今年は一大河ファンとしては2011大河『江〜姫たちの戦国〜』(主演の上野樹里さんは大好きだったのに、脚本が……。無念!)以来の、残念な年になってしまったが、来年の2024大河『光る君へ』はいままでにないテーマで新しい地平(なんと紫式部を主人公にした平安貴族大河!)を切り拓いていこうとする野心作だという。ズッコケルか、大当たりするかの二つに一つだろうが、不安も大きい反面、期待も膨らむ

 そこで2025大河が何になるかに思いを馳せつつ、妄想大河『江戸』を提案してみたい。

 家康が登場する大河といえば、滝田栄さんの1983大河『徳川家康』をはじめ、枚挙に暇がない。家康、秀忠家光の三代を描いたものには先頃までチャンネル銀河で再放送していた2000大河の『葵徳川三代』がある。1995大河『八代将軍吉宗』(チャンネル銀河さん、ぜひ再放送して下さい!)には、家綱の時代は出て来ないものの、綱吉家宣家継から家重の時代までが描かれている。家定以降の幕末大河は人気の定番ものとして、繰り返し制作されている。

 ところが、私たちがイメージする江戸にもっとも近い家治家斉家慶の時代はどういうわけか、まったく描かれていないのだ。戦後、見直されつつある田沼意次を前半の主人公に据えてもおもしろそうだし、社会はすでに町人の時代になっている。主役を張る人材には事欠かないはずだ。野心的な脚本家が手を挙げようとしないのは不思議なくらいだ。

 前半は日本の改造を夢見て、挫折するまでの意次を、後半は世界に開かれた日本を夢見ながら、黒船来航の直前に非業の死を遂げた高野長英では地味すぎるだろうか。あるいは、新しい日本を伊豆韮山から生み出そうとして、ペリー来航直後、志半ばに倒れた江川太郎左衛門ではどうだろう。いずれも日本史上の巨人ではあるが、エンタメ的には派手さに欠けるのが致命的か。

 世界では二十歳の少女グレタさんが新世紀のリーダーになりつつある。大河にだって、新しい時代のヒーロー・ヒロインが生まれてもいいころなのかもしれない。声を大にして言いたい。

 

 忠臣蔵でも幕末大河でもない江戸大河を見たい!