『ゴースト/ニューヨークの幻』

[Ghost]

(1990年)アメリカ映画

 

 

 

<あらすじ>

温厚誠実な銀行員サム・ウィート(パトリック・スウェイジ)は恋人のモリー・ジェンセン(デミ・ムーア)と一緒に暮らし始め、幸福に満ちあふれていた。しかしモリーがサムと結婚する決意をした夜、サムは暴漢に襲われ命を落としてしまう。だがその死が陰謀であると知ったサムはゴーストとなってこの世にとどまり、インチキ霊媒師オダ・メイ・ブラウン(ウーピー・ゴールドバーグ)の力を借りて愛するモリーを守ろうとするのだが……。

 

<スタッフ>

監督 ジェリー・ザッカー

脚本 ブルース・ジョエル・ルービン

製作総指揮 スティーヴン=チャールズ・ジャッフェ

製作 リサ・ウィンスタイン

音楽 モーリス・ジャール

主題歌 ライチャス・ブラザーズ「アンチェインド・メロディ」

撮影 アダム・グリーンバーグ

編集 ウォルター・マーチ

 

 

<キャスト>

パトリック・スウェイジ(サム・ウィート)銀行員

デミ・ムーア(モリー・ジェンセン)その恋人、陶芸家

ウーピー・ゴールドバーグ(オダ・メイ・ブラウン)霊媒師

トニー・ゴールドウィン(カール・ブルーナー)サムの同僚の銀行員

リック・アビレス(ウィリー・ロペス)暴漢

ヴィンセント・スキャベリ(地下鉄のゴースト)

フィル・リーズ(集中治療室のゴースト)

マルティナ・ディーグラン(ローズ)銀行の受付

アルメリア・マックィーン(クララ)オダ・メイの妹

ゲイル・ボグス(ルイーズ)オダ・メイの妹

アンジェリカ・エストラーダ(ローザ・サンティアゴ)占いに来た婦人

スティーヴン・ルート(巡査部長)

ローラ・ドレイク(婦警)

ブルース・ジャーチョウ(ライル・ファーガソン)

 

 

感想

暴漢に襲われて死亡した主人公が

愛する彼女を守るためゴーストとなり、

インチキ霊媒師と協力して

仕組まれた事件の謎と

真犯人を追い詰めていく

ラブファンタジーの不朽の名作。

 

本作はアカデミー作品賞、

編集賞、作曲賞など

主要部門に多数ノミネートされ、

ウーピー・ゴールドバーグが助演女優賞、

ブルース・ジョエル・ルービンが脚本賞を受賞。

 

『ゴースト』は小学生の頃に観た。

幽霊になって愛する人を守るという

設定にすごく感動した。

トップクラスの映画の評価だったが、

年を重ねて改めて見返すと

その頃の自分が気づかなかったような

新発見がたくさん見つかって

さらに評価が上昇。

とくに【Ditto】の伏線は

この言葉がどれだけ2人に重要であったか

当時はわからなかったです。

 

オダ・メイからサムがゴーストとして

そばにいると言われ

2人にしか知らないことを聞かされて

信じられないけど信じたい

その気持ちで警察に相談に来たのに

警察は全く信用してくれなくて

モリーが泣く場面……

ツツーっと美しい涙が頬を伝って

素直に綺麗な涙だなと思った。

 

インチキ霊媒師のオダ・メイとの

コメディなやりとりも面白いし

銀行口座を使ったコン・ゲーム要素もあり

ハラハラするサスペンスと

ロマンチックなラストシーン。

名作はいつまでも色あせない。

 

 

☆☆☆☆ 犯人の意外性

★★☆☆☆ 犯行トリック

★★★★★ 物語の面白さ

★★★☆☆ 伏線の巧妙さ

☆☆☆☆ どんでん返し

 

笑える度 ○

ホラー度 △

エッチ度 △

泣ける度 ◎

 

評価(10点満点)

 9点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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※ここからネタバレあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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1分でわかるネタバレ

○被害者 ---●犯人 -----動機【凶器】

サム・ウィート ---●ウィリー・ロペス ---命令【射殺:銃】

ウィリー・ロペス ---●なし ---事故死【衝突死:車】

カール・ブルーナー ---●なし ---事故死【失血死:ガラス】

 

