伊豆の踊子
川端康成(1899ー1972)
すさまじい=>ものすごい
麓(ふもと)
重なり合った(かさなりあう)山々(やまやま)や原生林(げんせいりん)や深い渓谷(けいこく)の秋に見惚れ(みとれ)ながらも、一つの期待に胸をときめかして道を急いでいるのだった。
ときめかす=>期待や喜びで胸をどきどきさせる。心を躍らせる。「胸を―・して入学する」
大粒(おおつぶ )の雨が私を打ち始めた。
折れ曲がった(おれまがった)急な坂道(さかみち)を駆け登った。(走って登る)
峠(とうげ)の茶屋(ちゃや)に辿り着く(たどりつく)
峠=> 山道をのぼりつめて、下りにかかる所
突っ立つ(つったつ)
裏返す(うらがえす)=>表と裏とを逆にする
腰を下ろす=>座る
息切れ(いきぎれ)=> (名詞、する)呼吸がせわしくなって苦しいこと。「階段を上がるだけで―がした」
言葉が喉に引っかかって出なかった。
向かい合う(むかいあう)=>互いに相手の正面に向く。相対する。
慌てる(あわてる)
袂(たもと)=> 和服の袖付けから下の、袋のように垂れた部分。
煙草盆(たばこぼん)を引き寄せて私に近くしてくれた
古風な(こふう)
卵形(たまごがた)の凛々しい(りりしい)顔
誇張する(こちょう)
稗史的な(はいし)
宿屋(やどや)=>旅館
湯ヶ島(ゆがしま)温泉
眺める(ながめる)
旅情が自分の身についたとおもった。
旅情=>旅に出て感じるしみじみとした思い。旅の情趣。
一心(いっしん)に見た=>心を一つの事に集中すること。
雨宿りする(あまやどり)=>[名](スル)雨を避けるために、軒下などにしばらく身を寄せること。
落ち合う=> 一つ所で出合う。また、打ち合わせておいて、ある場所で一緒になる。「駅前の喫茶店で―・う」
どぎまぎする=>慌てる
戸障子(としょうじ)=>雨戸(あまど)と障子
下を覗くと(のぞく)美しい谷(たに)が目の届かないほど深かった。私は肌(はだ)に粟粒(あわつぶ)を拵え(こしらえ)、かちかちと歯を鳴らして身震い(みぶるい)した。
濡れてる服を乾かす(かわかす)
居間(いま)
躊躇する(ちゅうちょ)
蒼ぶくれ(あおぶくれ)=>[名・形動](スル)顔や皮膚が青ずんで浮腫む(むくむ)こと。「―な顔」
胡坐(あぐら)をか・く
瞳(ひとみ)
物憂げに(ものうげ)=> なんとなく心が晴れ晴れしない
なんとなく=>[副]言動などに、はっきりとした理由・目的がないさま。
はっきり言えないが
うっかりと
黄色い(きいろい)
眼(がん)を私のほうへ向けた
怪奇(かいき)=> あやしく不思議なこと。「―な物語」
私は棒立ち(ぼうだち)になっていた。
見苦しい(みぐるしい)=>見た感じが不愉快である。
堪忍(かんにん)する=>我慢する
中風(ちゅうふう)を患って(わずらう)、全身が不随(ふずい)になってしまっているのだ。
紙屑(かみくず)の中に埋もれている(うもれる)
養生(ようじょう)
諸国から取り寄せた薬
取り寄せる=>注文して送らせたり、持って来させたりする。「資料を郵便で―・せる」
旅人(たびびと)
一つをも洩らさずに(もらす)
売薬(ばいやく)
古ぼける(ふる)=>古くなって色や形がはっきりしなくなる。「―・けた看板」
囲炉裏(いろり)
俯く(うつむく)
家を揺す振る(ゆすぶる)=揺さぶる
雪に染まる(そまる)峠(とうげ)
出で立つ(いでたつ)=>旅などに出発する。出て行く。
「旅芸人たちが―・つらしい物音が聞こえて来た」
落着く(おちつく)
胸騒ぎ(むねさわぎ)する=>心配ごとや悪い予感などのために心が穏やかでないこと。「帰りが遅すぎるので―がする」
旅慣れる(たびなれる)=>度も経験しているため旅の諸事をうまくこなせる。「―・れた服装」
一走りに追いつける
一走りする(ひとはしり)=>一度走ること。また、ちょっと走って行って用を足すこと。「郵便局まで―行って来る」
いらいらする=>思いどおりにならなかったり不快なことがあったりして、神経が高ぶるさま。いらだたしいさま。「連絡がとれず、―する」
芸人(げいにん)
甚だしい(はなはだしい)=>普通の度合いをはるかに超えている。非常な
私を煽り立てる(あおりたてる)=> 盛んにあおる。扇動する。「功名心を―・てる」
雨脚(あまあし)=>線状に見える、降り注ぐ雨。あめあし。「―が強い」
峰(みね)が明るんで来た。
明るむ(あかるむ)=>明るくなる
晴れ上がる(はれあがる)=>すっかり晴れる
しきりに引きとめられた
頻りに(しきりと)=>たびたび、繰り返す、何回も
引き止める(ひきとめる)=> 立ち去ろうとする人をとどまらせる。ひきとどめる。「深夜まで客を―・める」
微かな(かすか)希望
微かに頷いた(うなずく)
微かに覚えている
~と叫びながら、追っかけて来た。
ちょこちょこする=>1 小またで足早に歩いたり走ったりするさま。ちょこまか。また、動作に落ち着きのないさま。「子供が―(と)歩く」
お粗末(そまつ)いたしました。
涙(なみだ)が零れ(こぼれ)そうに感じていた。
お婆さんのよろよろした足取り(あしとり)
よろよろ=>[副](スル)足もとがしっかりせず倒れそうなさま。「酔って、―(と)歩く」
暗いトンネルに入ると、冷たい雫(しずく)がぽたぽた落ちていた。南伊豆への出口が前方(ぜんぽう)に小さく明るんでいた。
白塗り(しろぬり)の柵(さく)
稲妻(いなずま)=>闪电
模型(もけい)のような展望(てんぼう)の裾(すそ)
歩調(ほちょう)を緩める(ゆるめる)
私は冷淡(れいたん)なふうに女たちを追い越してしまった。
立ち止る(たちどまる)
塩梅(あんばい)
