驚愕のタイムリープ・サイコホラー!

『ラストナイト・イン・ソーホー』

[Last Night In Soho]

(2021年)イギリス映画

 

 

 

 

<あらすじ>

ファンションデザイナーを夢見るエロイーズ・ターナー(トーマシン・マッケンジー)は、ロンドンのデザイン学校に入学する。しかし同級生たちとの寮生活に馴染めず、ソーホー地区の片隅で独り暮らしを始めることに……。新居のアパートで眠りにつくと、夢の中で60年代のソーホーにいた。そこで歌手を夢見る魅惑的なサンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)に出会うと、身体も感覚も彼女とシンクロしていく。夢の中の体験が現実にも影響を与え、充実した毎日を送れるようになったエロイーズは、毎夜タイムリープを繰り返していく。

だがある日、夢の中でサンディが殺されるのを目撃してしまう。その日を境に現実で謎の亡霊が現れ始め、徐々に精神を蝕まれるエロイーズ。そんな中、サンディを殺した殺人鬼が現代にも生きている可能性に気づき、エロイーズはたった一人で事件の真相を追いかけるのだが――。

 

<スタッフ>

監督:エドガー・ライト

脚本:エドガー:ライト

   クリスティ・ウィルソン=ケアンズ

原案:エドガー・ライト

製作:ティム・ビーヴァン

   エリック・フェルナー

   ナイラ・パーク

   エドガー・ライト

音楽:スティーヴン・プライス

撮影:チョン・ジョンフン

編集:ポール・マクリス

 

 

<キャスト>

トーマシン・マッケンジー(エロイーズ・ターナー)デザイン学校の生徒

アニャ・テイラー=ジョイ(サンディ)歌手志望の女性

マット・スミス(ジャック)ナイトクラブのまとめ役

ダイアナ・リグ(ミス・コリンズ)下宿先の女主人

リタ・トゥシンハム(ペギー・ターナー)エロイーズの祖母

テレンス・スタンプ(リンジー)元警官

ポール・ブリッジウェル(カビー)クラブの客

サム・クラフリン(クラブの客)クラブの客

マイケル・アジャオ(ジョン)エロイーズの恋人

シノーヴェ・カールセン(ジョカスタ)エロイーズのルームメイト

マーガレット・ノーラン(セイジ・バーメイド)地下バーのバーテンダーメイド

ポーリン・マクリン(キャロル・テイラー)パブ「The Toucan」のオーナー

ジェシー・メイ・リー(ララ・チャン)ジョカスタの取り巻き

リサ・マクグリリス(女性警官)女性警官

ジェームズ・フェルプス(「カフェ・ド・パリ」のクローク係)<二人一役>

オリバー・フェルプス(「カフェ・ド・パリ」のクローク係)<二人一役>

コリン・メイスン(タクシードライバー)ロンドンのタクシードライバー

ベス・シング(シラ・ブラック)人気歌手

 

感想

ファッションデザイナーを夢見て

ロンドンの専門学校に入学したものの、

都会に馴染めず孤独なエロイーズは、

引っ越したソーホーのアパートで眠ると

1960年代のロンドンで生きる

サンディという女性の身体に

意識が入り込む不思議な体験をする。

サンディは歌手になりたいとナイトクラブで

ジャックというまとめ役に取り入るが、

売れるためにはみんなやっていると

娼婦まがいの接客をやらされて苦しみ、

抵抗したサンディはナイフで刺されてしまう。

それを目撃したエロイーズは

やがて眠っていない現実世界でも

亡霊のような男たちに襲われたり

血まみれのサンディの姿を見るようになる。

――というサスペンス・ホラー映画。

 

本作のタイトルはイギリスのバンド

「デイヴ・ディー・グループ」の

1968年発表のシングル曲

「ソーホーの夜」の原題である

「Last Night in Soho」から。

 

主演のエロイーズ役の女優さん

トーマシン・マッケンジーが

めちゃくちゃ可愛い。

 

最初の真ん中分けロングから

サンディの真似をして金髪にして

印象ががらりと変わった。

2000年生まれの若手女優で

この映画の撮影時が18歳。

 

もう1人のヒロイン、

60年代に生きるサンディを演じた

アニャ・テイラー=ジョイ。

まったく知らなかったけど

『ウィッチ』『スプリット』や

『クイーンズ・ギャンビット』で

大人気の女優さんだそうで。

 

