窮屈な空間から一時解放され、約2時間ほどの次なるトランジットへと向かう。
長い長いひとり旅は慣れてはいるけれど、お得意のもの思いにふけるのもそろそろ飽きて来た。
かと言って、何かに集中出来るほどの思考回路はすでになく、一番中途半端なコンディションで過酷な残りの行程が待ち受けている。
時間的にここまででやっと半分ほどが経過したわけだが、気持ちを維持するためには、これから出逢うとびっきりの美貌の女性にピントを合わせ、贅沢な空想に勝手にハマるのが誰にも気づかれず、自分にとってはベストウエイ。
世界的にもレベルは高く、毎回ラテンの血に魅了される。
好物からいただくか、最後に取っておくか、性格にもよるだろうが、私のいやしさから言えば、どちらも望んでしまう。
あまりの退屈さに白日夢的な思考に陥ってしまいがちだが、普段時間に追われて慌ただしく過ごしている日常から一瞬解放されるこういう時間も、もしかするとこころの癒しの為には、スイッチを切り替えるオン、オフも必要不可欠なことなもかも知れない。
眠気に襲われ待ちくたびれた頃、次なる搭乗のアナウンスで、鉛のように重くなったからだにむちを打ってシートナンバーへと向かう。
ここから更なる11時間のフライト、そして2時間のトランジット後、最後の1時間ほどのフライトへと、、、、、、
やはり誰よりもファッションをこよなく愛し、己のスタイルにこだわり続け、先駆けてブランド発掘に勤しむ、この気持ちを維持出来なければ、この長旅の行程を繰り返すことは不可能な気がする。
成田を出発してから32時間が経過し、最後の着陸地に近づいた頃、誰も座ってなく空席が目立つ機内で、自分ひとりの空間は、ここまでの長旅の行程を振り返るにぴったし。
旅ならではの、どことなく感傷的にひたれる瞬間でもある。
窓の外から見える田園風景がやたら碧碧しく見えて、日本からはるか遠い異国に来たことを実感させてくれる。
もちろん肉体的にはきついが、降り立ったこの場所からすでに新しい2010年春夏シーズンに向けての私の仕事が始まっている。
こだわるがゆえの目標は正直険しいが、気持ちが揺れることはあっても折れることはない。
苦しむことから、学ぶこともある。
そう思うと、疲れとは裏腹に気持ちが高騰して来るのが感じられるから不思議だ。
誰にもまねされたくない、自分ならではの充実感と達成感も含め、自らを感じられる一瞬に酔いしれるが、すぐに封印しなければならない。
そして、これまで自己陶酔して楽しんだ空想の世界から、今回は税関検査場での係員のマスク姿で一気に現実に引き戻され、目が覚める。
十分に楽しんだ空の旅。
1週間ほどの滞在を前に、胸が躍る。
cheers