塩梅がいい=>咸淡正好
塩梅よく仕事を進めている。
次々に(つぎつぎに)
ばたばた走り寄ってきた。
ぽつぽつ私に話しかけた。
ぽつぽつ=> 物事が少しずつ行われるさま。また、物事を少しずつゆっくり行うさま。
~に囁く(ささやく)
訊ねる(たずねる)=>わからないことを人に聞く
小声(こごえ)で
思い切って=>1 ためらう気持ちを振り切って物事をするさま。決心して。「―秘密を打ち明ける」
木賃宿(きちんやど)=>一般に、粗末な安宿。
旅(たび)は道連れ(みちづれ)世は情け(なさけ)=>旅では道連れのあることが心強く、同じように世を渡るには互いに情けをかけることが大切である。
無造作に(むぞうさ)=>容易く、不用意な=>重い荷物を無造作に持つ。無造作に承諾する。(しょうだく)
一時に(いちどきに)=>一度に
荷物を下ろした。
畳や襖(ふすま)も古びて汚なかった。
手をぶるぶる震わせる(ふるわせる)
ぶるぶる=>寒さや恐怖などのために震えるさま。「怒りにからだを―(と)させる」
震わせる=>震動を与える。震わす「怒りに声を―・せる」
茶托(ちゃたく)
落ちかかる=>落ちそうになる。「壁の絵が―・っている」
あっけにとられた。=>意外な事に出会い、驚きあきれる状態。「突然走り出した彼を―にとられながら見送った」
色気づく(いろけづく)=> 異性に関心をもちはじめる。性に目覚める。「息子もそろそろ―・いてきた」
呆れ果てる(あきれはてる)=>1 すっかりあきれてしまう。「―・てて返す言葉もない」
窮屈(きゅうくつ)な感じを与える
省みる(かえりみる)=>自分のしたことを、もう一度考えてみる。反省する。「わが身を―・みて恥じる」
ふと=>突然=>ふと立ち止る
しげしげ=>何度も=>「その店へ―(と)足を運ぶ」
傍(かたわら)の人
傍(かたわ)らに人無き(なき)が如(ごと)し=>「傍若無人(ぼうじゃくぶじん)そばにだれもいないかのように、わがまま勝手に振る舞うさま。「―如き振る舞い」
幾度(いくど、いくたび)
畔、辺(ほとり)
道のほとり、小川のほとり
顔つき(かおつき)
話ぶり=>話をするときのようす。話のしかた。「あの―では確かだ」
もの‐ずき【物好き/物数奇】
変わったことを好むこと。好奇心が強く、普通と違ったことを好むこと。また、その人や、そのさま。「寒中水泳とは―な人だ」
その人に惚れ(ほれる)
湯から上る。
かえりがけ【帰り掛け】に
帰る途中。帰り道。「―に立ち寄る」ーに買ってきた。
み‐あ・げる【見上げる】
下から上を見る。仰ぎ見る。「夜空を―・げる」
ひき‐かえ・す【引(き)返す】
進んできた道をもとへ戻る。ひっかえす。「途中で―・す」
ほうりあげる【▲放り上げる】
藁屋根(わらやね)
夕暮れ(ゆうぐれ)
山々の姿が遠近(えんきん)を失って白く染まり、前の小川が見る見る黄色く濁って(にごる)音を高めた。
みる‐みる【見る見る】
[副]見ているうちに、ある事が急激に進行するさま。
兼用(けんよう)
かき‐やぶ・る【×掻き破る】つめや刃物などでひっかいて裂く。また、ひっかいて傷つける。「夜中には物置の戸を爪で―・って外へ出ようとした」〈漱石・硝子戸の中〉
雨戸を明けて体を乗り出した。
雨風(あめかぜ)が私の頭を叩いた。
私は眼を閉じて耳を澄まし(すます)ながら、太鼓がどこをどう歩いてここへ来るかを知ろうとした。
叫び声(さけびごえ)
笑い声(わらいごえ)
木賃宿と向かい合った料理屋
女の声は時々稲妻の(いなずま)ように闇夜(やみよ)に鋭く(するどく)通った。
雨の音の底に私は沈み込んでしまった。
~と悩ます
雨戸を閉じて床(とこ)に入っても胸が苦しかった。
湯を荒々しく(あらあらしく)掻き回した。
雨が上がって、月がでた。雨に洗われた秋の夜が冴え冴え(さえざえ)と明るんだ。
裸足(はだし)で湯殿(ゆどの)を抜け出して行ったって、どうでもできないのだと思った。
ぬけ‐だ・す【抜け出す/▽脱け出す】
1 こっそりその場を離れて外へ出る。抜け出る。「宴会を―・す」
こっそり
[副]人に知られないように、ひそかに物事をするさま。
明る朝(あくるあさ)=翌朝(よくあさ)
美しく晴れ渡った南伊豆の小春日和(こはるびより)
はれ‐わた・る【晴(れ)渡る】
すっかり晴れる。「雲一つなく―・った空」
こはる‐びより【小春日‐和】
初冬のいかにも小春らしい穏やかで暖かい日和。
自分にも昨夜の悩ましさが夢のように感じられる。
ばか‐さわぎ【馬鹿騒ぎ】
[名](スル)むやみに騒ぐこと。また、その騒ぎ。大騒ぎ。「酒を飲んで―する」
彼はあまりに何気ない(なにげない)ふうなので、私は黙ってしまった。
なにげ‐な・い【何気無い】
はっきりした考えや意図がなくて行動するさま。また、そのように見えるさま。さりげない。「―・いふうを装う(よそおう)」「―・く近づく」
裸体(らたい)裸(はだか)
真裸(まはだか)裸身(はだかみ)
浮かぶ(うかぶ)
仄暗い(ほのぐらい)=>光が弱くてうす暗い。「―・いろうそく」
脱衣(だつい)
私は心に清水(きよみず)を感じ、ほうっと深い息を吐い(はく)てから、ことこと笑った。
私は朗らかな喜びでことことと笑い続けた。頭が拭(ぬぐ)われたように澄ん(すむ)で来た。微笑(びしょう)がいつまでも止まらなかった。
ほがら‐か【朗らか】
1 心にこだわりがなく、晴れ晴れとして明るいさま。「―な性格」「―に話す」
むすめ‐ざかり【娘盛り】
若い女性として最も美しい年ごろ。
おもい‐ちがい【思い違い】
[名](スル)間違えて思い込むこと。また、その事柄。勘違い。思い違え。「うっかり曜日を―していた」