現代と過去のヒロイン2人が入れ替わる

幻想的なダンスシーンが見どころ。

実は本当に2人がタイミングを会わせて

カメラの死角から交替していたという。

鏡のシーンも実際は鏡がなくて

奥に反転したセットの部屋を作り

トーマシンとアニャが息を合わせて

同じに見える演技をしていたり、

先に1人で撮影した鏡の中の映像を

後で加工してそれらしく見せている。

メイキングに舞台裏の映像もあります。

 

撮影は2019年だったが

コロナ禍で公開が延びてしまい

その間に出演者2人、

ダイアナ・リグと

マーガレット・ノーランが亡くなって

これが遺作になってしまったとか。

ついでに言うと

Wikipediaのマーガレットの役が

トゥーカンのオーナーになってるが

正しくは昔の地下バーのバーメイド。

(一瞬しか出番がない)

現在のトゥーカンのオーナー役は

ポーリン・マクリンです。

 

『恋のダウンタウン』

『Wade in the Water』

『ダンス天国』『愛なき世界』とか

懐かしい60年代の洋楽が

たくさん流れるので

こういうのが好きな人は必見。

俺も映画観た後で検索して

このどこかで聞いたことあるメロディー

こういう曲名だったのかと

別のスッキリ感がありました。

 

しかしストーリーは

個人的には中盤まで結構退屈だった。

主人公の「能力」が説明不足で

なんで過去に意識が飛ぶのか

現実と過去がどういう状態で

周りに見えているのかまったくわからない。

母がどういう役割なのかも不明のまま。

この前観た『ジェイコブス・ラダー』みたいな

夢と現実の狭間のような悪夢が

見えるのが自分だけなので1人で悩み、

誰も手助けできないのが辛かった。

 

終盤のどんでん返しで

「なるほどそういうことか」と

すべてが繋がる面白さはあったので

そこは評価できる。

もっともミステリー好きには

イージーだと思う。

本編の後でメイキングや

オーディオコメンタリーを見たら

気づかなかった細かい伏線が張ってあって

評価が上昇した。

 

ホラーもサイコもミステリーも

SFもファンタジーも

ほどよい塩梅でミックス。

60年代ロンドンのショービズ界の

暗部にメスを入れた意欲作だろう。

気になる方はこの先のネタバレを見ずに

また誰かにネタバレされる前に見てください。

 

 

★★★★☆ 犯人の意外性

★★★☆☆ 犯行トリック

★★★☆☆ 物語の面白さ

★★★★★ 伏線の巧妙さ

★★★★☆ どんでん返し

 

笑える度 -

ホラー度 ◎

エッチ度 △

泣ける度 △

 

評価(10点満点)

 8点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ここからネタバレあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1分でわかるネタバレ

○被害者 ---●犯人 -----動機【凶器】

リンジー ---●車の運転手 ---事故【衝突死:車】

「サンディ」アレクサンドラ・コリンズ ---●なし ---自殺【焼死:火事】

 

<過去の殺人>

ジャック ---●「サンディ」アレクサンドラ・コリンズ ---憎悪、障害の除去【刺殺:ナイフ】

※過去の幻影ではジャックがサンディを襲って殺しているように見せているが、実際はサンディがジャックを殺害。

クラブの客たち ---●「サンディ」アレクサンドラ・コリンズ ---憎悪、障害の除去【刺殺:ナイフ】

 

<結末>

エロイーズはサンディを殺した犯人

ジャックらしき老人を問い詰めたが

間もなくその男は交通事故で死亡してしまう。

しかも彼はジャックではなく

リンジーという元警官だった。

 

手掛りも自信も喪失したエロイーズは

もうロンドンを離れようと思い、

下宿のオーナー・コリンズに相談。

そこでコリンズの正体がサンディで、

襲いかかって来たジャックや客たちを

逆に殺した殺人犯だと判明する。

エロイーズはさっき飲んだお茶に

睡眠薬を盛られて身体が動かなくなり、

助けに駆けつけたジョンも

コリンズに腹を刺されてしまう。

 

落ちたタバコで一階が火事になり、

逃げ込んだ屋根裏部屋でサンディの過去と

向き合ったエロイーズは彼女に同情し

サンディを許して抱きしめる。

自らの罪を認めたコリンズは

逃げようとせず死を選び

崩れゆく建物と炎の中で最後を迎えた。

エロイーズはジョンを連れて脱出。

 

その後エロイーズは

60年代のファッションを現代にアレンジして

クラスの発表会で注目を集める。

鏡の中を覗くと死んだ母親と

サンディが見守ってくれるのだった。

 

