□から出任せを言うのも赤面する思いでしたが、






中年の係官は明らかに慌てた様子で、






パソコンに何やら打ち込んだり、






資料をひっくり返したりし始めました。

 






「資料にはそんなこと全然書いてないけど?」






「いや~、お話しするのもなんだか恥ずかしくて。どうもすみません」

 





などと、その後はノーマルとの両刀遣いだから結婚もしたし子供も作った、






などといい加減な嘘八百を並べ立て、






なんとか無事独居部屋を確保したのです。

 






結局この路線(?)を堅持して、






その後の黒羽刑務所でも独居を確保できましたので、







Kさんにはいくら感謝してもしたりないくらいです。







今頃どこの空の下にいらっしゃるのやら。






Kさん、本当にありがとう。






おかけで快適なムショ生活を送れました。

 






もっとも、法務省には私が同性愛者だという記録が永遠に残るので、






その点は今一つしっくりきませんが……


      



          



入所分類の聞き取りで何度も名前や住所などは聞かれるのですが、





肝心の性癖については一向に聞いてきません。





おそらく警察の調書にもその方面の記載が一切ないからなのでしょうが、





こちらも切り出せず逡巡していたところ、






4度目の聞き取りで係官が、






 「じゃあ他の人との共同生活は問題ないね」 





と念を押すように聞いてきました。






これはもう絶対に雑居に入れられると危険を感じた私は、





とっさに、

 




「あのう……実は私、同性愛の経験がありまして」

 





「ええっ? 本当? 





そ、それはちょっとマズイなあ。





どうして今まで言わないの?」
 






         

         



         

 

「ええっ? でも係官にはわかるのではないですか?」

 




「わかりません。





だって彼らには確かめる手段がないから。






本人がゲイだ、と言うのをどうやって確かめます?






 言ったモン勝ちですよ」

 




そういう彼は黒羽刑務所に1年いたらしいのですが、





その際も分類面接のときにホモだと主張して独居を確保、






快適な時間を過ごしてきた、と言うのです。

 




「篠山さん、





とにかく分類のときはゲイだと言い張りなさい。





相手もそう言われれば確認できないから」





 「でも俺ゲイじゃないし、ばれるよ」

 




「絶対大丈夫です。




とにかくなんでもいいから嘘をつき通すんです。





このこと、





覚えておいてくださいね」






結局彼は不起訴になって釈放されたのでM署で別れたのですが、





彼の教えはしっかりと心に残っていました。