ようこそ、地上600mの絶望へ

『FALL/フォール』

[FALL]

(2022年)アメリカ映画

 

 

 

 

<あらすじ>

山でのフリークライミングの最中に夫・ダンを落下事故で亡くしたベッキー(グレイス・キャロライン・カリー)は、悲しみから抜け出せず1年が経とうとしていた。ある日、ベッキーを立ち直らせようと親友のハンター(ヴァージニア・ガードナー)が新たにクライミングの計画を立てる。今は使われていない地上600mのモンスター級のテレビ塔をターゲットとして選んだ彼女たちは、老朽化で足場が不安定になった梯子を登り続け、なんとか頂上へと到達することに成功するのだが……。

 

<スタッフ>

監督・脚本・製作:スコット・マン

脚本:ジョナサン・フランク

製作:ジェームズ・ハリス

   マーク・レイン

   クリスチャン・マーキュリー

   デヴィッド・ハリング

製作総指揮:ロマン・ヴィアリ

   ジョン・ロング

   ダン・アスマ

音楽:ティム・デスピック

撮影:マクレガー

編集:ロブ・ホール

 

<キャスト>

グレイス・キャロライン・カリー(ベッキー)クライマー

ヴァージニア・ガードナー(ハンター/デンジャーD)クライマー仲間、配信者

メイソン・グッディング(ダン)ベッキーの夫

ジェフリー・ディーン・モーガン(ジェームズ)ベッキーの父

 

感想

地上600メートルの鉄塔に登ったら

ハシゴが壊れて降りられなくなって

頂上に取り残されてしまった

2人の女性の物語。

 

高すぎて電波も届かない、

水も食料も無い、

人も来ない過疎地帯で

陽射しに焼かれながら

ただ時間が過ぎていく。

油断したら即落下――。

足場の狭い鉄塔の上という

ワン・シチュエーション・

サバイバル・スリラー。

 

これ実は

「伏線回収がすごい系」の映画です。

後半のための伏線が

序盤からあちこちに仕掛けてあって

途中から気持ちいいくらい伏線回収する。

しかもミステリ好きを唸らせる

どんでん返しもあります。

NetflixやHuluでも配信が始まったので

是非見てほしい映画。

あまり期待せずに見たけど

これはなかなか掘り出し物だった。

 

ただしこの映画には大きな欠点がある。

こんな高い場所に登る動機の弱さ。

「別に登る必要なくない?」

これに尽きる。

登山家はそこに山があるから登ると言うが

このテレビ塔は登るものじゃあないですし、

俺にはなんでそんな馬鹿みたいに

高いテレビ塔に登るのか理解できません。

 

ゾンビやモンスターに追われて

または地面が水浸しになって

生きるために上へ上へと

仕方なく登るならわかるんですが、

1年前に落下して亡くなった

夫の死を乗り越えるために

クライミングに挑戦するという動機と、

その夫を亡くしたベッキーが

泣きそうなほど嫌がっているのに

無理に連れて行く親友の強引さに呆れて

序盤はかなりイライラしてしまった。

それもあって後半のあの場面で

親友の友情の深さがわかるので

最後に評価を盛り返した印象です。

 

俺は高所恐怖症なので

見てる時はずっと緊張感で

ハラハラしっぱなしでした。

映画だから大丈夫とわかっていても

見ていて力が入ってしまいます。

自分がこの状況だったらどうするか?

みんな考えてしまうでしょう。

無事に降りる方法を考えるか

多少危険でも無茶して降りるか

安全に連絡する方法を考えるかで性格が出そう。

 

この映画の教訓。

遊び半分で危険な場所に行くもんじゃない。

もしも行く場合は

ちゃんとどこへ行くか連絡しておくこと。

あとこれを観た後、

なにかやばいことがあったら

ホーリーシット!って言いたくなります。

 

ストーリーには共感できないところもあったが

シチュエーションの面白さは魅力だし

伏線回収の勉強にもなるので

見ておいて損はないと思います。

 

 

☆☆☆☆☆ 犯人の意外性

☆☆☆☆☆ 犯行トリック

★★☆☆☆ 物語の面白さ

★★★★★ 伏線の巧妙さ

★★★★☆ どんでん返し

 