どんでん返し

ジャックに殺されたと思われた

サンディは生きている。

アパートの家主ミス・コリンズが

アレクサンドラ・コリンズ

60年後のサンディだった。

 

エロイーズが見た

サンディが刺される幻影は逆で

襲って来たジャックが返り討ちで殺されて、

それから売春目的でやって来た

クラブ客たちもサンディの部屋で殺された。

彼らの顔がのっぺらぼうなのは

サンディが早く忘れたいという思いからで

それがそのままエロイーズに視えている。

彼らは救いをもとめており

「助けてくれ」とエロイーズに訴えていた。

彼らの方が被害者だったのだ。

 

 

年老いたジャックと思われた

白髪の老人はミスリードキャラ。

「この界隈の女性のことなら

なんでも知っている」と言うから

まとめ役のジャックかと思わされるが

実は風俗取締班の警官だから詳しかった。

 

最大のミスリードなのが

本当は生きているサンディが

死んだジャックやクラブ客と同じく

エロイーズに視えること。

だから殺されたと思ってしまう。

 

これについてはこちらの記事を参照。

 

俺もこの記事と同じ意見。

サンディは、歌手になるという夢を男性の欲望によって打ち砕かれた。エロイーズが間借りしていた部屋で、彼女は夜な夜な陵辱されていた。サンディの魂は、その時点で“死んでしまった”のだろう。彼女はサンディの名前を捨てて、本名のアレクサンドラに戻る。そして部屋の床に遺棄した大量の死体が発見されないように、自らアパートの管理人となり、本来抱いていた夢とは異なる人生を歩み始めた。

男たちに性の捌け口にされたサンディは

もう死んだも同じ、

いや死んでしまいたいと考えて

「サンディ」の存在を抹殺し、

「アレクサンドラ・コリンズ」として

彼女はその後を生きたのだろう。

 

エロイーズがジョンを連れ込んだ夜に視た

「サンディがナイフで刺される映像」

あの殺人シーンを何度も見直したが

ナイフの動きは「上から下」で

静止して確認すると刃先が下を向いていた。

コリンズの回想にあるような

下から上への攻撃ではない。

つまり我々が見た映像は

ミスリードのための嘘の映像だった。

 

しかし俺はこのミスリードは納得できる。

元々の「サンディ」自体が妄想なら

これもエロイーズの作った妄想。

妄想で嘘をついても反則ではないと解釈した。

ドラマの中で役者が死んでも

現実には死んでないよってのと同じ。

サンディは実在しない

フィクション(作り物)だから。

 

それとこの時のエロイーズの

精神状態も影響していたと思う。

寝ると悪夢を見るから寝不足だったし、

急に幻覚が現れてパニック状態に陥り

ナイフの刃とサンディの返り血だけ見てて

大きく全体像が見えていなかったから

サンディが殺される妄想を作って

勘違いしてしまったのだろう。

 

伏線解説(★は巧妙なもの)

【コーラの缶の文字】

寮の相部屋でルームメイトのジョカスタが

冷蔵庫の中身に自分の名前を書いていた。

エロイーズの買ってきたコーラの缶に

「ELLIE」と名前を書いておいた

ジョンが間違って飲んでしまう。

  • 後でジョンがコーラを替わりに買って返してくれた時に、缶に「SORRY」と書いてあった。2人が親密になるきっかけ。

 

★②【コリンズの貸し部屋の注意点】

エロイーズが住むことになった

ソーホーの貸し部屋は、

夏は排水溝の栓を閉めとかないと

臭いが上がって来るらしい。

隣にフランス料理店があるので

部屋がニンニクの臭いだらけになる。

オーナーのコリンズは改装する気もないし

絶対に売らないわと言う。

  • 連れ込んだクラブの客たちをここで殺して埋めているため臭いが漏れてくるが、それは隣のフランス料理店のニンニクの臭いだと言って誤魔化している。バレたくないから改装も出来ないし売ることもできない。
  • コリンズはメイドをしていたと言うがこれは暗号のようなもので、当時のイギリスでは娼婦の周りに受付や身の回りの世話をするメイドがいて、そのメイドは元娼婦だった。間接的にコリンズの正体を匂わしている。
  • この時③コリンズは入口でエロイーズと会話をしていて、決して部屋に入ろうとしないことも重要。嫌な記憶が蘇ってしまうから入れないのだ。

 