そわ‐そわ
[副](スル)気持ちや態度が落ち着かないさま。「発表待ちで朝から―する」
順々に(じゅんじゅん)
紙屋は芸人のほうを見向きもせずに、基盤の目を一つ一つ数えてから、ますます注意深くうって行った。
さし【▽止し】
[接尾]動詞の連用形に付いて、その動作が中止の状態になっていること。また、そのような状態のものを表す。「読み―の書物」「吸い―のタバコ」
よし【▽止し】
よすこと。やめること。やめ。「小言はもう―にする」
小言(こごと)=>文句
どうせ
とても眠れそうもなく頭が冴えざえしている。
いさみ‐た・つ【勇み立つ】
[動タ五(四)]勇気を奮い起こし(ふるいおこす)勢いこむ。気負いたつ。奮起する。元気づく。「盛んな声援(せいえん)に選手たちは―・った」
しゅっ‐たつ【出立】
[名](スル)旅に出発すること。「払暁(ふつぎょう)のうちに―する」
あけ‐はな・す【開け放す/明け放す】
窓や戸などを、すっかり開ける。また、開けたままにしておく。「窓を―・す」
めん‐くら・う【面食らう/面喰らう】
突然の事に驚き戸惑う(とまどう)。まごつく。「不意の指名にすっかり―・う」
まご‐つ・く
迷ってうろうろする。うろたえる。まごまごする。「大きな駅で―・く」
つっ‐た・つ【突っ立つ】
立ったまま何もしないでいる。ぼんやりと立つ。「ぼうっと―・っていないで手伝えよ」
寝床(ねどこ)
真赤(まあか)=>真っ赤(まっか)
はたと=>突然
虫の声がはたとやんだ
その考えがはたと思い浮かんだ
唇(くちびる)
眦(まなじり)
滲む(にじむ)=>「包帯に血が―・む」
この情緒的な寝姿(ねすがた)が私の胸を染めた。彼女は眩し(まぶしい)そうにくるりと寝返り(ねがえり)して、手で顔を隠したまま布団を滑り出ると、廊下に座った。
くるり
[副]1 軽く1回転するさま。「―とふり向く」
まご‐つ・く
[動カ五(四)]迷ってうろうろする。平静を失う。うろたえる。まごまごする。「大きな駅で―・く」
私をまごつかせる。
つっ‐ぱな・す【突っ放す】
1、 突いてはなれさせる
2、関係を絶つ
私は突っ放されたように感じた。
つけ‐くわ・える【付(け)加える】=>補足する
前々(まえまえ)から=>ずっと前
拝む(おがむ)
橋の欄干(らんかん)に寄り掛かる
新派役者(しんぱやくしゃ)
芝居(しばい)=>演劇
荷物の風呂敷から刀(かたな)の鞘(さや)が足のように食み出し(はみだす)ていたのだ。
身を誤った果てに落ちぶれてしまった。
落ちぶれる=>社会的地位や生活程度などが悪くなって、惨めな状態になる。
息が絶える
実の妹
体がしっかりしない
おもい‐つ・める〔おもひ‐〕【思い詰める】そのことだけを深く考えて悩む。いちずに思い込む。「―・めた表情」
栄吉(えいきち)はひどく感傷的になって泣き出しそうな顔をしながら、河瀬(かわせ)を見詰め(みつめ)ていた。
かわ‐せ【川瀬】
川底が浅く、流れの速い所。
見詰める=>凝視(ぎょうし)する、じっと見続ける
白粉(おしろい)を洗い落とした踊子が道端に蹲って(うずくまって)犬の頭を撫で(なで)ていた。
喧しい(やかましい)
躊躇う(ためらう)
誤魔化す(ごまかす)=>本心を見やぶられないように、話をそらしたり、でまかせを言ったりして、その場やうわべをとりつくろう。「笑って―・す」「年を―・す」「世間の目を―・す」
五目並べ(ごもくならべ)=>遊戯(ゆうぎ)
造作ない(ぞうさない)=>easy
おおい‐かぶさ・る【覆い被さる】
1 全体を覆うようにかぶさる。「前髪が目に―・る」
2 強い圧迫感をもって身に及んでくる。「責任が―・ってくる」
不自然なほど美しい黒髪(くろかみ)
純朴(じゅんぼく)=>「―な人柄」「地方の―な風習」
唸る(うなる)
謡(うたい)
八百屋(やおや)
鳥屋(とりや)
果たして(はたして)=>おもったとおり
私は読み出すと、彼女は私の肩に触るほど顔を寄せて真剣な表情をしながら、眼をきらきら輝(かがや)かせて一心に私の額(ひたい)をみつめ、瞬き(まばたき)一つしなかった。
二重瞼(ふたえまぶた)
太鼓を提げる(さげる)
後姿(うしろすがた)
太鼓の音は私の心を晴れやかに踊らせた。
晴れやか=>すっきりとして明るいさま。「―な顔つき」
浮き立つ(うきたつ)
1 心楽しく、うきうきして落ち着かない状態になる。「旅行を前にして心が―・つ」
3 周りのものから区別されて、よく目立つ。引き立つ。
にぎりこぶし【握り拳】
掌(てのひら)
ざら‐ざら
[副](スル)
1 小粒で堅いものが触れ合ってたてる音を表す語。「袋が破れて豆が―(と)こぼれる」
水のように透き通った(すきとおった)赤坊(あかぼう)
しみ‐こ・む【染(み)込む/×沁み込む】
1 液体や気体、色などが物の中まで徐々に深くしみる。「味が―・むまで煮る」「においが―・む」
2 心の奥底まで深く入り込み、消し去ることができなくなる。「不信感が―・んでいる」「―・んだ習慣」
あすこ=>あそこ
旅心(たびごころ)をあじわう=>旅行のときの気持ち
世知辛い(せちがらい)=>1 世渡りがむずかしい。暮らしにくい。「―・い世の中」
はにか・む=>恥ずかしがる。恥ずかしそうな表情をする。「―・んで頬を赤らめる」
むっつりする
[副](スル)口数が少なく、愛想のないさま。「始終―(と)している」
夜中(よなか)をすぎる
門口(かどぐち)
旅の空での故郷として懐かしがるような空気の漂った(ただよう)町
出外れる(ではずれる)=>村を出外れると森がある
海の上の朝日が山の腹(はら)を温めていた。
