ANA Sky Channel | Ready Steady Go!

Ready Steady Go!

Season Concept
   ~ London Eye ~

2時間遅れで出発、離陸したANA 205便は白い雲の間を抜けて、ぬけるような青空がまぶしい上空へとやって来た。

隣が空席の窓側のシートに座り、窓から見える夏を感じさせる白い雲と蒼い空をぼんやりと眺めて時間が経過していく。

ジェット音だけが耳に入るが、地上では体験出来ないほぼ自分だけの空間とこの時間は空の旅の楽しみのひとつである。

地上生活をしていると仕事のことはもちろん、あれこれと雑念が頭の中をよぎるが、空の景色を眺めているわずかな時間は交信もなく、声をかけられる事もなく、梅雨時の不快な湿気も、都会生活の喧噪もなく、肩の力を抜いてわずかなひと時のリフレッシュタイムとなる。

徐々に高度が上がり雲の変化に見とれていると、完璧に眼下に真っ白な雲が広がっている上空は高度1万メートルほどの安定した水平飛行となる。

空の旅だけのささやかな特権を満喫中。

日本のエアーラインは特にサービス面で海外のエアーラインより優れているし、お気に入りのANAだと安心感もある。

ドリンクサービスでワインをいただいてほんのりと酔いが回り始めた頃には、2時間遅れの事などすっかり忘れてしまっている。

いつものごとく飛行時間12時間と先は長く、ひとり時間を過ごすスタートとして眠気が襲ってくる前に、まずはANAスカイ ・チャンネルから気になる番組を選択して画面に集中する。

ガイアの夜明けのタイトル、内容は次のようであった。

ニッポンの反転攻勢、経済も外交も押される日本。しかし、日本の実力はこんなものじゃない。

プログラム内容は、日本の老舗名門温泉旅館 / 石川加賀屋の台湾進出、欧米を圧巻するハローキティ、10分千円の床屋さんのシンガポール進出、岡山 / 児島の縫製工場の逆中国市場進出などであった。

どの市場も明らかに二極化していて、富裕層をターゲットとしたラグジュアリーか、アメリカナイズされた大量生産型のチープ、ちまたで言われるワーストフード、ファーストファッションなどとなってしまうのか。

そして人口的な理由と経済的な理由から日本市場の大手企業が目指す中国市場など、海外市場への進出だが、ラグジュアリー、チープ、海外進出、国内生産、当然といえば当然なことだが、ひとと違うことを目指している私にはどれひとつも当てはまるものがない。

一般的に人が考える儲かる手法、もしかして巷で騒がれている時代に乗り遅れているのか???????、まさか、そんな考え方を持ち合わせていないだけで、市場の動向は百も承知のはず。

されど自分に都合良く考えれば、誰でもが出来ない事をやっていることに、やりがいと本物の感性の存在がある。

カッコ良く言えば先を読み、変化も大事なのかもしれないが、やはり中身なく希薄で山積みすることに関心がない。

考えさせられはしたが納得出来るほどの説得力は感じられず、気分転換に奇跡のピアニスト 辻井伸行 密着4000日にチャンネルをあわせる。

生まれながらの全盲でこの世に誕生した彼は、一昨年、世界最高峰のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで日本人として初めて優勝し、世界へその名をとどろかせた。彼の少年時代からの11年間の成長記録ドキュメンタリー・プログラム。

全盲という大きなハンディキャップを持って、医者の息子として誕生した彼の人間としての心のあり方と生きていくということの本来の姿勢、考え方を教えてくれている。

当然、ここまで来た長い道のりには想像を絶する本人とご両親の困難と苦労が存在するはずだが、彼には偉大な精神的な部分と世界レベルの音楽性を神様が与えた。

もちろん資質もさることながら本人の努力なくして今はないが、資質に気がつき、教育されてきたご両親には頭が下がる。

本物の上品さ ( 品格 ) とは画面からにじみ出る、この家族のような人たちであるような気がする。

こだわるがゆえにくじけそうな気持ちになる時には、このような番組が栄養剤、カンフル剤となり、再び気持ちのエンジンが加速する。

純朴な印象の世界レベルの天才ピアニストに拍手ともに素直にお礼を。

シェードを上げて窓の外を眺めると青空と夏の陽射しがまぶしい、こんなに数多く空の旅を楽しめる環境に素直に感謝しなければいけない。


all the very best