★④【赤いネオンライトの点滅】

エロイーズが借りた部屋は

フランス料理店「BISTRO」の

ネオンライトのせいで

赤白青の三色に変化している。

エロイーズが過去へダイブする時は

必ず赤いネオンの点滅の時に起こる。

  • 監督が言うにはタイムリープが発動する時は赤いネオンだけが光る。時空を超えるサインだという。過去が現在を浸食する時も赤いネオンだけ点滅している
  • このルールに気づいて2回目を見ると、ジョンとキスするシーンとか現実に幻影が現れる前兆がよくわかって面白い。

 

【鏡に指タッチ】

「カフェ・ド・パリ」で

鏡を見たサンディは

鏡を指先でちょんと触る。

  • 本編ラストはエロイーズが鏡に指タッチで終わる。エロイーズ・ターナーだけにE.T.にも掛かっている?

 

【本名はアレクサンドラ】

オーディションの後でジャックに

「サンディの本名は?」と聞かれて

サンディは「アレクサンドラ」と答える。

クラブ客に「君の名は?」と聞かれた時も

最初は「アレクサンドラ」と答えたが、

何度も名前を聞かれるたびに

「アレクシー」「アンディ」

「レクシー」「アレックス」と

めんどくさくなったのか

適当に名前を変えて

最後「サンディ」に行き着く。

  • 真犯人を見破るための重要な名前の伏線。エロイーズが犯人じゃないかと疑った白髪の老人に「サンディはあなたが殺したのよ」と詰めると、老人は「サンディを殺したのはアレクサンドラだよ」と不思議な答え方をする。自分で自分を殺した(存在を消した)という意味。「アレクサンドラ」についてなにか知っていそうなこの老人は直後に車に撥ねられて詳しい話を聞けなくなる。
  • エロイーズが下宿先のオーナーが受け取った手紙の束の中から「アレクサンドラ・コリンズ」宛ての封筒を見つけた時点ですべての謎が解ける。このおばあさんこそ「サンディ」だ。

 

【殴られ役カビー】

ジャックとサンディがダンスした後、

「私と踊らないか?」と声をかけてきて

ジャックに殴り飛ばされた

カビーという男がいる。

  • 実はこいつは仕込み。ジャックがダンスの途中にウインクで目配せして、カビーがサンディに手を出したところをジャックがかっこよく追い払って、サンディの気を惹くという作戦だった。こうやって狙った女を落とすのがジャックの手口。サンディがリアルトでバックダンサーをやらされている時に客席でジャックの隣でカビーがお金をもらっているのはその時のお礼で金を渡している

 

【サンディはタバコを吸う】

楽屋でイライラするサンディが

タバコを吸っている。

現代にて謎の老人がエロイーズに

タバコを吸うだろう?と言ってくる。

  • 老人はエロイーズにサンディの面影を見ているがエロイーズがタバコを吸わないと答えると「別のブロンドと間違えたかな」とおどける。
  • サンディのタバコが最後の火事へと繋がる。エロイーズがタバコの乗った灰皿をひっくり返したために火事になってしまった

 

【車の前に飛び出し】

謎の老人に呼び止められたエロイーズは

警戒して話を打ち切り、

足早に立ち去ろうとして

道路に飛びだして車に轢かれそうになる。

「前はよく確認したほうがいい」と

老人が忠告する。

  • 逆パターンの伏線回収。エロイーズに追いかけられた老人が道路に飛びだして車に轢かれてしまう。自分で忠告したのに……。

 

【忠告してくれるクラブ客】

落ち着いたクラブ客に

「君にこんな場所は似合わない。

今のうちに抜け出せ」と忠告される。

サンディは警察官かと疑っていた。

  • この人物がエロイーズをじっと見つめていた謎の白髪の老人の正体。名前はリンジー。エロイーズは彼をジャックだと思って警戒してしまうが本当は風俗取締の警察官だった。

 

【男子禁制】

夜中に男を連れ込むことに

過敏なコリンズ。

エロイーズがジョンを連れて帰って

騒ぎになった時も鬼の剣幕で追い出した。

「捕まえていたら殺すところだったわ」

冗談とも本気ともつかない言い方をする。

  • 自分がされたことに重ねているので、男への殺意がすごい。
  • この時も③コリンズは決して部屋の中に入らなかった。ラストで部屋に足を踏み入れて閉じ込めていた過去の記憶が襲いかかり、自ら死を望む選択をする。

 

【行方不明者の記事】

新聞の記事を調べるとソーホー周辺で

行方不明者が続出していた。

  • これがサンディに殺された客たち。救いを求めてエロイーズの前に幻影として現れている。サンディの本名や行方を調べている最中なので事件とは無関係だと思わせている。

 

