2021大河『青天を衝け』が始まった。
初回の視聴率が8年ぶりに20%を超えたらしく、話題になっている。
近年では、新しい大河が始まると、視聴率の低迷ぶりがいかに深刻であるかを論じるのが恒例行事にさえなっている。それを思えば、『青天を衝け』の出だしはかなり順調といえるのではないだろうか、そんなことを考えつつ、YAHOO!ニュースを見ていたら、『週刊女性PRIME』の提供記事(大河ドラマで低視聴率だった「ワースト15」、『青天を衝け』は三重苦スタート)の中の、「大河ドラマワースト15」なるランキングが目についた。
21世紀の大河がズラリと名前をつらねている(15作中11作)、そのランキングは視聴率的には失敗作といえる大河のランキングだ。けれども、じっとランキングを眺めていると、そこに企画を通す側の苦労もしのばれつつ、あれこれいいたくなってしまった。古き良き時代の大河はもう戻ってはこないことをわかった上での、いっときの愚痴をどうかご容赦願う。
さて、栄え(?)あるランキング一位に輝いたのは大方の予想どおり、平均視聴率が史上唯一10%を切った2019大河『いだてん〜東京オリムピック噺〜』だ。これはもう、大河ファンには最初から分かり切った結果であったといえるし、それが悪意からであったとは思わないが、大河の歴史に終止符を打とうとする、確信犯的な意図があったのは間違いないように思う。『いだてん』の企画が決まった時点で、従来からの大河ファンの梯子は外されていたのだ。そのことへの反動、つまりは「このまま大河を終わらせてはいけない」というNHK局内の熱意と、いったんはバッサリ切り捨てた、従来からの大河ファンへの申し訳ないという気持ちが久々に大河らしい『麒麟がくる』の企画を生み出したのではないだろうか。
古くからの大河ファンも新規のファンも関心を示しそうにない、いわば親からも見放されたような大河ではあったけれども、番組そのものはなかなか興味深く、それなりに見どころもあり、キャスティングも良かった。今や絶滅危惧種の感さえある、史劇ファンの最後の聖地ともいうべき大河の枠を私たちから奪いさえしなければ、『いだてん』をもっと前向きに応援することもできたし、もっと高く評価されていい作品でもあったと思うのだ。
つづいてランキング二位は、2015大河の『花燃ゆ』と、2012大河の『平清盛』の二作。
兵庫県知事の「画面が汚い」発言でも話題となった『平清盛』だが、最新の研究もよく取り入れられていて、とても丁寧につくられた意欲作だ。主演の松山ケンイチさんは清盛にしては少し線が細いような気もしたが、最後までよく演じ切ったものだと思う。キャスティングも多士済々でおもしろい。あまりにも多くのことを盛り込みすぎて、焦点がぼやけすぎた嫌いはあるものの、もっと高い評価を得て然るべき作品だと思う。
一方の『花燃ゆ』は前半こそ、事実上の主人公ともいうべき、伊勢谷友介さん演じる吉田松陰や、東出昌大さん演じる久坂玄瑞といった個性的な登場人物が健在で楽しく見ることもできた。しかし、二人が舞台を去ってしまった後は主人公の影が薄く、とりわけ明治以降は、近年の大河に顕著な朝ドラの気持ち悪い臭いがぷんぷん漂っていて、その時々はそれなりにおもしろく筋を追えていたような気がするものの、いまとなってはまるで記憶に残っていない。
つづいてランキング四位は、まだ記憶にも新しい2018大河の『西郷どん』。企画が明らかになるや、端から「BL大河」宣言をやらかして、大河ファンの期待を打ち砕いてしまったのだから、低視聴率も仕方のないところだろう。大西郷のイメージとはほど遠かったものの、「朝ドラ調西郷なら、こんなものか」と思わず達観してしまった。この後に続くのが『いだてん』だということもはっきりしていたのだから、NHK局内に「もう大河は終わらせよう」と考える人たちがいたことは間違いないと思うし、従来からの大河ファンにとっては、希望をもつことが困難な時代であったとしかいいようがない。
ランキング五位は2017大河の『おんな城主 直虎』だ。この作品は、近年の大河に顕著な鼻につくような朝ドラの臭いも感じられないし、地方の地味な国人小領主を主人公に据えている点でも好感がもてて、想像以上の佳作にまで育つかもしれないという期待感があった。そのせいか、新旧のファンの間で評価も割れているような気がする。個人的には、ラノベ風の(と私が感じる)作風(世界観?)と、ご都合主義的なストーリー展開にはついていけず、私自身は途中で何度もドロップアウトしそうになってしまったが、ハマった人たちも少なくはなかったようだ。
二~五位までが平均視聴率12%台の大河で、ランキング六位は1994大河の『花の乱』だ。20世紀最低視聴率の大河である。主人公は三田佳子さん演じる日野富子。当時の私は、女性が主人公の大河は必ず失敗すると信じていたから、あろうことかリアルタイムでは見ていない。後年、CSで総集編の再放送を見て、大いに後悔した。それがきっかけで、以後は大河の食わず嫌いはやめて、どんな作品も一度は見るようにしているし、今のところ、途中で投げ出したこともない。また再放送があったら、ぜひ見てみたい作品の一つだ。
つづいて七位に入ったのは、意外なことに今は亡き国民的人気作家・司馬遼太郎原作の1968大河『竜馬がゆく』というのだから驚きだ。驚きのあまり、改めてNHKのサイトを確認してみたら、先日最終回を迎えた2020大河『麒麟がくる』の平均視聴率はそれよりも低かったようだ(したがって七位は『麒麟がくる』、『竜馬がゆく』は八位となる)
ご存知『麒麟がくる』の主人公は、長谷川博己さん演じる明智光秀。
『竜馬がゆく』の主人公は、徳川家康公こと北大路欣也さんが演じる、これまた人気者の坂本龍馬だ。
ワーストの七・八位が高視聴率と思われた、この二作品であったことは、私たちの先入観がいかに当てにならないものかをよく表しているといえるだろう。少なくとも作品の良し悪しと視聴率はどうやら関係がなさそうだ。作品の出来栄えがいくらよくても、あからさまに視聴者の期待を無視し、バッサリと切り捨てれば、視聴者からも見向きもされなくなるということは、ワースト1大河の『いだてん』がよく表しているように思う。
とりあえず切りのいいところでワースト10まで紹介しておこう。
ランキング九位は2013大河『八重の桜』。これまた朝ドラの臭いが強かった作品で、最後まで見つづけはしたものの、大河ファンが見ていてもいいのだろうかと、ずっと居心地の悪さを感じた作品であった。
最後にランキング十位は、2014大河の『軍師官兵衛』だ。岡田准一さんが主人公の黒田官兵衛を熱演した、近年では比較的評判のいい大河といえるのではないだろうか。
さて、本記事ではここまで朝ドラに対するネガティブな印象を述べてきたけれど、私自身は決して朝ドラが嫌いなわけではないし、実際のところ、ハマった作品も少なくはない。仕事の都合で見ていないものが多いのは事実だが、嫌いだからというわけではない。
視聴率の改善を企図したとき、朝ドラの視聴率が概して高いのは分かっているし、視聴者受けするテーマ選びや、若い人気タレントの起用など、努力の方向性として、朝ドラが正しいベクトルの一つの線上にあることは間違いないだろう。ただ史劇を楽しめる枠が大河ぐらいしか残されていない昨今、大河の枠にまで浸食し、大河ファンの居場所を奪わないでほしいということを願っているだけなのだということを理解してほしいのである。