笑える度 -

ホラー度 〇

エッチ度 -

泣ける度 〇

 

評価(10点満点)

 8点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ここからネタバレあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1分でわかるネタバレ

<事件概要>

日付:夏

場所:B67テレビ塔

 

○被害者 ---●犯人 -----動機【死因:凶器】

ハンター ---●なし ---事故【転落死:テレビ塔のアンテナ】

 

<結末>

塔に登って3日目、

最後の連絡手段として

ベッキーは自分のスマホを

ハンターの靴に入れて落下させるために

彼女から靴を借りようとする。

ハンターはそうしたくてもできない、

なぜなら自分の体はここにはない、

「下」にあるからとベッキーに教えた。

 

実はハンターは2日目の落下時に

本当はロープを掴めなくて

アンテナ部分に落下し

側頭部を強打して死亡していた。

現実を認めることができないベッキーは

ハンターが生きていてほしい願望から

幻のハンターと会話していたのだ。

 

もう自分が生き残るしかないと

決意したベッキーはハゲワシを食料にし

ハンターの死体まで降りると、

靴に入れた自分のスマホを

ハゲワシに食われて開いた

ハンターの死体に埋め込んで

死体ごと落下させた。

そのSOSが届いて

ベッキーは無事に救助され、

駆けつけた父と抱擁する。

 

 

どんでん返し

 

この映画のどんでん返しは

3日目にやってくる。

ドローン作戦も失敗し

ベッキーは自分のスマホを落下させて

もう1度メッセージを送るしかないと思い、

傍らのハンターに

その残った靴を貸してほしいと頼む。

しかしハンターは

「貸せない。ここにはないから」と答えた。

 

ベッキー「履いてるじゃない」

ハンター「そう。でも私は……下にいる」

振り向いたハンターの

右側頭部から血が滴っていた。

ハンター「忘れた?

あの時、私は落下した。

あんたに靴は貸せない。

だって私はリュックを掴めず、死んだからよ

 

そう……。

ハンターはすでに死んでいた

2日目のリュックを取りに降りた時に

リュックをロープに繋いで

ロープを登ろうとしたハンターは

足を滑らして落下した。

その際にリュックの上に落ちたと思われたが

実際はアンテナの上に落下して

側頭部を打って即死していたのだ。

 

実際のところ

ベッキーは死体を目視はしたはずだが

助かってほしいというベッキーの願望が

ハンターの死体をなかったことにして

ハンターの幻覚を生み出してしまい、

その後もまるで生きているように会話していた。

一種の錯乱状態です。

そうしなければ彼女の心が持たなかったからだ。

 

このような幻覚を生み出したのは

ベッキーがハンターに

そばにいてほしいと願っていたから。

 ↓

【「私はずっとあんたのそばについてる」】

この塔に登る前

ハンターはこう言った。

「あんたも負けちゃ駄目。

恐怖心なんかぶっ飛ばしてやれ。

私はずっとあんたのそばについてる

  • ベッキーが引き上げた時にもハンターは「あんたを1人にはしない」と言った。ベッキーのくじけそうな心を支えるため、ハンターは死んでもそばにいてくれた
  • 2日目の夜にベッキーはハゲワシに襲われる悪夢を見たがそこで②ハゲワシに食われているハンターの死体が登場したのは実際の死体を見てしまったことを裏付けている。

 

どんでん返しを見抜く

伏線として優秀なのがこれ。

 ↓

★③【落下したリュックを取らない】

ベッキーが塔の先端に登っている時に

ハゲワシの攻撃を払ってリュックが落ちた。

リュックはハンターの目の前を

落下していったが

手を伸ばそうともしないで見送った。

ハンターは下から応援するだけだったので

降りてきたベッキーに

「リュックを拾えたはず」と責められる。

  • ハンターはすでに死んでいるためリュックを拾うことはできなかった。あくまでもベッキーの想像によるハンターの幻なので、物理的に物を触ることは不可能。理由がわかってからなぜ見送ったのかわかると鳥肌。

 

