■これまでの復習(歴史的背景)
中原の覇者となった三好長慶はいったんは三好氏による単独政権をめざすものの、将軍義輝や管領細川晴元らの粘り強い抵抗にあって旧勢力との妥協を選択する。ともかくも天下の静謐を実現したはずの長慶ではあったが、たてつづけに有能な弟たちや、大きな期待を寄せる嫡子義興を亡くし、精神のバランスを失った彼自身も病没する。
英明かつ教養人でもあった主人・長慶を失った三好党はついに暴走し、将軍義輝を二條御所に弑逆する。その後、かろうじて生き残った義輝の弟・一乗院覚慶(後の足利義昭)を奉じて、上洛した信長がめざすものは何か。義昭は、兄・義輝の轍を踏まずに、室町幕府を再興できるのだろうか。明智十兵衛は、そうした中で義昭に賭け、己を見つけられるのだろうか。
■予習:新しい幕府と摂津晴門
今回のキーマンとなるのは、摂津晴門という人らしい。
摂津氏(※1)は鎌倉幕府の評定衆をつとめた中原親能の養子・師員を祖としているらしいから、2022大河にもゆかりのある人物といえる。
演じるのは、『太平記』(1991大河。※2)で「うつつなき人」得宗高時を怪演した片岡鶴太郎さんだから、期待も膨らもうというものだ。
もっとも、彼の事績についてはほとんど何もわかってはいないようだ。かろうじて、享禄元(1528)年十一月二十八日に、從五位下中務大輔に除爵された旨の記事が『歴名土代』に見えるぐらいだろう。永禄八(1565)年五月十九日に将軍義輝が二條御所で三好義継らに襲われ、弑逆された際に、内衆の摂津糸千代丸なる十三歳の少年が討ち死にしている。それが晴門の嫡男であるという。もしそれが事実なら、晴門にとっては、痛恨の事態であったに違いない。彼の生き方に大きな影を落としていたとしてもおかしくはない。
いずれにせよ、晴門は事績らしいものがほとんど伝わっていない人物なのだから、事実上オリジナルのキャラに等しく、わずかに分かっていることをどう肉付けして、どれだけ魅力的で、説得力のある人物造形をしていけるかにかかっている。脚本家たる池端さんの腕の見せ所といえるだろう。
彼は何を背負い、何をなしとげようとしているのか。それが今後、十兵衛と室町幕府の進むべき道を示すことになるはずだ。
※1)リンク先:家紋World
※2)ちなみに、『太平記』は現在、BSプレミアムで日曜早朝に再放送中。ただし、片岡鶴太郎さんの出番は残念ながら、もう終わっています。