秋空(あきぞら)が晴れ過ぎたためか、日に近い海は春のように霞んでいた。
霞む(かすむ)=>2 霞がかかったような状態になる。ぼんやりして、物の姿や形がはっきり見えなくなる。「雨に―・む街」
見え隠れする(みえかくれ)=>見えたり隠れたりすること。「車窓に―する海岸」
険しい(けわしい)
間道(かんどう)=>主な道から外れた道。⇔本道。
むな‐つき【胸突き】
山坂の道の険しく急な所。
やけ‐はんぶん【自=棄半分】
やけくそになりかかっていること。半分やけになること。半自棄(はんやけ)。
一間(けん)ほど後ろを歩いて、その間隔を縮めようとも伸そう(のす)ともしなかった。
微笑む(ほほえむ)
私が歩き出すまで歩かない。
寄宿舎(きしゅくしゃ)
ぽつりぽつり
彼はぽつりぽつりと身の上話を始めた。
ぽつりぽつりと雨が降り始めた。
枯草(こそう)
腰掛け(こしかけ)=>いす
払う(はらう)=> 〔じゃまなものを取り除く〕
屈む(かがむ)=>しゃがむ
叩く(はたく)=>拍打
叩く(たたく)=>敲
鳥がとまる枝(えだ)の枯葉(こよう)がかさかさ鳴るほど静かだった。
踊子は間もなく黄ばんだ(きばむ)雑木(ぞうき)の間から空しく(むなしく)帰って来た。
き‐ば・む【黄ばむ】
黄色くなる。「木々の葉が―・む」「―・んだ表紙」
唐突(とうとつ)=>突然
唐突に、唐突な発言
見当(けんとう)のつかない話
見当をつける=>推測する
見当が外れる
頂上に辿り着いた(たどりついた)
木陰(こかげ)の岩の間から清水が湧い(わい)ていた。
泉のぐるり=>周り、周囲
私は冷たい水を手に掬って(すくって)飲んだ。女たちは容易(ようい)にそこを離れなかった。
炭焼(すみやき)の煙
路傍(ろぼう)
桃色(ももいろ)の櫛(くし)で犬のむくげを梳い(すい)てやっている。
むく‐げ【×尨毛】
動物の、長くふさふさと垂れた毛。むく。「―の犬」
櫛の歯が折れる
窘める(たしなめる)=>よくない点に対して注意を与える。
一足先に(ひとあしさき)=>わずかな距離。また、わずかな時間。「駅まではもう―だ」「―先に帰宅する」
走って追っかけてきた。
まご‐つ・く
=>迷ってうろうろする。うろたえる。まごまごする。「大きな駅で―・く」
突きつける=>荒々しく凶器などを相手の目の前に差し出す。
竹束(たけたば)
田の畦(あぜ)に背中を打ち付けるように倒れ掛かって…
絶えず=>間断(かんだん)なく、いつも
物言い(ものいい)=>言葉遣い
開けっ放し(あけっぱなし)=> 心の中や物事を包み隠さないこと。ありのままの姿を見せること。また、そのさま。あけっぴろげ。「―な性格」
ぽいと=>無造作に投げる
ところどころ=>あちらこちら
たて‐ふだ【立(て)札】
法度(はっと)・禁制など、人々に知らせたいことを書いて立てた木の札。
もの‐ごい〔‐ごひ〕【物乞い】
[名](スル)他人に物を恵んでくれるように頼むこと。また、その人。乞食(こじき)。
通行人に物乞いをする
物乞いの女
つかえる=> じゃまなものがあったり行きづまったりして、先へ進めない状態になる。
駄目(だめ)を押(お)・す
念のために確かめる。念を押す。「本当にいいのかと―・す」
連中(れんちゅう)=>仲間である者たち。また、同じようなことをする者たちをひとまとめにしていう語。親しみ、あるいは軽蔑(けいべつ)を込めていう
さき‐まわり〔‐まはり〕【先回り】
[名](スル)
1 近道を行くなどして、相手より先に目的地に行くこと。「―して一行の到着を待つ」
2 相手より先に物事をしたり、考えたりすること。「―した言い方」
無頼漢(ぶらいかん)
供える(そなえる)
旅費(りょひ)
強いて(しいて)=>むりに
~に攀じ登る(よじのぼる)
行李(こうり)
せめて=>少なくとも=>at least
ぐったり
[副](スル)疲れたり弱ったりして、力が抜けたさま。ぐたっと。「あまりの暑さに―する」
すがり‐つ・く【×縋り付く】
1 頼りにしてしっかりとつかまる。「泣きながら―・く」
せがむ=>無理に頼む
よそよそしい=>冷淡である
窓敷居(まどしきい)に肘(ひじ)を突いて(つく)、いつまでも夜の町を眺めていた。暗い町だった。遠くから絶えず微かに太鼓の音が聞こえて来るような気がした。訳もなく涙がぽろぽろ落ちた。
朝風(あさかぜ)が冷たかった。
船酔い(ふなよい)する
こくりこくり=>こっくり
1 〔うなずく様子〕子供はこっくりとうなずいた。
み‐こ・む【見込む】
1 あてにする。望みをかける。「君を男と―・んで頼む」
ありさま=>様子
ぽかんと立っている=>ぼんやりする
くくり‐つ・ける【▽括り付ける】ひもなどで他のものに縛りつける。また、比喩的に行動の自由を奪う。「荷物を車の荷台に―・ける」
とお‐ざか・る〔とほ‐〕【遠ざかる】
1 遠くに離れてゆく。遠のく。「足音が―・る」
欄干に凭れて(もたれる)沖の大島を一心に眺めていた。踊子に別れたのは遠い昔であるような気持ちだった。
私はカバンを枕(まくら)にして横たわった(よこ)=>横になる
頭が空っぽ(からっぽ)で時間というものを感じなかった。
ただ清々しい満足の中に静かに眠っているようだった。
清々しい(すがすがしい)1 さわやかで気持ちがいい。「―・い朝の大気」「―・い表情」「―・い行為」
そして少年の学生マントの中に潜り(もぐり)込んだ。私はどんなに親切にされても、それを大変自然に受け入れられるような美しい空虚(くうきょ)な気持ちだった。
私は涙を出任せ(でまかせ)にしていた。頭が澄まんだ水になってしまっていて、それがぽろぽろ零れ、その後には何も残らないような甘い快さ(こころよさ)だった。