<結末>

麻薬組織から預かった

不当な400万ドルを

密かに資金洗浄をしていた

カールが黒幕で、

嗅ぎつけそうになったサムが邪魔になり

ウィリーに依頼してサムを殺した。

 

カールの悪巧みを食い止めるため

サムは物に触れる訓練をし

霊媒師オダ・メイに協力してもらい、

カールが開設していた

架空口座の名義人リタ・ミラーになりすまし

口座を解約して400万ドルの小切手を入手、

全額を慈善団体に寄付した。

 

激怒したカールは

オダ・メイの命を狙うが

サムの幽霊攻撃で恐怖のあまり

逃げ出したウィリーが交通事故死する。

 

モリーはオダ・メイを詐欺師と疑っていたが

見えていない洋服やピアスを当てられ、

宙に浮いた1セント硬貨をお守りだと言い

モリーは確かにサムがゴーストとして

そばにいるとわかって涙を流す。

 

オダ・メイの体を借りて

束の間の抱擁、

そこにカールがやってきたので

モリーとオダ・メイは上階に逃げる。

サムが幽霊攻撃で2人を守り、

戦闘中ガラスの破片が落下して

カールは死亡した。

 

事件は解決し

サムに天国から迎えが来る。

「愛してるよ」と言ったサムに

モリーはサムの口癖の

「Ditto(同じく)」と答えた。

そして、サムは光の中へ歩いてゆく……。

 

 

どんでん返し

黒幕が親友のカールだったことは

かなり前半でわかってしまうため

どんでん返し度はかなり低い。

といっても

この映画の魅力はそこにないので。

 

 

伏線解説(★は巧妙なもの)

上の紹介文にも書いたけど

この映画の最大の伏線回収は

【Ditto】のオシャレな使い方。

 

★①【Ditto(同じく)】

まだサムが生きていた冒頭の会話で

モリーがサムに「愛してるわ」と言ったら

サムは「Ditto(同じく)」と返す場面がある。

サムは「愛してる」と言葉に出して言うのが

恥ずかしい性格なので

そういうときは「Ditto」と返す口癖があった。

そんなサムにモリーは

「言葉で聞かせて欲しい時もあるのよ」と

不満に思っていた。

  • 物語のラストでサムが天国に昇る時、光に包まれたサムがモリーに「愛してるよ」と言う。それに対してモリーはサムの口癖の「Ditto(同じく)」という言い方で答えるのだ。サムがモリーに愛してると言葉にして伝えたのは実はこれが初めてであり、しかもお互いの合言葉のようなやりとりが入れ替わることで、感動をさらに後押ししている。
  • この「Ditto(同じく)」は突然やってきた霊媒師オダ・メイに言わせることで、モリーを説得する大事な言葉でもあった。

 

もう1つの重要な伏線が

★②【1セント硬貨のお守り】

古いロフトで見つけた

1セント硬貨を

サムはモリーに「お守り」だと言って渡す。

  • 物語終盤、オダ・メイの言葉を絶対に信じさせなければいけない大事な場面で、サムは1セント硬貨を宙に浮かせてモリーに「お守り」だと言って渡した。この瞬間、モリーは本当にサムがそばにいることを実感した。

 

【窓ガラスを割る地下鉄のゴースト】

暴漢ウィリー・ロペスを追って

乗り込んだ地下鉄で

「俺の縄張りに入るな!」と

突き飛ばしてくるゴーストが

窓ガラスを叩き割る

  • 乱暴な奴がいるなーくらいに思わせて、このゴーストが物に触って攻撃できることを示唆。後にサムはカールの陰謀を止めるため、このゴーストに弟子入りして物を動かせるようになる。

 

【サムの遺品整理】の時に

秘密の暗証コードを書いた

アドレス帳の入った箱をカールが

しれっと持っていこうとしていたのは

見逃せない伏線だろう。

  • サムが自分の暗証コードをアドレス帳に書いていたことは知っていたから、間違えたふりをして盗むつもりだったはず。この辺ですでにカールの黒い部分が見えている。

 

