今を大切にする、すべての恋人たちへ。

『私の頭の中の消しゴム』

原題[내 머리 속의 지우개]

英題[A Moment to Remember]

(2004年)韓国映画

 

 

<あらすじ>

建設会社の社長令嬢のキム・スジン(ソン・イェジン)は、天真爛漫なお嬢様。建築家志望のチェ・チョルス(チョン・ウソン)とコンビニで運命的な出会いをし、二人はすぐに恋におちてしまった。
温かい家族に囲まれて育ったスジンと違い、チョルスは孤独に生きてきた男だったが、スジンの献身的な愛に結婚することを決意。二人は晴れて新婚生活を迎える。建築士の試験にも受かり、幸せいっぱいの二人だった。
しかし、スジンはある時から物忘れがひどくなり、自分の家への道順すら忘れてしまうようになった。そして病院で、スジンは若年性アルツハイマー症だと診断される――。

 

<スタッフ>

監督・脚本:イ・ジェハン

脚色:キム・ヨンハ

製作:チャ・スンジェ

プロデューサー:キム・サンミン

音楽:キム・テウォン

撮影:イ・ギョンジュ

編集:ハム・ソンウォン

 

<キャスト>

チョン・ウソン(チェ・チョルス)建設現場作業員

ソン・イェジン(キム・スジン)建設会社社長令嬢、服飾デザイナー

ペク・チョンハク(ソ・ヨンミン)服飾デザイン会社室長、スジンの元不倫相手

パク・サンギョ(キム社長)スジンの父、建設会社社長

キム・ヒリョン(スジンの母)スジンの母

ソン・ジヒョン(キム・チョンウン)スジンの妹

キム・ブソン(オ・チョンジャ)チョルスの母

イ・ソンジン(アンナ・チョン)ヨンミンの妻の同級生、スジンの先輩

チャン・イナン(寺大工)チョルスの師匠

クォン・ビョンギル(イ医学博士)医学博士、アルツハイマー研究の第一人者

イ・ジョンイン(看護師)ホスピスの看護師

 

感想

原作は日本のテレビドラマ

『Pure Soul~君が僕を忘れても~』で、

若年性アルツハイマー病を発症して

どんどん記憶を失っていくヒロインを

夫が献身的な愛で支えるラブ・ストーリー。

 

ヒョンビンの映画

『スウィンダラーズ』を観たので次は

ソン・イェジンの映画を観たいなと思い、

次に選んだのが名前だけ聞いたことがあった

『私の頭の中の消しゴム』

今更感があるけどこういう流れでもなければ

おそらく観ないタイプの映画なので。

 

とにかくソン・イェジンさんが可愛い。

この時は21歳くらい?かな、

キャリアウーマンなイメージが強かったので

大笑いするシーンとかの

あどけない笑顔が新鮮に感じた。

そして泣きの演技が上手すぎ。

『愛の不時着』でも何度も泣かされた

あの表情と声と仕草。

自分の病気を知った時の涙はもらい泣き。

 

恋の相手チェ・チョルスを演じた

チョン・ウソン。

最初の印象は無精髭の「怖い男」

ワイルドすぎて近寄りがたいが

実は真面目で優しい性格。

ひったくりから助けてもらったことから

スジンはチョルスが気になり、

恋に不器用なチョルスも

スジンの天然で放っておけないところ、

からかうと面白いところに惹かれていく。

 

2人の結婚を反対するスジンの父に

結婚を認めさせたエピソードは

チョルスのかっこよさが光っていた。

雨の中倒れたスジンに真っ先に駆けより、

抱き上げて戻ってくるんだから。

あんなの見せられたら

この男に娘を任せても大丈夫だなと

そりゃあ納得するしかない。

 

気になる女の子のコップに酒を注いで

「これを飲んだら恋人になる、

飲まなかったら死ぬまで会わない」は

真似した男がいるだろうなぁ。

そしてこの映画、

無性にコカコーラが飲みたくなる。

2人の出会いがコーラなので……。

でもコーラの横取りは

現実ではさすがに一発アウトだろう。

 

