩くとデトネーターの頭が出てくるので、これをラジペンで掴んで引っこ抜けばダミーカート化は完了だ。

 

 

 エジェクションポートから覗くダミーカート。ダミーカートだとマガジンに込める仕草も一気にリアルになり、全体の重さも少しアップする。こりゃ楽しいなぁ。