川端康成(1899ー1972)
すさまじい=>ものすごい
麓(ふもと)
重なり合った(かさなりあう)山々(やまやま)や原生林(げんせいりん)や深い渓谷(けいこく)の秋に見惚れ(みとれ)ながらも、一つの期待に胸をときめかして道を急いでいるのだった。
ときめかす=>期待や喜びで胸をどきどきさせる。心を躍らせる。「胸を―・して入学する」
大粒(おおつぶ )の雨が私を打ち始めた。
折れ曲がった(おれまがった)急な坂道(さかみち)を駆け登った。(走って登る)
峠(とうげ)の茶屋(ちゃや)に辿り着く(たどりつく)
峠=> 山道をのぼりつめて、下りにかかる所
突っ立つ(つったつ)
裏返す(うらがえす)=>表と裏とを逆にする
腰を下ろす=>座る
息切れ(いきぎれ)=> (名詞、する)呼吸がせわしくなって苦しいこと。「階段を上がるだけで―がした」
言葉が喉に引っかかって出なかった。
向かい合う(むかいあう)=>互いに相手の正面に向く。相対する。
慌てる(あわてる)
袂(たもと)=> 和服の袖付けから下の、袋のように垂れた部分。
煙草盆(たばこぼん)を引き寄せて私に近くしてくれた
古風な(こふう)
卵形(たまごがた)の凛々しい(りりしい)顔
誇張する(こちょう)
稗史的な(はいし)
宿屋(やどや)=>旅館
湯ヶ島(ゆがしま)温泉
眺める(ながめる)
旅情が自分の身についたとおもった。
旅情=>旅に出て感じるしみじみとした思い。旅の情趣。
一心(いっしん)に見た=>心を一つの事に集中すること。
雨宿りする(あまやどり)=>[名](スル)雨を避けるために、軒下などにしばらく身を寄せること。
落ち合う=> 一つ所で出合う。また、打ち合わせておいて、ある場所で一緒になる。「駅前の喫茶店で―・う」
どぎまぎする=>慌てる
戸障子(としょうじ)=>雨戸(あまど)と障子
下を覗くと(のぞく)美しい谷(たに)が目の届かないほど深かった。私は肌(はだ)に粟粒(あわつぶ)を拵え(こしらえ)、かちかちと歯を鳴らして身震い(みぶるい)した。
濡れてる服を乾かす(かわかす)
居間(いま)
躊躇する(ちゅうちょ)
蒼ぶくれ(あおぶくれ)=>[名・形動](スル)顔や皮膚が青ずんで浮腫む(むくむ)こと。「―な顔」
胡坐(あぐら)をか・く
瞳(ひとみ)
物憂げに(ものうげ)=> なんとなく心が晴れ晴れしない
なんとなく=>[副]言動などに、はっきりとした理由・目的がないさま。
はっきり言えないが
うっかりと
黄色い(きいろい)
眼(がん)を私のほうへ向けた
怪奇(かいき)=> あやしく不思議なこと。「―な物語」
私は棒立ち(ぼうだち)になっていた。
見苦しい(みぐるしい)=>見た感じが不愉快である。
堪忍(かんにん)する=>我慢する
中風(ちゅうふう)を患って(わずらう)、全身が不随(ふずい)になってしまっているのだ。
紙屑(かみくず)の中に埋もれている(うもれる)
養生(ようじょう)
諸国から取り寄せた薬
取り寄せる=>注文して送らせたり、持って来させたりする。「資料を郵便で―・せる」
旅人(たびびと)
一つをも洩らさずに(もらす)
売薬(ばいやく)
古ぼける(ふる)=>古くなって色や形がはっきりしなくなる。「―・けた看板」
囲炉裏(いろり)
俯く(うつむく)
家を揺す振る(ゆすぶる)=揺さぶる
雪に染まる(そまる)峠(とうげ)
出で立つ(いでたつ)=>旅などに出発する。出て行く。
「旅芸人たちが―・つらしい物音が聞こえて来た」
落着く(おちつく)
胸騒ぎ(むねさわぎ)する=>心配ごとや悪い予感などのために心が穏やかでないこと。「帰りが遅すぎるので―がする」
旅慣れる(たびなれる)=>度も経験しているため旅の諸事をうまくこなせる。「―・れた服装」
一走りに追いつける
一走りする(ひとはしり)=>一度走ること。また、ちょっと走って行って用を足すこと。「郵便局まで―行って来る」
いらいらする=>思いどおりにならなかったり不快なことがあったりして、神経が高ぶるさま。いらだたしいさま。「連絡がとれず、―する」
芸人(げいにん)
甚だしい(はなはだしい)=>普通の度合いをはるかに超えている。非常な
私を煽り立てる(あおりたてる)=> 盛んにあおる。扇動する。「功名心を―・てる」
雨脚(あまあし)=>線状に見える、降り注ぐ雨。あめあし。「―が強い」
峰(みね)が明るんで来た。
明るむ(あかるむ)=>明るくなる
晴れ上がる(はれあがる)=>すっかり晴れる
しきりに引きとめられた
頻りに(しきりと)=>たびたび、繰り返す、何回も
引き止める(ひきとめる)=> 立ち去ろうとする人をとどまらせる。ひきとどめる。「深夜まで客を―・める」
微かな(かすか)希望
微かに頷いた(うなずく)
微かに覚えている
~と叫びながら、追っかけて来た。
ちょこちょこする=>1 小またで足早に歩いたり走ったりするさま。ちょこまか。また、動作に落ち着きのないさま。「子供が―(と)歩く」
お粗末(そまつ)いたしました。
涙(なみだ)が零れ(こぼれ)そうに感じていた。
お婆さんのよろよろした足取り(あしとり)
よろよろ=>[副](スル)足もとがしっかりせず倒れそうなさま。「酔って、―(と)歩く」
暗いトンネルに入ると、冷たい雫(しずく)がぽたぽた落ちていた。南伊豆への出口が前方(ぜんぽう)に小さく明るんでいた。
白塗り(しろぬり)の柵(さく)
稲妻(いなずま)=>闪电
模型(もけい)のような展望(てんぼう)の裾(すそ)
歩調(ほちょう)を緩める(ゆるめる)
私は冷淡(れいたん)なふうに女たちを追い越してしまった。
立ち止る(たちどまる)
塩梅(あんばい)