評価点数が7点なのは

悪く言えばありきたりなストーリーなので

先に展開が読めてしまうから

想像通りだったのと、

クライマックスのBGMが弱いせいで

思ったほど号泣しなかったのもある。

(感動はしたけど)

先に観た『ハロー!?ゴースト』の

不意打ち伏線回収と比べてしまったせいで

少し物足りないと感じたかな……。

 

 

 

★★★☆☆ 物語の面白さ

 

★★★★☆ 伏線の巧妙さ

☆☆☆☆ どんでん返し

 

笑える度 △

ホラー度 -

エッチ度 -

泣ける度 ◎

 

評価(10点満点)

 7点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ここからネタバレあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1分でわかるネタバレ

<結末>

スジンは自分がアルツハイマーと知り

大切な記憶が失われていくことで

チョルスを傷つけてしまうのが耐えられず

家を出て行ってしまった。

残されたチョルスは必死に捜索をするが

手掛かりは見つからない。

 

そんなある日、

一瞬記憶が戻ったスジンから

最後の手紙が届き、

手紙の消印を頼りにスジンの

入院している病院へ向かうチョルス。

スジンはチョルスを見ても

誰かわからなかったが、

スジンが昔好きだと言っていた

チョルスの髭のローションの匂いに反応する。

 

外出許可をもらってスジンを連れ出すと

コンビニで2人が初めて会った場面を再現。

スジンの家族たちも協力してくれて

スジンが記憶を取り戻した。

チョルスはスジンをドライブに誘い、

今まで照れ臭くて言えなくて

ずっと伝えられなかった言葉を――。

「愛してる」

 

どんでん返し

どんでん返しは無かったが

この映画の魅力はそこにはないので……。

 

伏線解説(★は巧妙なもの)

★①【横取りして飲んだ缶コーラ】

コンビニで缶コーラを買った後、

手ぶらで出て行ってしまい、

あわてて戻ったら缶コーラを持って

店から出てくるチョルスと出会う。

自分のコーラを盗られたと勘違いしたスジンは

そのコーラを横取りして飲み干した。

これがスジンとチョルスの出会い。

  • チョルスがスジンと再会した時にスジンが買ったコーラを横取りして飲み干したことで、お互いにあの時の相手だと認識。徐々に2人は惹かれあうようになる。
  • このコンビニのエピソードがクライマックスで再び登場する。アルツハイマーで過去の記憶を失ったスジンにコンビニで同じシーンを再現。コーラと財布を差し出す店員役をイ博士が演じ、チョルスの師匠やスジンの家族たちも全員で協力して記憶を取り戻す手助けをする

 

【頭をぶつけるイ博士】

アルツハイマーの研究者

イ博士は初登場時に

机の下の配線をいじっていて

スジンが来た時に起き上がろうとして

机に頭をぶつけてしまう。

  • コンビニのコーラと財布を出す店員役をイ博士がやる時に同じように頭をぶつけて伏線回収。これはまったく同じドジをしたのか故意にぶつけたのか不明だが、おそらく博士は来院時の時の記憶も合わせて呼び覚まそうと、わざと机に頭をぶつけたのではないだろうか。その方がイ博士の優しさが伝わる。

 

【ハートの位置当てゲーム】

チョルスが「さあ賭ければ必勝だよ」と

タバコをくわえながらトランプを3枚出して

場所を入れ替えながらハートの位置を

当てさせるゲームを見せる。

  • チョルスが母の借金を肩代わりして気持ちが落ちている時に、くわえていたタバコをスジンが奪って同じハート当てゲームをやってみせる「そこらを歩いている犬でも簡単に当てられるんだ。チョルスはタバコ代、スジンはおかず代、賭けないと損をするぜ。ハートはどれだ?」――チョルスはスジンの気遣いが嬉しくて勝負をせずに抱きしめた。
  • このハート当てはスジンが自分がアルツハイマーと知った後、チョルスにもう1度やってとせがんでやってもらう。チョルスの「賭ければ必勝だ。そこらの犬でも簡単に当てられるよ。スジンはおかず代、チョルスはタバコ代、賭けなきゃ損をする、たった1000ウォンだ。賭ければ必勝、ハートはどれだ?勝負!」――スジンはこの楽しいやりとりも忘れてしまう悲しみに耐えきれず、泣きながら部屋を出て行った。実はこの時チョルスが用意した3枚のカードは全部ハートのAだった……。

