例えば、江戸の町奉行は東京都知事最高裁判所長官警視総監だったというような、ちょっと実態からかけ離れた説明をみて、しばしば違和感を覚えることがある。

 そもそも時代の異なる、封建社会の、軍政組織における役職を現代のそれに置き換えること自体に無理があるという他ない。そこで、本記事では、『天保年間諸役大概順』に掲載されている、重き役人といわれる「布衣以上」の役職名を現代風に言い換えてみた(※1)

 

 1)礼典管理官(高家、※2)

 2)将軍補佐官(側衆) ※加役兼帯者は首席補佐官(側用取次役、※3)

 5)本丸管理本部長(留守居)

 6)先鋒隊司令官(大番頭)

 7)白書院警備隊司令官(書院番頭)

 8)花畑警備隊司令官(小姓組番頭、※4)

 9)湯島聖堂学長(林大学頭)

10)三卿付事務局長(三卿家老)

 

11)大名監察官(大目付、※5)

12)市政裁判所長官(町奉行、※6)

13)民政裁判所長官(勘定奉行、※7)

   ※司法担当(公事方)と会計担当(勝手方)の別あり。司法担当は幕府裁判所(評定所)または長官役邸(役宅)で執務し、会計担当は会計局(御殿勘定所および下勘定所)で執務する。

14)軍旗警備隊隊長(旗奉行、※8)

15)建築局長(作事奉行)

16)土木局長(普請奉行)

17)修繕局長(小普請奉行)

18)甲府人事労働局長(甲府勤番支配)

 

19)長崎裁判所長官(長崎奉行、※9)

20)浦賀裁判所長官(浦賀奉行)

21)京都裁判所長官(京都町奉行)

22)大坂裁判所長官(大阪町奉行)

24)天皇付総務部長(禁裏付)

25)上皇付総務部長(仙洞付)

26)山田裁判所長官(山田奉行)

28)奈良裁判所長官(奈良奉行)

29)堺裁判所長官(堺奉行)

31)佐渡裁判所長官(佐渡奉行)

32)新潟裁判所長官(新潟奉行)

 

34)西丸管理部長(西丸留守居)

35)鉄砲支隊隊長(百人組之頭)

36)槍隊隊長(鑓奉行、※10)

37)人事労働局長(小普請組支配)

38)遊撃隊司令官(新番頭、※11)

39)歩兵弓・鉄砲分隊隊長(持弓・筒之頭)

40)消防隊隊長(火消役)

41)将軍秘書官(小姓)

42)表御殿担当秘書官(中奥小姓)

43)大奥総支配人(御臺用人、※12)

44)西丸大奥総支配人(簾中用人、※13)

 

53)大坂方面水軍司令(大坂船手)

54)本丸警備隊隊長(留守居番)

55)先鋒弓・鉄砲分隊隊長(先手弓・銕之頭)

   ※加役放火強盗犯取締局長(火附盗賊改)

56)監察官(目付、※14)

57)巡察官(使番)

58)白書院警備隊副官(書院番組頭)

59)花畑警備隊副官(小姓組与頭)

62)西丸裏門守衛分隊隊長(西丸裏門番之頭)

63)歩兵分隊隊長(徒頭)

64)親衛歩兵分隊司令官(小十人頭、※15)

 

65)将軍秘書(小納戸) ※将軍秘書室長(小納戸頭取、※16)

66)水軍司令(船手)

67)ニ丸管理部長(ニ丸留守居)

68)将軍家衣服調度品調達部長(納戸頭)

69)将軍家腰物調達部長(腰物奉行、※17)

70)放鷹局長(鷹匠頭)

71)会計監査役(勘定吟味役、※18)

72)閣僚付書記局長(奥右筆組頭)

74)将軍家儒学講師(奥詰儒者)

75)美濃裁判所所長(美濃郡代、※19)

76)西国裁判所所長(西国郡代)

77)飛騨裁判所所長(飛騨郡代)

 

※1)数字は大概順の掲載順位、()内は本来の役職名

※2)1は最も格式の高い旗本。吉良上野介で有名

※3)2は最も将軍権力に近い人

※4)8の「花畑」は小姓組の旧名(花畑番)に因んだ。

※5)11の大目付は、江戸中後期には式部官化しており、幕初ほどの権勢はなくなっていたものの、一般の旗本にとっては極官ともいうべき栄職であった。。

※6)12について、よくいわれる東京都知事だが、名目上はともかく、実態的には惣町の三年寄(の役所や、町役人たち)がその機能を担っていた(【番外編】参照)。役割上、幕府の方針を町奉行が三年寄に伝達する外、町奉行の組下にも町政に関わる掛役はあったが、多くは監察官的なものであった。

※7)公事方勘定奉行町奉行大名役寺社奉行とともに、幕閣の諮問機関でもある評定所一座のメンバーであり(いわゆる三奉行)、前二者(町奉行と公事方勘定奉行)に、勝手方勘定奉行と大目付を加えた三(四)役(11~13)は役方の実質的なトップであった。

※8)14は名目のみの、たまに出勤するだけの隠居役。

※9)19~22及び26~32の遠国奉行は公事吟味の裁許権能を重視し、すべて裁判所長官とした。

※10)36は14同様、名目のみの、たまに出勤するだけの隠居役。

※11)侍大将に相当する職は司令官、足軽大将に相当する職は隊長として、区別した。

※12)43は「広敷用人」に同じ

※13)44の「簾中」は将軍世子夫人のこと

※14)番方(武官)出身者の登竜門となるのが56の目付

※15)64は組衆が目見以上であることから、侍大将の格式とみなし、司令官とした。

※16)中奥筋(将軍の昵近衆)のキーマンが65の指揮・監督をする小納戸頭取だ。頭取の格式は従五位下諸大夫だから、平の小納戸よりもずっと序列は高いはずだ。

※17)69の「腰物」とは刀のこと

※18)役方(文官=役人)出身者の登竜門となるのが71の勘定吟味役。但し、役方トップ(大目付、町奉行、勘定奉行)に就任するのは圧倒的に番方出身者両番筋)が多い。

※19)75~77の郡代は公事吟味の裁許権能を重視し、すべて裁判所所長とした。

 

【番外編】

将軍代理(大老)

閣僚(老中) ※首相(筆頭老中)

家政担当閣僚(若年寄)

社寺裁判所長官(寺社奉行)

小伝馬町拘置所長(囚獄・石出帯刀)

江戸府知事(江戸の町年寄)

〇〇町長( 〃 町名主)

〇〇町副町長( 〃 月行事)

〇〇町事務長( 〃 自身番書役)

△地区消防本部長(町火消△番組頭取)

☓消防隊長(町火消☓組頭)

 

■参考サイト

天保年間諸役大概順(旗本・御家人の役職序列)

(1)布衣以上

(2)布衣以下目見以上

(3)目見以下

江戸雑記録