塩梅がいい=>咸淡正好
塩梅よく仕事を進めている。
次々に(つぎつぎに)
ばたばた走り寄ってきた。
ぽつぽつ私に話しかけた。
ぽつぽつ=> 物事が少しずつ行われるさま。また、物事を少しずつゆっくり行うさま。
~に囁く(ささやく)
訊ねる(たずねる)=>わからないことを人に聞く
小声(こごえ)で
思い切って=>1 ためらう気持ちを振り切って物事をするさま。決心して。「―秘密を打ち明ける」
木賃宿(きちんやど)=>一般に、粗末な安宿。
旅(たび)は道連れ(みちづれ)世は情け(なさけ)=>旅では道連れのあることが心強く、同じように世を渡るには互いに情けをかけることが大切である。
無造作に(むぞうさ)=>容易く、不用意な=>重い荷物を無造作に持つ。無造作に承諾する。(しょうだく)
一時に(いちどきに)=>一度に
荷物を下ろした。
畳や襖(ふすま)も古びて汚なかった。
手をぶるぶる震わせる(ふるわせる)
ぶるぶる=>寒さや恐怖などのために震えるさま。「怒りにからだを―(と)させる」
震わせる=>震動を与える。震わす「怒りに声を―・せる」
茶托(ちゃたく)
落ちかかる=>落ちそうになる。「壁の絵が―・っている」
あっけにとられた。=>意外な事に出会い、驚きあきれる状態。「突然走り出した彼を―にとられながら見送った」
色気づく(いろけづく)=> 異性に関心をもちはじめる。性に目覚める。「息子もそろそろ―・いてきた」
呆れ果てる(あきれはてる)=>1 すっかりあきれてしまう。「―・てて返す言葉もない」
窮屈(きゅうくつ)な感じを与える
省みる(かえりみる)=>自分のしたことを、もう一度考えてみる。反省する。「わが身を―・みて恥じる」
ふと=>突然=>ふと立ち止る
しげしげ=>何度も=>「その店へ―(と)足を運ぶ」
傍(かたわら)の人
傍(かたわ)らに人無き(なき)が如(ごと)し=>「傍若無人(ぼうじゃくぶじん)そばにだれもいないかのように、わがまま勝手に振る舞うさま。「―如き振る舞い」
幾度(いくど、いくたび)
畔、辺(ほとり)
道のほとり、小川のほとり
顔つき(かおつき)
話ぶり=>話をするときのようす。話のしかた。「あの―では確かだ」
もの‐ずき【物好き/物数奇】
変わったことを好むこと。好奇心が強く、普通と違ったことを好むこと。また、その人や、そのさま。「寒中水泳とは―な人だ」
その人に惚れ(ほれる)
湯から上る。
かえりがけ【帰り掛け】に
帰る途中。帰り道。「―に立ち寄る」ーに買ってきた。
み‐あ・げる【見上げる】
下から上を見る。仰ぎ見る。「夜空を―・げる」
ひき‐かえ・す【引(き)返す】
進んできた道をもとへ戻る。ひっかえす。「途中で―・す」
ほうりあげる【▲放り上げる】
藁屋根(わらやね)
夕暮れ(ゆうぐれ)
山々の姿が遠近(えんきん)を失って白く染まり、前の小川が見る見る黄色く濁って(にごる)音を高めた。
みる‐みる【見る見る】
[副]見ているうちに、ある事が急激に進行するさま。
兼用(けんよう)
かき‐やぶ・る【×掻き破る】つめや刃物などでひっかいて裂く。また、ひっかいて傷つける。「夜中には物置の戸を爪で―・って外へ出ようとした」〈漱石・硝子戸の中〉
雨戸を明けて体を乗り出した。
雨風(あめかぜ)が私の頭を叩いた。
私は眼を閉じて耳を澄まし(すます)ながら、太鼓がどこをどう歩いてここへ来るかを知ろうとした。
叫び声(さけびごえ)
笑い声(わらいごえ)
木賃宿と向かい合った料理屋
女の声は時々稲妻の(いなずま)ように闇夜(やみよ)に鋭く(するどく)通った。
雨の音の底に私は沈み込んでしまった。
~と悩ます
雨戸を閉じて床(とこ)に入っても胸が苦しかった。
湯を荒々しく(あらあらしく)掻き回した。
雨が上がって、月がでた。雨に洗われた秋の夜が冴え冴え(さえざえ)と明るんだ。
裸足(はだし)で湯殿(ゆどの)を抜け出して行ったって、どうでもできないのだと思った。
ぬけ‐だ・す【抜け出す/▽脱け出す】
1 こっそりその場を離れて外へ出る。抜け出る。「宴会を―・す」
こっそり
[副]人に知られないように、ひそかに物事をするさま。
明る朝(あくるあさ)=翌朝(よくあさ)
美しく晴れ渡った南伊豆の小春日和(こはるびより)
はれ‐わた・る【晴(れ)渡る】
すっかり晴れる。「雲一つなく―・った空」
こはる‐びより【小春日‐和】
初冬のいかにも小春らしい穏やかで暖かい日和。
自分にも昨夜の悩ましさが夢のように感じられる。
ばか‐さわぎ【馬鹿騒ぎ】
[名](スル)むやみに騒ぐこと。また、その騒ぎ。大騒ぎ。「酒を飲んで―する」
彼はあまりに何気ない(なにげない)ふうなので、私は黙ってしまった。
なにげ‐な・い【何気無い】
はっきりした考えや意図がなくて行動するさま。また、そのように見えるさま。さりげない。「―・いふうを装う(よそおう)」「―・く近づく」
裸体(らたい)裸(はだか)
真裸(まはだか)裸身(はだかみ)
浮かぶ(うかぶ)
仄暗い(ほのぐらい)=>光が弱くてうす暗い。「―・いろうそく」
脱衣(だつい)
私は心に清水(きよみず)を感じ、ほうっと深い息を吐い(はく)てから、ことこと笑った。
私は朗らかな喜びでことことと笑い続けた。頭が拭(ぬぐ)われたように澄ん(すむ)で来た。微笑(びしょう)がいつまでも止まらなかった。
ほがら‐か【朗らか】
1 心にこだわりがなく、晴れ晴れとして明るいさま。「―な性格」「―に話す」
むすめ‐ざかり【娘盛り】
若い女性として最も美しい年ごろ。
おもい‐ちがい【思い違い】
[名](スル)間違えて思い込むこと。また、その事柄。勘違い。思い違え。「うっかり曜日を―していた」