その他にも――。

【ドンッという衝撃音】

ハンターが落下した時に

「ドンッ!」という衝撃音がして

ベッキーが恐る恐る下を見ると

ハンターがリュックの上で助かっていた。

  • リュックの上に落ちたにしては音がおかしい。痛そうな鈍い音だった。俺も最初はアンテナに落ちたと思ったが、助かっていたので「あれ?」と感じつつも、そのまま何事も無く進んでいたので流してしまった。まさか映像(叙述)トリックだったとは……。

 

【なぜベッキー1人でも引き上げられたのか?】

ハンターがリュックで助かった後、

ハンターがロープを登れなくなったので

ベッキー1人で頑張って

ハンターを引っ張り上げた。

  • 人間1人とリュックを狭い足場で、しかも足を負傷したベッキーが1人で引っ張り上げるのは常識的に考えて難しいだろう。それまでに③腕の力だけでクライミングしてみせたり、彼女達にはそういうパワーと技術があるのだと思い込ませているから謎の説得力が生まれている。実際にはリュックだけを引っ張り上げたのであるから納得できる。

 

【飲み物に口をつけないハンター】

助かってからのハンターは

飲み物を差し出されても

「貴重な水よ」と言って

口をつけるのを断った。

  • これも死んでいるので飲めないから。死んでからのハンターは物理的に干渉する行動を一切とらなくなっている。唯一ベッキーに触っているが、ベッキー自身が触られていると思っているため気づいていないようだ。

 

【ハゲワシの逆襲】

テレビ塔に向かう途中で

動物の死体に集る

ハゲワシを追い払った。

  • 追い払ったハゲワシに逆襲される伏線であり、⑧【なぜハゲワシがここに現れたか】という理由がハンターの死を見抜く伏線にもなっている。ハゲワシは死肉を食べる鳥で、いくらベッキーの足の怪我がひどく化膿して出血していても、そこまでして生きている人間を攻撃するとは思えない。つまり他に死体がある。「ハゲワシがいる=死体がある」ことを示唆している。その死体はハンターの死体だ。
  • そして④ベッキーの足の怪我自体がハゲワシがここに現れた違和感を隠すミスリードになっている。ベッキーが出血していなかったら何を目的にハゲワシがやってきたのかと観客は考えてしまうでしょう。

 

【Warrant「Cherry Pie」】

冒頭でハンターから

ベッキーに電話がかかる。

ベッキーはハンターの着信音を

Warrantの「Cherry Pie」にしていた。

  • テレビ塔の先端に登っていくベッキーを励ますためにハンターがこの曲を歌う
  • もしかしたらこれもハンターの死を示唆する伏線?この曲はベッキーのスマホの中のハンター用の着信音。ポールダンスの時のBGMやハンターが好きでよく歌っていた曲だったのかもしれないが、ここでこの歌をハンターに歌わせるのは、着信音にしているベッキーだからこその発想ではないだろうか。

 

同じ種類の伏線として――。

【WWEのプロレス知識】

ベッキーと父はプロレス好きで

よくWWEの話をしていた。

ハンターにWWEの

好きなレスラーを聞かれて

思い出せない覆面レスラーの名前を

ハンターが代わりに答えた

ハンターはプロレスを

見たことがなかったらしい。

  • ベッキーの知識が作った幻のハンターなので、本当のハンターがやりそうにない行動をすることで実は本物は死んでいるという伏線。

 

 

どうやって脱出したのか?

 

この危機的状況で

ベッキーだけが生存することができた。

その方法とは――?

 

SOSメッセージを送信した状態のスマホを

塔の下に落下させる方法だった。

最初にこれをやったのは

降りられなくなった1日目に試みている。

この時はハンターのスマホを使った。

 

【スマホを緩衝材で守る】

ハンターの片方のスニーカーの中に

緩衝材の替わりに靴下とブラジャーを詰めて

塔の下に落下させた。

スマホが無事なら電波が入った時点で

遅れてメッセージが投稿されるはずだが

残念ながらスマホが衝撃に

耐えられなくて壊れてしまった。

もちろん助けは来なかったし

下の通行人も気づいてくれなかった。

 

そして4日目。

ベッキーはハンターの死を知ってしまい

一時は生きる気力を失ったかにみえたが、

捕食に来たハゲワシを捕まえて

その肉を食べて生気を取り戻し

もう1度スマホを落として

助けを求めることを決意。

これが最後のチャンスだ。

もう失敗はできない。

 