【謎の老人の協力】

老人をジャックだと思っているエロイーズが

「あなたがやったんでしょう」と言うと

「私はいろいろなことをやったよ」

老人は答えた。

  • この一言で「なぜサンディが何人もの死体を部屋の床に隠してバレなかったのか」わかる。この老人は警察官で、彼が協力して事件を隠蔽していたからだ。
  • ここのバーでの会話はすれ違っていて面白い。エロイーズはサンディが殺されたと思って「あなたがやった」と言うが、老人は自分の隠蔽のことかと思っていたし、サンディの行方も「サンディは自分が行き着く場所へ行った」と言葉を濁して、死んだとも生きているとも言わなかった。

 

欠点や疑問など

  • 赤と青と白に点滅する「BISTRO」のネオンライトがチカチカして目によくない。エロイーズは気にならないのだろうか。
  • ホラーだから仕方ないが暗い場面が多いからなにがなんだかわからない。
  • 主人公がなぜ過去をのぞけるのかとか、幽霊が見えるのか、最初に説明もないし最後まで謎のまま。娘と母親にあっておばあちゃんにないのかも不明。
  • 現実世界で死んだジャックやクラブ客の姿を見るのはわかるが、実際には死んでないサンディの姿を見るのは論理的に不整合。(上にも書いたが意図はわかる)
  • タイムリープとあらすじにあるが、過去の自分に意識がリープしてないし、サンディの身体を自由に操れないため、「過去視」だと思う。
  • ジャックと老人の顔の骨格が似てないため、老人の正体が警官の方だとバレやすい。
  • あの図書館での暴行事件はその後どうなったのか?大勢に見られていたし、未公開シーンではジョカスタが激怒して警備員がエロイーズを容疑者扱いしてたのに、とても普通に学校で過ごせる状況じゃないと思う。なぜ最後、仲良くなれてるんだか。
  • ジョカスタをハサミで刺し殺そうとした場面、メジャーで首を絞めて煽っていたので、せっかくならジョカスタの首をしめて伏線回収してほしかった。振り下ろしたハサミを片手でピタッと止めるのはさすがにリアリティがない。
  • これ、おばあちゃん幽霊だったほうが驚き増したように思う。それとは別に、幽霊の攻撃から死んだお母さんがピンチに駆けつけてきて救ってくれないのもモヤモヤする。写真立て持っていったから連れて来てたんじゃないのか?
  • 7歳の娘残して橋から飛び降り自殺する母親って……どんな精神的苦痛があったの?気になりすぎる。祖母が「あの子は助けを求めなかった」と言うが、じゃあ能力のことで苦しんだことがなぜ祖母にわかったのか?不思議だ。
  • ラストのファッションショーがあまりにも出来すぎたハッピーエンドなので、これは救急車の中で見たエロイーズの夢ではないか?という解釈もあり、それについて監督は否定せず自由に解釈していいと答えている。それならジョカスタの態度も腑に落ちるかなぁ。でも普通にあれがエピローグと考えていいと思う。

 

名場面・名台詞

ロンドンのファッションデザイン学校へ

入学が決まったエロイーズに

祖母のペギーが忠告する。

ペギー「ロンドンはね、一筋縄じゃいかない。あなたのママには無理だった。あの子には力もなかったし」

エロイーズ「力って?」

ペギー「なにか感じとったりものを見たりする力よ。あなたも潰されるんじゃないかって心配なんだ」

エロイーズ「おばあちゃん。私にためだけに行くって言ってるんじゃないの。どうしても行きたいんだ。ママのために。悪いことばかりじゃないと思う。向こうならママのこと、ずっと思わずすむかもだし」

ペギー「わかった」

エロイーズ「それにもうずっと……ママの幻影は見てないしね」

 

60年代にタイムリープし、

そこでエロイーズの意識が

サンディという女性にシンクロする。

彼女は「カフェ・ド・パリ」のジャックに

スターになりたいと夢を語った。

ジャック「この街でまぶしいネオンに囲まれる。ステージに立つ夢は持っていてもたいていはそこで終わるもんだ」

サンディ「私は違う」

ジャック「君は違う。夢を現実にしたいか?」

サンディ「心の底から」

ジャック「それじゃ、まずは一歩踏み出そうかサンディ」

 