そわ‐そわ
[副](スル)気持ちや態度が落ち着かないさま。「発表待ちで朝から―する」
順々に(じゅんじゅん)
紙屋は芸人のほうを見向きもせずに、基盤の目を一つ一つ数えてから、ますます注意深くうって行った。
さし【▽止し】
[接尾]動詞の連用形に付いて、その動作が中止の状態になっていること。また、そのような状態のものを表す。「読み―の書物」「吸い―のタバコ」
よし【▽止し】
よすこと。やめること。やめ。「小言はもう―にする」
小言(こごと)=>文句
どうせ
とても眠れそうもなく頭が冴えざえしている。
いさみ‐た・つ【勇み立つ】
[動タ五(四)]勇気を奮い起こし(ふるいおこす)勢いこむ。気負いたつ。奮起する。元気づく。「盛んな声援(せいえん)に選手たちは―・った」
しゅっ‐たつ【出立】
[名](スル)旅に出発すること。「払暁(ふつぎょう)のうちに―する」
あけ‐はな・す【開け放す/明け放す】
窓や戸などを、すっかり開ける。また、開けたままにしておく。「窓を―・す」
めん‐くら・う【面食らう/面喰らう】
突然の事に驚き戸惑う(とまどう)。まごつく。「不意の指名にすっかり―・う」
まご‐つ・く
迷ってうろうろする。うろたえる。まごまごする。「大きな駅で―・く」
つっ‐た・つ【突っ立つ】
立ったまま何もしないでいる。ぼんやりと立つ。「ぼうっと―・っていないで手伝えよ」
寝床(ねどこ)
真赤(まあか)=>真っ赤(まっか)
はたと=>突然
虫の声がはたとやんだ
その考えがはたと思い浮かんだ
唇(くちびる)
眦(まなじり)
滲む(にじむ)=>「包帯に血が―・む」
この情緒的な寝姿(ねすがた)が私の胸を染めた。彼女は眩し(まぶしい)そうにくるりと寝返り(ねがえり)して、手で顔を隠したまま布団を滑り出ると、廊下に座った。
くるり
[副]1 軽く1回転するさま。「―とふり向く」
まご‐つ・く
[動カ五(四)]迷ってうろうろする。平静を失う。うろたえる。まごまごする。「大きな駅で―・く」
私をまごつかせる。
つっ‐ぱな・す【突っ放す】
1、 突いてはなれさせる
2、関係を絶つ
私は突っ放されたように感じた。
つけ‐くわ・える【付(け)加える】=>補足する
前々(まえまえ)から=>ずっと前
拝む(おがむ)
橋の欄干(らんかん)に寄り掛かる
新派役者(しんぱやくしゃ)
芝居(しばい)=>演劇
荷物の風呂敷から刀(かたな)の鞘(さや)が足のように食み出し(はみだす)ていたのだ。
身を誤った果てに落ちぶれてしまった。
落ちぶれる=>社会的地位や生活程度などが悪くなって、惨めな状態になる。
息が絶える
実の妹
体がしっかりしない
おもい‐つ・める〔おもひ‐〕【思い詰める】そのことだけを深く考えて悩む。いちずに思い込む。「―・めた表情」
栄吉(えいきち)はひどく感傷的になって泣き出しそうな顔をしながら、河瀬(かわせ)を見詰め(みつめ)ていた。
かわ‐せ【川瀬】
川底が浅く、流れの速い所。
見詰める=>凝視(ぎょうし)する、じっと見続ける
白粉(おしろい)を洗い落とした踊子が道端に蹲って(うずくまって)犬の頭を撫で(なで)ていた。
喧しい(やかましい)
躊躇う(ためらう)
誤魔化す(ごまかす)=>本心を見やぶられないように、話をそらしたり、でまかせを言ったりして、その場やうわべをとりつくろう。「笑って―・す」「年を―・す」「世間の目を―・す」
五目並べ(ごもくならべ)=>遊戯(ゆうぎ)
造作ない(ぞうさない)=>easy
おおい‐かぶさ・る【覆い被さる】
1 全体を覆うようにかぶさる。「前髪が目に―・る」
2 強い圧迫感をもって身に及んでくる。「責任が―・ってくる」
不自然なほど美しい黒髪(くろかみ)
純朴(じゅんぼく)=>「―な人柄」「地方の―な風習」
唸る(うなる)
謡(うたい)
八百屋(やおや)
鳥屋(とりや)
果たして(はたして)=>おもったとおり
私は読み出すと、彼女は私の肩に触るほど顔を寄せて真剣な表情をしながら、眼をきらきら輝(かがや)かせて一心に私の額(ひたい)をみつめ、瞬き(まばたき)一つしなかった。
二重瞼(ふたえまぶた)
太鼓を提げる(さげる)
後姿(うしろすがた)
太鼓の音は私の心を晴れやかに踊らせた。
晴れやか=>すっきりとして明るいさま。「―な顔つき」
浮き立つ(うきたつ)
1 心楽しく、うきうきして落ち着かない状態になる。「旅行を前にして心が―・つ」
3 周りのものから区別されて、よく目立つ。引き立つ。
にぎりこぶし【握り拳】
掌(てのひら)
ざら‐ざら
[副](スル)
1 小粒で堅いものが触れ合ってたてる音を表す語。「袋が破れて豆が―(と)こぼれる」
水のように透き通った(すきとおった)赤坊(あかぼう)
しみ‐こ・む【染(み)込む/×沁み込む】
1 液体や気体、色などが物の中まで徐々に深くしみる。「味が―・むまで煮る」「においが―・む」
2 心の奥底まで深く入り込み、消し去ることができなくなる。「不信感が―・んでいる」「―・んだ習慣」
あすこ=>あそこ
旅心(たびごころ)をあじわう=>旅行のときの気持ち
世知辛い(せちがらい)=>1 世渡りがむずかしい。暮らしにくい。「―・い世の中」
はにか・む=>恥ずかしがる。恥ずかしそうな表情をする。「―・んで頬を赤らめる」
むっつりする
[副](スル)口数が少なく、愛想のないさま。「始終―(と)している」
夜中(よなか)をすぎる
門口(かどぐち)
旅の空での故郷として懐かしがるような空気の漂った(ただよう)町
出外れる(ではずれる)=>村を出外れると森がある
海の上の朝日が山の腹(はら)を温めていた。
秋空(あきぞら)が晴れ過ぎたためか、日に近い海は春のように霞んでいた。