ハゲワシは塔の上での

貴重な食料になったが、

もう1つ重要な役割を果たす。

ハンターの死体から

もう片方のスニーカーを外し、

スマホを中に入れて、

ハゲワシが食ったハンターの腹の穴に

スマホ入りスニーカーを突っ込んで

ハンターの死体自体を緩衝材にして落下させた

  • 1度目の失敗から学ぶ伏線回収。前よりももっと衝撃を吸収するもので保護すれば良いという発想です。しかもハゲワシが穴を開けてくれたからこの方法が可能になったというのもポイント。
  • ちなみに⑫塔の下の通行人を足止めしようとしてベッキーが自分の靴を投げたが、これは最終局面でベッキーのスニーカーが使えないようにするためだろう。

 

死体を落としたことで

何気ない会話も伏線回収になっている。

★⑬【落下しながら通報して】

1日目の夜、

ハンターが冗談半分でこう提案する。

塔から落ちる時はスマホを持って

途中で通報すること。

あと動画の投稿も。なんてね」

  • スマホを持ったハンターの死体が落下しながら通報したからベッキーは助かった。嘘から出た実の伏線回収パターン。題名が『FALL』なので、落下することが脱出に繋がるのはタイトル通りで納得。

 

こうしてスマホが無事に落下して

メッセージを受け取った父親が

警察に連絡して

救助してもらうことができた。

ある意味では……、

いや確実に、

ハンターが命の恩人だった。

最後にハンターがベッキーを救ったのだ。

 

伏線解説(★は巧妙なもの)

その他にも細かい伏線が

たくさん張ってある。

 

【ポールダンス】

ハンターが撮影した過去の映像に

ベッキーがポールダンスを

踊っているものがあった。

ハンターは「あんた最高だった。

あのベッキーをまた見たい」と褒める。

  • ベッキーがポールダンスの要領で細い棒を器用に登っていくための伏線。

 

【充電器の裏ワザ】

モーテルの食堂でハンターから

ランプから充電する裏ワザを教えてもらう。

ランプを外してソケットの金具に

直接プラグをさして充電する方法だ。

  • バッテリー切れのドローンを充電するときにこのやり方を使用。塔の先端のランプを外してソケットに電源コードのプラグを差し込んだ。その際、長さが足りなくて⑯外した結婚指輪を使って延長する。もう必要無いと思ったものが意外なところで必要になる伏線回収。

 

物語の中で実はハンターが

ダンと浮気をしていたことがわかり

2人の仲がギクシャクする場面がある。

 ↓

【ハンターの写真に写る誰かの手】

ハンターのスマホの画像の中に

幸せそうな笑顔のハンターがいて

その後ろに人の手が写っていた。

ベッキーが「誰なの?」と聞いたら

ハンターは「忘れた。返して」

とはぐらかしていた。

  • ハンターの過去に彼氏らしき人物がいたことがわかる。まさかその人物がダンだったとはこの時点では夢にも思わない……。

 ↓↓

【143】

ベッキーとダンの部屋のコルクボードに

「143」と書いた紙が貼ってある。

「143」とはダンが素直に「愛してる」と

言葉で言うのは恥ずかしいから

アルファベットの数で表現した

2人だけの暗号のようなもの。

  • これは2人しか知らない秘密の暗号であることが重要。「I(1) love(4) you(3)」という意味。

 ↓↓↓

【ハンターの足に「143」】

ハンターが自分のスマホを

スニーカーに入れて落下させたため

左足が裸足になった。

よく見たらかかとの内側に

「143」とタトゥーが入れてある。

  • 意味も無く143という数字のタトゥーを入れるはずがない。「143」が「愛してるの」の意味なら、それを暗号にしている人物はベッキーがよく知っている人物……ダンしかいない。ダンとハンターが不倫をしていたことを確信した。

 

★⑳【急に横切るトラック】

ベッキーたちが塔へ向かって

車を走らせている時、

動画の撮影に夢中になっていて

前を見てなかったため、

丁字路で横切るトラックに

あわや衝突しそうになった。

  • ここではぶつからずに助かったが、終盤のドローンで助けを求めて飛行している時に急に横切ったトラックに今度は本当にぶつかって望みが絶たれる伏線回収。
  • このトラックが運転席(キャビン)だけだったから助かった。ドローンがぶつかった時は、後ろのボディに荷台が付いていたせいで失敗してしまったのだ。