大金が動いてる不審な口座を

サムが調べていると

カールが手伝おうとした場面や

リタ・ミラーの名前が

カールの電話の中に出ていたり、

オダ・メイの体に乗り移るゴーストが

後のサムの憑依に繋がるとか

伏線というほど隠れていないので割愛。

 

ただその憑依の場面で

【憑依の後遺症】として

ゴーストが生きている人の体に乗り移ると

力を奪われてしばらく動けなくなるという

伏線が張ってある。

  • これはゴーストのサムが強すぎるので、モリーのピンチを作るためにサムを弱らせたそうだ。

 

 

欠点や疑問など

  • 仕方ないけどパソコンやCGが古い。
  • 恋人が時間かけて作ったろくろを躊躇なく潰すのはどうかと思う。
  • 壁はすり抜けても床や椅子はすり抜けない不思議。脚本家によると「座るのも通り抜けるのも出来ると信じている」と出来るらしい。
  • モリーが電話してから警察の到着が遅すぎる。
  • サムは2人(ウィリーとカール)とも直接殺してはいないので罪はないし、銃を持った相手に対する正当防衛である……が、やりすぎている感は否めないので勘違いされやすい。
  • 地下鉄のゴーストが現世にとどまる理由や急に態度を変えて逃げた理由がよくわからない。

 

 

その他・裏話など

幽霊になっても

恋人を守るファンタジーものは

後に多くの亜流作品を生み出した。

実はアカデミー作品賞にノミネートされるまで

批評家からの評価は低かったが、

映画を観た観客から好評で

この映画の評価を大きく変えた。

 

主題歌の「アンチェインド・メロディ」も

聞くだけでこの映画の1シーンが

思い浮かぶという人も多い。

 

 

ろくろ回しを背後から

抱きしめるシーンは

『タイタニック』と並ぶ

ラブシーンの定番の1つで

よくパロディされるやつ。

監督が『裸の銃を持つ男』の

打ち合わせで音響担当者が

陶芸雑誌を読んでいるのを見て

陶芸のラブシーンを作ろうとしたそうで。

 

ヒロインのデミ・ムーアさんは

後に肉体改造で変わったり

結婚と離婚を繰り返したり

あまり良い印象が付いてないけど

この映画の彼女は本当に綺麗。

その涙の演技力の高さに感心した。

ニコール・キッドマンと

モリー役の候補で最後まで迷ったらしい。

 

ウーピー・ゴールドバーグさんも

この後の『天使にラブソングを…』で

大ブレイクするのですが

彼女のコメディな演技が最高。

オダ・メイは当たり役だった。

名前の由来は織田無道から。

 

最初の脚本ではオダ・メイは

クライマックスの戦闘で

カールに殺されてゴーストになり

自分の死体に乗り移って

カールを倒す展開だったが

監督がそれは最善ではないと反対し

オダ・メイは死なないように書き直された。

 

パトリック・スウェイジさんは

撮影当時37歳、

この20年後に膵臓癌で亡くなっている。

光りに包まれると赤い服を着てるから

カズレーザー……に見えなくもない。

 

幽霊になるサム役が決まらず

トム・クルーズ、ハリソン・フォードに断られ

脚本のブルースがパトリックを紹介したが

監督はあまり気が進まなかった。

しかしパトリックは諦めずに

オーディションを受けて合格、

ラストシーンは「彼こそサムだ」と

監督に言わせるほどになった。

彼がウーピーの才能を見抜いて

オダ・メイ役に推したという話もある。

 

 

映画を見終わって

なぜサムはすぐ成仏しなかったのか?

ふと疑問に思った。

 

自分を殺した犯人を

突き止めたいという意思が

現世にとどめたというよりも、

生きている間に「愛してる」と

伝えることができなかった後悔が

サムを現世に

とどまらせたのかもしれない。

 

そう思ったら、

ラストシーンで天国へ行くサムを

見送るエンディングも

一応はハッピーエンドだけど、

モリーはサムのことを

ずっと忘れられなくて

1人で生きていくと思うし

もっと早く結婚に前向きになれば

もっと幸せな時間が増えて

小さな命を授かったかもしれなくて……。

 

伝えたいことを

生きている間にちゃんと伝えることが

どれだけ大事かと気づかされる映画です。

 

 

 

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