 

【髭のアフターシェーブローション】

無精髭を剃ったチョルスが髭剃り跡に

アフターシェーブローションを付ける。

スジンはこの匂いが好きだと言う。

  • スジンに記憶を思い出させるきっかけのアイテムの1つ。チョルスがホスピスでスジンを訪問する際にこのローションをつけて再会した。特定の匂いを嗅ぐと過去の記憶を呼び起こす現象は「プルースト効果」という。

 

【愛してる】

スジンの手紙の中で

「1度も愛してるとは

言ってくれなかったけど、

あなたが私を愛してるのは

ちゃんとわかっています」とあった。

チョルスはスジンを忘れようとせず

行方捜しに必死になる。

  • チョルスがもう1度会って記憶を呼び戻してでも伝えたい言葉が、「愛してる」の一言だった。物語の最後はチョルスの「愛してる」で綺麗に締めている。

 

 

アルツハイマー病の伏線に関しては

上にあるコンビニのコーラ置き忘れ、

父に嫌な過去は忘れろと言われたり、

ボールペンをよく無くしてしまうこと、

私は昔から健忘症がひどいの、

トイレで化粧してバッグ置き忘れ(DC版)、

レストランのトイレから

戻る道がわからなくなる、

ガスコンロの火を消し忘れて風呂に入った、

家への帰り道がわからない、

検査の結果を聞くのに1週間後の来院が

半年後に来院する、など多いが、

どれも伏線というよりも前ふりに近い。

 

欠点や疑問など

  • アルツハイマー病の表現がオーバーに感じる。記憶を失っていく速度も速すぎるように思う。それとなぜスジンが家を出て行く必要があるのか、せめて両親のところに行くならわかるが、旅に出る?のは理解できない。
  • ディレクターズカット版は冒頭に髭を剃った綺麗なチョルスが出てくるから時系列がおかしくなり余計に混乱する。
  • 「撤収」の後、ディレクターズカットではチョルスの母が訪ねて来て金を無心してくる母と一悶着ある。母はここで息子に断られて高利貸しに関わって刑務所に入る重要なシーンだった。カットしたらなんで母は刑務所に入っているのかわからないし、母の印象が薄い。
  • チョルスがイ博士からスジンがアルツハイマーと教えられた後、ディレクターズカット版では続きがある。イ博士がチョルスに「2人が初めて会った場所に連れて行ったら記憶が戻って喜んだ。しかし3時間後にはまた記憶を失った」という話をする。これはチョルスも同じことをする伏線。結構重要だと思うが……。
  • チョルスがセメントを流すか流さないかで会社の偉い人と揉めているが、まずお前あごひもをちゃんと締めなさい。現場で煙草をくわえたり態度が普通じゃない。これで現場監督なのは無理がある。
  • アマプラやNetflixなどの配信サイトの色味が暗すぎる。Blu-rayで観たら全然違って綺麗なのでびっくりした。中盤のチョルスの顔をスジンが笑っている理由がわからなかったが、Blu-rayで観たら顔がスジンのキスマークだらけで笑っていたとやっとわかった。暗すぎて見えねえ。サブスク入ればすぐ観れるとはいえ汚すぎるのでは?
  • アンナの役割がまったくわからない。ヨンミンの今の愛人なの?なんのために出てきたんだ?一応削除されたシーンにアンナと喧嘩するところもあったので、嫌な先輩的な感じにしたかったのかな。
  • チョルスの母の借金9000万ウォンを払ったのなら、母はチョルスにちゃんと恩返しをしないと。同居してスジンの世話をしてくれるのが1番良いのに。
  • スジンは療養所で記憶が戻ってチョルスに手紙を出したが、その手紙の住所や消印から追いかけて来ることは予想していなかったのか?置き手紙を書いたことを忘れていたとか?
  • コンビニのクライマックスのBGMが「赤とんぼ」みたいなやつは弱い。それまでいい場面で流れていたメインBGMの方が良かった。赤とんぼじゃ泣けない。
  • 奇跡的な回復をしたことは喜ばしいが、イ博士の奥さんと同じケースならスジンも結局はまた記憶を失ってしまうと思われるので、この結末はハッピーエンドとも言えずモヤモヤする。