しかし歌手になるはずが

ショーパプでバックダンサーをやらされ

さらにジャックから得意客へ

性的サービスを強要されて怒るサンディ。

サンディ「ジャック、あたし行きたくない」

ジャック「本気で舞台に立ちたいと言ったろ?その望みを叶えるためにはサービスしなくちゃならない男たちがいるんだ」

サンディ「嫌だってば!」

ジャック「みんなやってるんだ!お前だけ特別扱いできるか」

サンディ「嫌なんだって!!」

 

サンディや謎の幽霊が見えて

悩まされるエロイーズ。

エロイーズ「もうこんなの見たくない」

ジョン「何が?」

エロイーズ「普通の人と同じがよかった……」

ジョン「違うから好きになった」

 

田舎へ帰りたいエロイーズは

大家のコリンズに今夜出て行くから

前金を返してくれとお願いする。

コリンズはお茶を出して

ここに警察官が来てエロイーズのことを

聞いて帰ったという話をする。

コリンズ「女の子があの部屋で死んだって言っていた」

エロイーズ「すみません」

コリンズ「いいの。不思議だけど、ある意味当たってるから。……あなたが言い出すまで忘れていたんだけど、確かにあの部屋では女の子が死んでる。若い頃のあたしよ。この大都会に出て来たばかりの、ね」

 

 アレクサンドラ・コリンズ宛ての手紙を見て驚くエロイーズ。

 

エロイーズ「サンディ……」

コリンズ「あなたみたいに希望と夢に満ちていた。歌手になりたかったの。お芝居もしたかった。女優としてね。売春婦になるのは女優になるのとちょっと似てるわ。他の誰かのふりをするところがね。自分以外の誰かに。あたしは違う場所にいるふりをしてた。あたしに起きたことじゃないって。忘れようとした。あの男達を。あいつらの顔を。のっぺらぼうにした。必要だった。いなかったことにすることが。だからそう、その通り。サンディはあの部屋で死んだの。あの部屋で何度も何度も死んだ。そしてある夜、あたしを引きずり込んで働かせた男、あたしの夢を盗んだ男……あたしは、ナイフで刺した。何度も何度もね。そしたらねえ、エリー?ああ、エリーと呼んでいいかしら?」

エロイーズ「……ええ」

コリンズ「すごくすっきりしたわ。あいつらケダモノたちはうちのベルを鳴らして階段を上がってきて、あたしを地獄に落とす。だから!……本当に地獄に送った。新聞はあいつらを行方不明と報じた。とっくに人の道を外れてた連中だもの。世間は知らない。今どこにいるのか。消えても気づかないゴミだからね。世のためにやったのよ。もう利用されるのは嫌だった。あたしはこの街に壊されてなんかやらない」

エロイーズ「すごく苦しい……」

コリンズ「どうして?あなたには何もしてないわ」

エロイーズ「だって私にはわかるんです。あなたがどんな気持ちでいたのか」

コリンズ「まあ……そう。わかるのね」

エロイーズ「警察のことでご迷惑をかけるつもりはなかったんです」

コリンズ「大丈夫よ警察は。あなたの正気を疑ってる。あなたがこの話を誰かに漏らすとは思えない」

エロイーズ「絶対に、私絶対に誰にも言いません」

コリンズ「違うわ。あたしは“あなたが話すことは絶対にない”と言ってるの」

 

 さっき飲んだお茶のカップを見つめるエロイーズ。身体がおかしい。ものすごい眠気に襲われてしまう。

 

逃げ込んだ屋根裏部屋で

エロイーズを追い詰めるコリンズだが

過去の亡霊たちに「お前が望んだんだ」と

コリンズは顔を殴られて

閉じ込めていた過去と向き合う。

コリンズ「あたしは(こんなこと)望んでなかった」

エロイーズ「知ってる。見てたから」

コリンズ「殺されて当然よ」

エロイーズ「……そうだね」

コリンズ「刑務所にはいかない。囚人と変わらない人生だったもの(そう言ってナイフで首を……)」

エロイーズ「駄目!」

 

 自殺しようとするコリンズをエロイーズが阻止して抱きしめる。

 

サンディ「死なせて」

エロイーズ「死ななくていいんだよサンディ。生きようよ、お願い、生きて」

サンディ「もう全部忘れなさい。さあ!(エロイーズを突き飛ばす)逃げて!あたしのことは救えない。自分を救いなさい。あの青年を救って。……行きなさい!」

 

 ベッドに座るコリンズを残し、エロイーズは炎上するアパートからジョンを連れて脱出する。

 

好事家のためのトリックノートトリック分類表

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