霞む(かすむ)=>2 霞がかかったような状態になる。ぼんやりして、物の姿や形がはっきり見えなくなる。「雨に―・む街」
見え隠れする(みえかくれ)=>見えたり隠れたりすること。「車窓に―する海岸」
険しい(けわしい)
間道(かんどう)=>主な道から外れた道。⇔本道。
むな‐つき【胸突き】
山坂の道の険しく急な所。
やけ‐はんぶん【自=棄半分】
やけくそになりかかっていること。半分やけになること。半自棄(はんやけ)。
一間(けん)ほど後ろを歩いて、その間隔を縮めようとも伸そう(のす)ともしなかった。
微笑む(ほほえむ)
私が歩き出すまで歩かない。
寄宿舎(きしゅくしゃ)
ぽつりぽつり
彼はぽつりぽつりと身の上話を始めた。
ぽつりぽつりと雨が降り始めた。
枯草(こそう)
腰掛け(こしかけ)=>いす
払う(はらう)=> 〔じゃまなものを取り除く〕
屈む(かがむ)=>しゃがむ
叩く(はたく)=>拍打
叩く(たたく)=>敲
鳥がとまる枝(えだ)の枯葉(こよう)がかさかさ鳴るほど静かだった。
踊子は間もなく黄ばんだ(きばむ)雑木(ぞうき)の間から空しく(むなしく)帰って来た。
き‐ば・む【黄ばむ】
黄色くなる。「木々の葉が―・む」「―・んだ表紙」
唐突(とうとつ)=>突然
唐突に、唐突な発言
見当(けんとう)のつかない話
見当をつける=>推測する
見当が外れる
頂上に辿り着いた(たどりついた)
木陰(こかげ)の岩の間から清水が湧い(わい)ていた。
泉のぐるり=>周り、周囲
私は冷たい水を手に掬って(すくって)飲んだ。女たちは容易(ようい)にそこを離れなかった。
炭焼(すみやき)の煙
路傍(ろぼう)
桃色(ももいろ)の櫛(くし)で犬のむくげを梳い(すい)てやっている。
むく‐げ【×尨毛】
動物の、長くふさふさと垂れた毛。むく。「―の犬」
櫛の歯が折れる
窘める(たしなめる)=>よくない点に対して注意を与える。
一足先に(ひとあしさき)=>わずかな距離。また、わずかな時間。「駅まではもう―だ」「―先に帰宅する」
走って追っかけてきた。
まご‐つ・く
=>迷ってうろうろする。うろたえる。まごまごする。「大きな駅で―・く」
突きつける=>荒々しく凶器などを相手の目の前に差し出す。
竹束(たけたば)
田の畦(あぜ)に背中を打ち付けるように倒れ掛かって…
絶えず=>間断(かんだん)なく、いつも
物言い(ものいい)=>言葉遣い
開けっ放し(あけっぱなし)=> 心の中や物事を包み隠さないこと。ありのままの姿を見せること。また、そのさま。あけっぴろげ。「―な性格」
ぽいと=>無造作に投げる
ところどころ=>あちらこちら
たて‐ふだ【立(て)札】
法度(はっと)・禁制など、人々に知らせたいことを書いて立てた木の札。
もの‐ごい〔‐ごひ〕【物乞い】
[名](スル)他人に物を恵んでくれるように頼むこと。また、その人。乞食(こじき)。
通行人に物乞いをする
物乞いの女
つかえる=> じゃまなものがあったり行きづまったりして、先へ進めない状態になる。
駄目(だめ)を押(お)・す
念のために確かめる。念を押す。「本当にいいのかと―・す」
連中(れんちゅう)=>仲間である者たち。また、同じようなことをする者たちをひとまとめにしていう語。親しみ、あるいは軽蔑(けいべつ)を込めていう
さき‐まわり〔‐まはり〕【先回り】
[名](スル)
1 近道を行くなどして、相手より先に目的地に行くこと。「―して一行の到着を待つ」
2 相手より先に物事をしたり、考えたりすること。「―した言い方」
無頼漢(ぶらいかん)
供える(そなえる)
旅費(りょひ)
強いて(しいて)=>むりに
~に攀じ登る(よじのぼる)
行李(こうり)
せめて=>少なくとも=>at least
ぐったり
[副](スル)疲れたり弱ったりして、力が抜けたさま。ぐたっと。「あまりの暑さに―する」
すがり‐つ・く【×縋り付く】
1 頼りにしてしっかりとつかまる。「泣きながら―・く」
せがむ=>無理に頼む
よそよそしい=>冷淡である
窓敷居(まどしきい)に肘(ひじ)を突いて(つく)、いつまでも夜の町を眺めていた。暗い町だった。遠くから絶えず微かに太鼓の音が聞こえて来るような気がした。訳もなく涙がぽろぽろ落ちた。
朝風(あさかぜ)が冷たかった。
船酔い(ふなよい)する
こくりこくり=>こっくり
1 〔うなずく様子〕子供はこっくりとうなずいた。
み‐こ・む【見込む】
1 あてにする。望みをかける。「君を男と―・んで頼む」
ありさま=>様子
ぽかんと立っている=>ぼんやりする
くくり‐つ・ける【▽括り付ける】ひもなどで他のものに縛りつける。また、比喩的に行動の自由を奪う。「荷物を車の荷台に―・ける」
とお‐ざか・る〔とほ‐〕【遠ざかる】
1 遠くに離れてゆく。遠のく。「足音が―・る」
欄干に凭れて(もたれる)沖の大島を一心に眺めていた。踊子に別れたのは遠い昔であるような気持ちだった。
私はカバンを枕(まくら)にして横たわった(よこ)=>横になる
頭が空っぽ(からっぽ)で時間というものを感じなかった。
ただ清々しい満足の中に静かに眠っているようだった。
清々しい(すがすがしい)1 さわやかで気持ちがいい。「―・い朝の大気」「―・い表情」「―・い行為」
そして少年の学生マントの中に潜り(もぐり)込んだ。私はどんなに親切にされても、それを大変自然に受け入れられるような美しい空虚(くうきょ)な気持ちだった。
私は涙を出任せ(でまかせ)にしていた。頭が澄まんだ水になってしまっていて、それがぽろぽろ零れ、その後には何も残らないような甘い快さ(こころよさ)だった。