 

名場面・名台詞

スジンがチョルスを親に紹介したいと言うと

チョルスは会いたくないと拒む。

私を愛してるのか心配になるスジン。

スジン「私を愛してないの?愛してるんでしょ?」

チョルス「すぐ冷めるかもしれない」

スジン「愛してるって言うのがそんなに大変?」

チョルス「いい加減にしろ、しつこいぞ。俺なんかとは釣り合わないだろ、お嬢様なんだから」

スジン「1人で生きられると思ってるの?」

チョルス「一緒に生きたら一緒に死ねると思ってるのか?1人で生まれてきて、1人で死ぬ。それが人生だ」

 

スジンが会社の同僚たちに質問をする。

スジン「そうだ、みんなにはこういうことない?毎日通る道が急にわからなくなるって」

ユナ「あんたと一緒にしないでちょうだいよね」

ミョンジュ「ちょっとユナ。あんたも方向音痴よ」

ユナ「少なくとも私は毎日通勤する道で迷ったりしない。そこまでいくとまるで、認知症のあばあさんじゃない」

スジン「この頃……なんだけどね、家までよくわからなくなったりするの。変よね」

 

どうしても母親を許せないチョルスを

それでも家族だからとスジンが説得する。

チョルス「親って何だ!?産んだら親か?産んだら、それだけで親って言うのか!?会ったこともないだろう。知らない女をなんで助ける必要があるんだ!」

 

 荒れて物に八つ当たりするチョルス。それを見て泣いてしまうスジン。

 

チョルス「なにを泣いている?俺はもう泣かない。涙は枯れ果てたね。あの女に捨てられたあの夜、一晩中泣いて泣いて枯れ果てたんだ!あの女のために流す涙はないね。渡す金だって無いんだ」

 

 スジンは泣きながら散らかった物を拾う。

 

スジン「人を許すことは……難しくなんかない。許すってことは、心のなかにある部屋を1つあげること。うちのおじいさんが言った言葉よ。本当の大工は心の家も上手に建てるって。なのにあなたは大事な心の家を、それほど憎いお母さんに居間も台所も全部明け渡して、あなた自身は外でぶるぶる震えてるじゃない」

 

 ガラスで手を切ったチョルスの手をとり、タオルで優しく血を拭くスジン。

 

スジン「そうよね。許すことがつらくて苦しいのはわかる。それでも、おじいさんの言葉通りにして父は許した。不倫相手と逃げようとした愚かな娘を許してくれた。あなたとの結婚もすぐに許してくれたわ。父はわかってたからよ。憎しみに心の部屋を1つ渡せばいいだけだって」

 

病院で検査を受けたスジン。

イ博士は病名を告げる。

イ博士「MRI検査とPETにCTスキャン、すべての結果を分析・総合すると……キム・スジンさんの頭の中には異常なタンパク質が溜まり、沈着している。それが脳細胞を――」

スジン「あの、先生……お話が難しくて意味がよくわかりません。簡単に言っていただけませんか?」

イ博士「おそらく遺伝的な要因が大きく作用したとても珍しいケースだと思われる。たいへん言いにくいが……あなたはアルツハイマー病です」

スジン「……え!?アル……アル……なんです?」

イ博士「アルツハイマー」

スジン「それはなんですか?」

イ博士「前にいろいろ質問したのは認知症かどうか調べるためだった」

スジン「私の歳をご存じですよね?まだ27ですけど……認知症になるには早いでしょ?」

イ博士「早くなることもある」

スジン「じゃあ……これからどうなるんですか?」

イ博士「肉体的な死よりも精神的な死が先に訪れる。とにかく急いで準備した方がいいだろう。薬剤投与で多少は進行を遅らせることもできるが、結局ただの気休めだ」

スジン「あの、でも……しゅ、手術で治すとか?」

イ博士「(答えず煙草に火を点ける)会社勤めかね?」

スジン「はい」

イ博士「早く辞めた方がいい。じきにパソコンが使えなくなり、電話も取れなくなる。書類の整理も無理だ。なにもできなくなってしまうし、家族や友達のこともわからなくなる。自分が誰かさえも……。少しずつそうなって、やがてすべての記憶を失うんだ」