 

【自撮り棒】

ハンターは動画撮影に

自撮り棒を使って

自分達を撮影していて、

塔に登る時にリュックにしまった。

  • Vlogを撮影する配信者なら必須アイテム自撮り棒。これが長さの届かないロープの先の輪っかを引っ張る時に役立った。

 

欠点や疑問など

  • 上の感想にも書いたが、鉄塔に登る動機が弱すぎる。
  • 約1年も傷心を引きずっているのは長過ぎでは。それほどまで夫を愛していたのに不倫していたとわかったら急に冷めて、今度はパパ愛してるになるのは極端。
  • 1年も留守電サービスが生きているのは毎月電話代を引き落とされているのだろうか。と思うともったいなく感じる。
  • 嫌がるベッキーを無理に連れて行こうとする親友ハンターが、これ絶対登る途中でベッキー殺そうとしてる裏切り者に思えて仕方なかった。
  • そのハンターが犠牲になったのは自業自得とも思えるが、やっぱり後味が悪い。
  • アンテナに飛び移ったハンターがロープに手を伸ばしたが、ベッキーそのまま見てないで掴みやすいようにロープの位置を右に動かしてやれよと思った。
  • ハゲワシを生で食うのはやりすぎ感がある。死肉を食ってるので寄生虫がいるかもしれないから後で病気になりそう。それにナイフでもあればわかるが指で引き裂いてとか無茶すぎる。
  • ラストの救助方法がほぼ同じやり方なのはイマイチ。最初は靴で2回目は死体にスマホを詰めたが、人間も内臓が破裂したり骨が折れるのだからそんなに衝撃変わらないと思う。そもそも1回目の落下中に電波が入らなかったのが不思議。
  • ドローンに発信中のスマホを乗せて電波が入るところまで降下すればいいだけ。1日目にドローンの入ったリュックをアンテナに落としてしまうが、ハンターがアンテナに降りた時か、ベッキーがリュックを引き上げた後はいつでもドローンが使えたのに。
  • 先端の電球を外して光らないようにすれば周りの住民が不審に思う。3日目の夜は光らなかったのに誰も来なかったが、1日目からやれば気づく確率も上がった。
  • 救助した場面が無い。おそらくヘリで救助したのだとは思うがアンテナの不安定な足場だし、近づくとヘリのプロペラが鉄塔に当たりそうで、救助する方も命懸け。かなり難易度が高い。

 

名場面・名台詞

転落死した夫ダンのことが

忘れられないベッキーに

ダンはそれほど善人ではなかったと

忠告する父親ジェームズ。

ジェームズ「ひとつ聞いてもいいか?もし立場が逆であの日落ちたのがお前だったら……ダンもこんな場所で1人寂しくそうやって酒に溺れて悲しみに暮れていたと思うか?」

ベッキー「……」

ジェームズ「きっと違った。よくわかってるはずだ。頼むからしっかりしてくれ」

ベッキー「そっちこそ頼むから、私のことはほっといて!」

 

ハンターと一緒にテレビ塔に登って

頂上でダンの遺灰を撒こうと言われて

ベッキーは一度は拒否したが

翌朝考え直して一緒に行くことにした。

ベッキー「“死ぬのが怖くても生きるのを恐れるな”。ダンはそう言ってた。……やろう。あの鉄塔に登るの、付き合うよ」

ハンター「うぅ~!やったぁ、嬉しい~!わくわくする~」

 

塔に登る直前になって

怖じ気づくベッキーを励ますハンター。

ハンター「ダンが死んだ後、自分の影が怖かった。でも乗り越えた。私は恐怖心を克服したの。あんたも負けちゃ駄目。恐怖心なんかぶっ飛ばしてやれ。打ち勝てたら怖いものなしよ。私はずっとあんたのそばについてる。あんた本当は強いんだから、つべこべ言わずやってみようよ」

 

