今回はまひろ吉高由里子さん)や道長柄本佑さん)が属す世界、平安貴族について考えてみたい。とりあえずは、その前に前回、少し触れた位袍の色について。以下の画像は『有職図譜』から。

 

 まずは天子の黄櫨染(こうろぜん)

黄櫨染の位袍

 

 つぎは東宮(皇太子)の黄丹(おうだん)。劇中では師貞親王(後の花山天皇。本郷奏多さん)が着ていた。

黄丹の位袍

 

 つづいて実資秋山竜次さん)が身につけていると思われる麹塵(きくじん)の袍。これは青色の袍ともいって、天子が黄櫨染よりもカジュアルな袍の色に用いた。天皇官房とでもいうべき蔵人所の副長官格である蔵人頭(くろうどのとう)や、五位蔵人(ごいのくろうど)のほか、最古参の六位蔵人(ろくいのくろうど)も時と場合によって、これを拝領・着用することがあったという。

麹塵の位袍

 

 つづいて四位以上の人が用いる(つるばみ)の袍。もともとは一位の人の位色であった深紫をより濃くしていったものらしい。

橡の位袍

 

 五位の人が用いる蘇芳(すおう)の袍、本来、深緋は四位の位色であったが、いつしか五位が用いるようになった。しかし風紀を取り締まる側の検非違使大夫(五位の人のこと)は厳格にきまりに則って、本来の五位の位色である浅緋を用いたという。

蘇芳の位袍

 

 六位以下(はなだ)色の袍。もともとは八位と初位の位色であったが、平安中期以降は六位以下の色とされたらしい。劇中ではまひろの父為時岸谷五朗さん)や、安倍晴明ユースケ・サンタマリアさん)がの袍を着ているが、これはおそらく本来(律令の制)の六位の位色が緑であるからだろう。

縹色の位袍

 

 位袍は勤務時に着る、今日でいえば、スーツのようなものだ。だから、登場人物の個性を際立てるイメージカラーは、むしろ雑袍ともいわれた、ふだん着の直衣や、狩衣などの色に込められているのかもしれない。そういう視点で劇中の衣装を観察してみるのもおもしろいだろう。

 

追記)関根正直という人の『装束図解』によれば、本来、六位の位色は深緑(こきみどり)であり、七位が浅緑(うすみどり)、八位は深縹(こきはなだ)、初位が浅縹(うすはなだ)、無位は黄であったが、正暦・寛弘の頃に四位以上はみな黒袍(橡)となり、五位は本来四位の深緋(蘇芳)を用いるようになり、六位の深緑も八位の深縹になったが、六位の「緑衫(ろうそう)」という名前だけが残り、七位以下の服制は廃れた、とある。七位以下の服制が廃れたというのは、この頃になると、六位以下は「正六位上」ばかりになってしまい、七位以下は稀になってしまったからかもしれない。実際、長徳二年(996)の大間書を見ると、(七八位相当官もふくめ)六位以下の新任者二十二名全員の位階が「正六位上」となっている(2024.2.8追記)