 

スジンの病気がアルツハイマーと知り、

チョルスは消えたスジンを1日中探しまわって

バッティングセンターでやっと再会する。

スジン「……(病気の)話、聞いたでしょ?」

チョルス「……なんの話だ?」

スジン「私の頭の中に、消しゴムがあるってこと。……だから別れて」

チョルス「なにを言ってるんだ」

スジン「あなたが言っていた通りよ。永遠の幸せなんてないわ」

チョルス「なに言い出すんだ」

スジン「なにもかも終わっちゃうの。記憶が消えちゃったらね。今幸せとか愛とか言ったって、なんの意味もなくなる。もう優しくなんかしないで。全部忘れるんだから」

チョルス「俺がかわりに全部覚えてる。俺頭いいから。建築士の試験も受かったし」

スジン「その自信はどこからくるの?人生って怖いものなのよ」

チョルス「……フフッ、その言葉は忘れないのか」

スジン「……忘れるわけないでしょ。ひどいなぁ」

 

チョルス「おれが全部覚えておいてやる。俺がいるから……。全部忘れたら、俺がさっそうと現れる。こんな風に、お前にアタックする。で、絶対おとしてやる。毎日がはじまりになる。すごいだろう。一生恋ができるんだ」

 

チョルスがイ博士に相談する場面。

チョルス「俺のことも忘れてます」

イ博士「そうか、私も同じ思いをした。自分を責めちゃいかん。最近の記憶から消えていくんだよ。……アルツハイマーとはそういう病気だ。患者を責めることもできない」

チョルス「俺の目を見つめながら……昔の男の名を呼んで、愛してるって言うんですよ。本当に愛してるのは誰なのか……。昔の恋人が忘れられないんだ。でしょ?」

イ博士「忘れられないんじゃなく、それは恋人の記憶が残っているだけのことなんだ。愛か……彼女に愛された本人が1番よく知っとるだろう。ん?自分に聞いてみなさい」

 

家に帰ったチョルス。

スジンの姿は無く、

置き手紙だけが残っている。

スジン「ごめんなさい。ごめんなさい。本当にごめんなさい。あなたを苦しめたくはなかったのに、どうしよう。あなた今泣いてるでしょ。あなたが泣くなんて嫌なのに。悲しむ姿を見るのは嫌なのに。あなたに幸せだけをあげたいのに。私が結局、あなたを苦しめたなんて。チョルス、愛するチョルス。どうか誤解しないで。私はあなただけを愛してる。あなただけを思って、あなただけを覚えています。どうすれば伝えられるの。心の中のすべてを見せたい。記憶がちゃんとしている短い時間にこの思いを伝えきれるでしょうか。心が逸ります。――私、キム・スジンはあなたを、チェ・チョルスだけを愛しています。それだけは忘れたくありません。忘れてはいけない。私の心をわかってくれる?私の想いを感じてくれる?記憶がまた消えてしまうのが怖い。この心のすべてを伝えたい。あなたに見せたい。愛してる。ごめんなさい。すぐに忘れるからあなたと出会えたのに、すぐに忘れるからあなたの元を去ります。でもあなたに出会えたのは人生で1番の幸せでした。私にとっては天から届いた1番大切な贈り物。記憶は失ってしまうけど、あなたは私の中に息づいて、あなたのように笑って、あなたのように泣いて、あなたの香りをただよわせてる。記憶を失っても私の中のあなたは決して消えません。1度だって愛してるとは言ってくれなかったけど、ちゃんとわかってます。あなたは私を愛してる。だから、こんなふうにピリオドを打つわがままを許してください」

 

スジンを外出に誘い、

コンビニで初めて会った夜を再現する。

店員役をイ博士がやったり

家族が見守る中、

スジンは記憶を取り戻して……。

スジン「ここは……天国なの?」

チョルス「……ああ」

 

 2人は車でドライブへ。スジンをモデルにした木彫りのレリーフ像を渡してチョルスが言う。

 

チョルス「愛してる」

 

 

>裏旋の映画レビュー倉庫へ