塔の頂上でダンとお別れをする。

ベッキー「私たちはひとつだった。笑いが必要な時、冗談を言ってくれたよね。泣きたい時はいつだって慰めてくれた。あなたがいなくなって心に穴が開いてる。あなたが恋しくて会いたくてたまらない。愛してる。さよなら、ダン」

 そう言って遺灰を撒くベッキー。ハンターも涙を浮かべていた。

 

塔の上から帰れなくなって

ヤケクソになって動画撮影中、

どうして動画を撮るのか聞かれて

急に真面目に語り出すハンター。

ハンター「バカげてるかもしれないけど……ダンを失ったせい」

ベッキー「……」

ハンター「気づいたんだ。人生は儚いものだって。多くの人に伝えたい。人生はすごく短いから、噛みしめて生きるべきだし、一瞬一瞬を大切にしなきゃ駄目だって……」

ベッキー「……今の、感動した。やっぱ自然体がいい。だって心に響いた。ものすごく」

 

ベッキーはハンターの足に

「143」のタトゥーがあることに気づく。

ハンター「……どうかした?」

ベッキー「ダンは愛してるって言えなかった。代わりに数字で……143」

ハンター「ベッキー、私……」

ベッキー「ずっと?」

ハンター「……4ヶ月。……でも間違ってた。本当にごめん。心から悪いと思ってる」

ベッキー「不倫のこと?それとも私にバレたことが?」

ハンター「同じ人を愛したことだよ」

 

絶体絶命の状況に

焦るベッキーをハンターが励ます。

ベッキー「どうしよう……」

ハンター「パニックは禁物だよ。落ち着かなくちゃ。大丈夫、なにか方法がある」

ベッキー「私たち、死ぬの?」

ハンター「死なない。絶対に助かる」

 

ベッキーがスマホの写真を見る。

父の姿を見て悲しくなる。

ベッキー「パパは最初からダンのことを見抜いてたのに、私パパにひどいことを……。もし誰かに連絡できるならパパに伝えたい。“本当にごめんなさい。大好きよ”って」

 

3日目、

心身ともに限界が来ている。

もう一度スマホを落下させて

通信に賭けようと言うベッキー。

ベッキー「メッセージを投稿しよう。今度こそスマホを保護する」

ハンター「どうやって?」

ベッキー「靴貸して」

ハンター「貸せない」

ベッキー「なんで?」

ハンター「ここにはないから」

ベッキー「……え?」

ハンター「……下にある」

ベッキー「履いてるじゃない」

ハンター「そう。……でも、私は、下にいる。(振り向いたハンターの右側頭部は血まみれだった)忘れた?」

ベッキー「……あぁ」

ハンター「あの時、私は落下した。あんたに靴は貸せない。だって私はリュックを掴めず、死んだから……」

 

 すべてを思い出したベッキーが震え出す。

 

ハンター「その細い体で私を引き上げるのは無理でしょ。……(引き上げたのは)リュックだけだった。あんたは恐怖のあまり、現実を受け入れられず幻覚を見ていたの」

 

救助されたベッキーが

父に抱きつく。

ベッキー「パパごめんなさい。大好きよ」

ジェームズ「もういいんだ。よかった。お前が無事でよかった」

ベッキー「心配しないで、大丈夫だから。もう平気」

ジェームズ「さあ帰ろう」

 

ハンターの声のナレーション「人生は儚い。人生は短い。すごく短い。だから一瞬一瞬を大切にして人生を噛みしめて生きるべきだ。その生き様が人生の尊さを伝えることになるから――」

 

好事家のためのトリックノートトリック分類表

 

7-B、言語「暗号トリック」換字式[代用法]

●単一形式

 〇一般方式「複数型」

【アルファベットの数】

単語を形成しているアルファベットの数で換字する。「I love you」と伝える場合「1・4・3」となる。ただしこれは膨大なパターンがあるため本格的な暗号には向かない。

 

9-A、その他「特殊トリック」

●サバイバルトリック

 〇高所から降りられなくなった時のSOS

【スマホを死体で保護して落下】

SOSメッセージを送信したスマホ入りスニーカーを、死体の体内に埋めて落下させて死体を緩衝材に使う。

 

9-B、その他「叙述トリック」

●生死誤認

【途中で生→死】

実際には転落死した人物が助かって生きていたように描写。途中から主人公の妄想が混ざっていた。

 

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